グラン王国の錬金術師 if 悪役錬金術師に転生してました!

えん水無月

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178 変態キノコおじさん

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 私は壁伝いに身を避けた。
 前世で弟がこういうゲームをしていたのを思い出す、緊急回避っていうんだっけかな? とにかく、とっさに避けて体を半回転させる。

 背中に予期せぬ衝撃が走った。


「痛っ!」


 思わず小さい悲鳴を上げて何かにぶつかった所を見ると、椅子に座ったおじさんが居た。
 髪はブロンズで短く、清潔そうなポロシャツからはみ出る腕は筋肉が凄い。
 私を見ていて、思わず視線が合う。


「ご、ごめんなさい」
「いやいいって事だ。嬢ちゃんかキノコ取りに来たって人間は?」
「え? ええ……そうなんんだけど。ちょっと黙って座っていたら危ないわよ」


 何のん気に座っているんだろ。
 ゾンビが、うーだの、あーだの言いながら周りを固めていく。


「ワシは大丈夫だ。それにワシの傍にいれば襲ってこないぞ」
「本当っ!?」


 確かにゾンビはおじさんの周りには来ない。
 広い部屋でゾンビが沢山いるのに、三メートルは離れてこちらを見ている。そして直ぐに興味を無くしたのか、またさ迷い歩き出した。


「おじさんどうもありが…………」


 言葉が止まった。
 いやだって、座っているおじさんの股間の部分から立派なカサが開いたキノコが生えてるからだ。


「どうだ、お嬢さん立派なキノコさんだろ?」
「ええっと……張り倒していい?」
「張り倒されると困るなぁ」


 なんだろ、心なしか股間のキノコが小さくなった気がする。


「って何者なのよ……ゾンビの調教師みたいな感じ?」
「惜しいな、ワシはゾンビじゃ」
「は?」


 何所からどう見ても、股間からキノコだしてる以外は人間にしか見えない。
 …………うん。訂正しよう。
 股間からキノコ出してる時点で普通の人間ではなくて変態オヤジだ。


「でも、アーとかウーとか言ってないじゃない」
「それは、ワシが他の人間よりも魔力持ちだろうからな」
「そうなの? まぁ何でもいいから、本当ならそのキノコ以外のキノコ頂戴よ」


 そのキノコってのは股間のキノコの事。
 あんな場所から生えてるキノコはほしくない。


「それは無理な相談だ。ワシのキノコはここにしか生えない」


 キノコが上下に動く。
 場所が場所ならセクハラで訴えれるわよねこれ。


「じゃぁあの中から取るしかないのか……」
「嬢ちゃんの探してるキノコって幻惑ダケだろ? あっちのは幻覚ダケだな」
「…………違いがわからないんだけど?」


 簡単に、とキノコを生やした変態ゾンビおじさんは説明しはじめた。
 幻惑ダケは惚れ薬の材料になり、幻覚ダケは催眠薬の材料になるらしい。


「詳しいわね」
「これでも錬金術師だったんでな」
「そうなの!?」


 驚いた、ミーナやナナ、ディーオ以外の錬金術師なんてまともに見たのははじめてかもしれない。


「でも、今はゾンビと」
「そう中々に興味深い。ある日心臓が痛くなりそのまま死んだ。
 しかし、目が覚めると心臓は止まったままゾンビになっていたのだ。
 さすがに地上で暮らすのははばかれ、こうして魔界に来たのさ。
 で、数日前に単眼のメイド女性に幻覚ダケを探してる女性がいると、いうのでこちらに来てみたのだ」
「そうだったの、何かお手数かけたみたいで」
「何、お礼を貰ったから大丈夫」


 変態ゾンビオヤジのポケットから何かか落ちた。


「何か落ちたわよ」
「あっ」


 拾い上げると女性用の胸当て、いわゆるブラジャーだ。
 私はだまってゾンビの群れに向かってぶん投げた。
 ゾンビ達はブラジャーを踏んで踏んでよだれとか、体液とかブラジャーの上に垂らしはじめた。


「ノオオオオオオオオオオオオオオ。おじさんの宝物があああああああああああ」
「そんな宝物捨ててしまいなさい!」
「お嬢ちゃんは酷い女性だ。あれは生前すきだった子のブラジャーで、ワシを勧誘にきたメイドの女性に取ってきてもらったのに」


 メソメソと泣き出した。
 う、ちょっと悪い事したみたいな空気にしたわね。


「その、悪かったわよ……でもあれ、そういうのは生前に好きだって言いなさいよ……ゾンビなんでしょ?」
「仕方が無い……あのメイドの子も可愛かった。今度はあの子を貰うか」


 あ、元気そうな変態だ。


「じゃ、元気になった所でキノコ頂戴よ」
「そうだな、さぁこのキノコをやさしく触って上下に動かすんだ」


 私は無言で、変態オヤジゾンビの股間に生えてるキノコをもぎ取る。


「ふぁっ!」
「取ったわよ!」


 大きなキノコが私の手の中でシワシワとしぼんでいく。
 椅子に座ったまま前傾姿勢になった変態ゾンビオヤジは、涙目になって私を見てきた。


「乱暴に取ったらシワシワでなって効果は無いぞ……」
「ちょ、早く言ってよ!」
「あのワシの神経につながってるから、本当に優しくたのむ」
「余計にまた取るの嫌なんだけど……あっ! そうだ。自分で取ってくれる? 触りたくないし」


 いつの間にか股間に生えた新しいキノコは下を向いている。


「ワシも年でのう、人肌脱いでくれるか?」
「別に協力するのはいいけど……何すれば?」
「なに、脱いでくれれば。なんだったら生下着を一枚くれれば自分で取る」


 私は無言で変態ゾンビオヤジの頭を殴る。


「協力ってそういう協力? キノコよね、キノコってやっぱそのアレ!?」
「興奮すると大きくなるんだ。な? たのむよ老い先短い奴の願いとして」
「もう死んでるよね!?」


 私が抗議すると、突然変態ゾンビオヤジの頭が吹き飛んだ。


「ふぁ!」


 驚いて変な声がでる。


「ちんたら何をしてるんですか?」
「あ、単眼メイドさん……」


 私の所にすたすたと歩いてきては迫ってくるゾンビを手でなぎ払う。
 ゾンビ達は壁まで吹っ飛ばされてぐちゃぐちゃになっていく。
 グロイ。


「ええっと、私もキノコ欲しいのよ? でもその」
「大体は聞いてましたので、ほら見てください自分が死んで興奮してるのでしょうキノコが大きいです」


 頭が吹き飛んだ変態ゾンビオヤジのキノコがピコピコと上下に動く。
 単眼メイドさんが根元をゆっくりと触るとブチっともぎ取った。


「どうぞ」
「ど、どうも……えっと……」
「ミーナさんと、ご主人様の部屋におやつを用意してますので」
「どうも……私が言いたいのは」


 単眼メイドさんの足を触る首なしの変態ゾンビオヤジの手。
 頭は無いのにスカートの中を覗いてるような動きだ。


「ああ、このゾンビは上位ゾンビですね。これぐらいでは忌々しい事に頭ぐらいなら再生するでしょう」
「そ、そう?」


 単眼メイドさんは足を触っていた手を踏み潰す。
 いつの間にか生えたキノコが大きくなっていく。

 うん。大丈夫そうなら私は上にいこう。
 深く考えないのが一番だ。


「ええっと、もう会うことないけど、おじさんありがとね?」


 一声かけるとキノコが上下して返事してきた。
 訴えたい。

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