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祝福もチートでした

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 〈アストリエ大草原 北西部〉
 「さてと、どこかにお手頃なモンスター居ないかな~」
 俺は自分の個性がチートだと改めて実感した所で、自らの個性ではなくステータスその物を上げるべくモンスターとの戦闘を行うために周囲を探索ついでに歩き回っていた。ただ歩き回るだけじゃなく、精霊意思さんと個性のことやその他諸々を話しつつ、ここで暫くは暮らさねばならないので役立ちそうな物を集めていた。
 「お、これとか食べれるんじゃね? よし、鑑定してみよ………あ、俺の個性鑑定は個性にしか使えないのか……」
 だが、肝心な事に俺の個性では個性しか鑑定できず、この草がどんな物か鑑定する術がなかった。
 が、それは以前の俺までね? 今の俺にはそんな事全くもって関係ないのだ。なぜなら、
 《個性『物品鑑定』を作成致しますか? はい/いいえ》
 「はいっ、と」
 念じれば個性を作成できるから、問題ない。というか、逆に作成不可の物もあるのだろうか? 不老不死とか、そういうなんかヤバそうな個性。
 《選択、はいを確認。個性『物品鑑定』を創造致しました。対象者▒▒▒▒▒に付与致しますか? はい/いいえ》
 はい。と、念じるだけでほら簡単、ステータスの個性には追加されるのだ。
 《個性・『社交性』・『意思決定』・『物品鑑定』》
 これで先程の草を見てみる。
 《物品鑑定における鑑定結果は別個性である個性『鑑定レベル上昇』、『鑑定結果確定』、『鑑定レベル上限解放』、『鑑定物品構造把握』、等のその他計九つの個性による影響を受けると予測致します》
 と、精霊意思さんもすかさずアドバイスをくれた。
 「ふむふむ、だとすると後でそれらの個性を作るのもありだな。まぁ、最初だし、手始めにっと、個性『物品鑑定』発動っ」
 《鑑定中…………鑑定完了。鑑定結果を表示致します。名前『ストラ草』 備考…主に薬草に分類される草。オーラル大陸全土に分布。調合によりポーション等の薬剤へと変化。直接食す場合は茹でてからの摂取を推奨》
 「おぉ、さすが鑑定系個性。ここまで詳しくやってくれるのか。俺も前世で使ってればなぁ……」
 《前世に関して貴方様の名前に関する誤りを先程ステータスで発見致しました。変更致しますか? はい/いいえ》
 薬草—―ストラ草を片手に見つめながら、俺は転生後から一番気になっていたことを精霊意思に言われたので、少し固まっていた。
 《……現在貴方様の前世での存在消滅前後の記憶の欠落は補充することができません。しかし、その欠落は真名を与えられる事で埋めることができます。真名を創造主より授かりますか? はい/いいえ》
 「また、創造主か……。俺はさ精霊意思さんと創造主さんに感謝してるんだけど、でも、やはり頼りっぱなしってのもよくないと思うんだよ。だから、創造主さんにはこれっきりにしたいかな」
 《はい、創造主へと意思を送信………送信完了。では、貴方様へと真名を授かってもよろしいですか? はい/いいえ》
 「創造主には伝えてもらったんだから、ここで最後にしよっか。じゃあ、分かった俺は真名を貰って新しく生きていくよ、お願いします」
 《返答、はいを確認。対象者▒▒▒▒▒へと真名『キルビリス・エーレオン』を創造主より授けます。対象者は真名を詠唱してください》
 そして俺は、前世の▒▒▒▒▒から、
 「キルビリス・エーレオン」
 《詠唱確認、真名『キルビリス・エーレオン』を授けました。これに伴い、ステータスの一部表示が改変されます。また、真名を創造主から授かったことにより、祝福である『創造の主の祝福』の効果が発動致しました》
 「創造主さん……あなたはオマケまでつけてくれて、本当にありがとうございます。てか、真名かっこいいじゃんか。キルビリス・エーレオンか、気に入ったっ」
 手に持った草を掲げて俺――▒▒▒▒▒こと、キルビリス・エーレオン――は、転生後のこの世界を生き抜くことを決めた。
 《ステータス改変。対象者の名前を▒▒▒▒▒より、真名『キルビリス・エーレオン』へと変更。また、祝福の効果を明記致します。『創造の主の祝福』 能力…祝福所持者の因果律、黄金律に補正付与、各種能力値強制上昇、経験値取得増加、個性同時発動、創造主の知恵取得。 となっております》
 「能力値強制上昇に……創造主の知恵……?」
 《エーレオン様が先程から申し上げております、所謂チートとなっておりますね》
 俺は大変に凄い力を貰ってしまったようです。個性を作る個性ってだけで、この世の真理に反しているのに、ましてや、転生まで出来るとわ……。
 「精霊意思さん……俺って所謂、最強ルートを辿ってますよね」
 《はい》
 「はぁ……のんびりと暮らすのは出来るのだろうか。まぁ、ここでそんなこと考えてもな、取り敢えずストラ草沢山取って、モンスターでも狩りますか」
 と、俺は愚痴を零して草を適当に摘んだ。
 「しかし、転生してから二時間ほど経って思うんだけど、服は一式あるし、バックパックもある。これも転生特典なんですかね?」
 《特典ではなく、キルビリス様の前世での使用されていた物品になります》
 「ほぇ、ならあれかね中身とか入ってたりはしないかな」
 背負ったままのバックパックは重量が感じられないが、一応中身を確認してみる。皮の質感がそこそこ値を張る品だと教えてくれた。
 「中身は……無し。なら、薬草になるこいつを沢山入れておくか」
 毟った草を適当に詰め、再び背負い、あたりをまた見渡してみた。視界のうち八割がアストリエが締め、残り二割がチラホラと見える例のモンスターだった。
 「なぁ、精霊意思さんアイツらってあのモンスターだよなぁ…」
 《答えかねます》
 「行ってみらわかるか、よし、次はアイツら狩るぞ!」
 そう言って精霊意思さんも困るような質問をした俺は例のモンスターの元へと向かう。
 《精霊意思との意思共有率上昇……現在一パーセント。恩恵として、精霊意思の意思の緩和が発生致しました》
 謎のアナウンスが脳内へと流れたが、その声は無視してあの青色のゼリーへと俺は走った。
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