グラン王国の錬金術師 if 悪役錬金術師に転生してました!

えん水無月

文字の大きさ
190 / 209

186 女性達の厨房

しおりを挟む
「エルン先生の三分クッキング」

 私がそう言うと、ナナとノエは拍手をしてくれる。
 場所は私の家の厨房、一人で入ると、おじょうさまが一人で火を使うなど危ないです! とノエが悲しむから今日は一緒にいる。

 話の流れでなぜかディーオにチョコを渡す事になった。
 市販品でいいじゃないって言ったら、手作りのほうがいいです! 私が食べたいんです。 と、ナナがぶっちゃけた本音を言ったので作る事になった。

 ナナは元から作らせるつもりだったのか、ミーティアから形の不ぞろいな板チョコを持ち込んでいたのだ。


「さて……まずはチョコを砕きます」


 私は適当にチョコを棒で砕く。砕く。砕く。
 憎い人間の顔を思い浮かべて……んー最近はやっぱりコタロウよね。

 死ね!

 いっぺん死ね!!

 こないだも結局三日ぐらいで牢から出てきたし、なんで手際がいいのよ!!!


「あの、エルンさんもう少し力を抜いては……」
「はっ! そ、そうね。適当で三分で作るんだから、この辺でいいわよね」
「エルンおじょうさま、お菓子作りで三分は難しいかと……」


 次にバター、卵、小麦粉、砂糖をこれも適当にボールに入れる。

 近くにあった木製のヘラで目一杯混ぜる。
 その間にオーブンに火をいれ…………ようとしたらノエに怒られた。


「エルンおじょうさま! 火の扱いならノエが致します!」
「そ、そう? じゃぁ適当に暖めておいて」


 出来た種を適当な形にそろえて最後にチップをふりかけオーブンへ突っ込んだ。


「ナナ開始からの時間はっ!?」
「ええっと……十五分は立っていると思います……あの生地の寝かせとかは?」


 忘れてた。
 本来は生地を寝かせる工程があったかもしれない。


「胃の中に入れば同じ同じ」


 さすがにレンジのようにチンという音で知らせる機能はない。
 様子を見ながら頃合と思った所でオーブンからチョコクッキーを取り出した。
 後は粗熱を取って終わり。

 まだほんのりと暖かいチョコクッキーをナナとノエの前に披露した。


「と、言うわけで試食をどうぞ」
「えっノエも貰っていいんですか!?」
「試作品とはいえエルンさんの手作りハァハァ」


 一人ちょっと怪しい感じするわね。
 ノエなんて一生大事にします! っていや食べ物だから食べてよ。
 私も一枚出来上がりを食べてみる、うん。不味くは無い。



「美味しい……」
「はむ。おいしいです、エルンおじょうさま!」
「本当? でも、ノエが作るほうが美味しいわよ」



 私が感想をいうと、ナナが真剣な顔で三枚目のチョコクッキーを食べている、不味かったかしら? でも複数枚食べてるし何か、味を確認してるようなしぐさ。


「ごめんねナナ。私よりノエの作ったほうがやっぱいいわよね」
「ふえ? ち、違うんです!」
「いいのよ。おせいじなんて」
「本当に違うんです。なんでお菓子作りは美味しいのに錬金術となると失敗するんだろうと思いまして。はっ! ご、ごめんなさい、ごめんなさい! パリポリポリ」


 …………ナナも結構ズバっと言うのよね。
 仕方が無い理由を言うか。


「錬金術合成ってレシピ通りに作らないとだめじゃない」


 私は近くにあった軽量カップを軽く持ちナナに見せる。


「そうですね」
「それが面倒なのよね……一定の速さで右回りに四十回練るとか、水はコップ五分の一を二回に別けていれろとか」
「そうしないと、物によっては半属性の物ができますのでポリポリポリ」


 上級アイテムになればなるほど分量と手順が細かいのだ。
 それでいて、私が読んだ本の説明は細かい所は大雑把という。
 コップでもどれ位の大きさのコップとか書いてないし、水は何ccとも書いてない。
 だからと言って目分量で入れると失敗する。
 ディーオに言わせると、それこそが錬金術師だからだ。と、よく解らない事いうし。


 その点料理なら多少間違っていてもそれなりに美味しく出来る。
 毎回味がちょっと違うってのが欠点があるけど。


「と、言うわけ」
「なるほど…………ポリポリポリ」
「エルンおじょうさま、こんなに美味しいクッキーを作れるのにサクサクサク」
「どうでもいいけど、ディーオにでも持って行ったらっていうから作ったクッキー、二人が食べてもう無いんだけど」


 良い事を思いついた。
 私は手を叩いて二人の顔を見る。


「と、いうわけで材料がなくなったのでバレンタインは中止ー。さて午後はショッピングでも――」
「ノエ! お給金とって来ます!」
「わたし、材料すぐに買ってくるのでっ!」


 二人はすぐに厨房から出ていった。
 そんな重要な事じゃないし……ってか買うなら市販品の渡せばよくない?
 別にもう一度手作りにこだわらなくてもさー……。

 玄関の扉が慌てて閉まる音が聞こえた。
 文句を言う前に誰もいなくなってしまった。もっとも、可愛い二人に文句も無いけど、あるとすればチョコを贈らないといけないディーオね。

 そもそもアイツがモテないのが駄目なのよ。
 ナナ曰く、義理とはいえチョコ待ってるんじゃないですかー? とか言うから……。

 直ぐに大きな扉の開け閉めの音が聞こえ二人が厨房に戻ってくる。


「はやっ! 早すぎ!」
「は、はい。禁止されているホウキ使いました!」
「の、乗りました」


 興奮しているのか赤い顔のナナと、蒼白のノエ。
 ノエはニケツしたのかな?
 ともあれ材料費は後で返したほうがいいわね、あと気になる事は。


「え、禁止って?」
「飛んでるホウキです! 警備などの目的から緊急時意外は使わないようにと言われてまして……」
「なるほど……」


 確かにホウキのった集団がボム投げたら地獄絵ね。
 もちろん、あの王様だって馬鹿じゃないんだろうし対抗策はあるでしょうけど。
 私が黙っていると、ナナとノエがドサドサ材料を広げていく。
 これ出来上がる量を考えたら数十人分だ。


「いや、多くない?」
「多くありません! 余った分はわたし達が食べるので!」
「食べます!」


 まぁいいんだけど・・・仕方が無い作るか。
 二人とも食べ過ぎてお相撲さんにならないようにねぇ。
 お相撲さんという職業がこの世界にいるか謎なので口には出さない。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

異世界転生した私は甘味のものがないことを知り前世の記憶をフル活用したら、甘味長者になっていた~悪役令嬢なんて知りません(嘘)~

詩河とんぼ
恋愛
とあるゲームの病弱悪役令嬢に異世界転生した甘味大好きな私。しかし、転生した世界には甘味のものないことを知る―――ないなら、作ろう!と考え、この世界の人に食べてもらうと大好評で――気づけば甘味長者になっていた!?  小説家になろう様でも投稿させていただいております 8月29日 HOT女性向けランキングで10位、恋愛で49位、全体で74位 8月30日 HOT女性向けランキングで6位、恋愛で24位、全体で26位 8月31日 HOT女性向けランキングで4位、恋愛で20位、全体で23位 に……凄すぎてびっくりしてます!ありがとうございますm(_ _)m

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

処理中です...