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目覚めたら大草原でした

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 《では、行ってらっしゃいませ》
 
 その声を聞いた後俺は大事なことを聞いていないことに気が付いた。が、叫んでも遅い、既に体は光に包まれていた。
 「転生した後のこと聞いてなかったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ――


  《転生一日目》〈???〉
 「……ん」
 「……意…さん」
 「…精霊意思さんっ!」
 先の優しい精霊意思さんを呼んで目が覚めるとそこは――
 「………あれ?」
 普通に昔レベル上げに訪れていた平原だった。 町から徒歩一時間ほどの平原、アストリエと呼ばれる草が多く生えることから〈アストリエ大平原〉呼ばれ、ここら近辺の冒険者なら一度は足を運ぶであろう土地だ。
 「何故ここに……? 俺転生とかしたんだから、色々とさ?」
 とは言え、明らかに前世までと違うというのは声で分かった。体も少しばかり痩せ衰えた感じもした。
 辺りを見渡しても昔見た風景がそこに在るだけで、遠くにスライムやワーウルフがいるのを見えただけだった。
 「さて、ひとまず頭を整理しよう」
 ①俺は前世で何かしらが起こって死んだ
 ②精霊意思とかいう優しい方のおかげで転生出来ると言われた
 ③個体個性で作ったはずのない限定個性が生まれていた
 ④転生出来るからと、色々と設定やらしていざ転生
 ⑤はい、知ってる場所でした ←今ここ
 「って、何もわからん!」
 そりゃそうだ。転生でも何でもしたなら、ある程度は補助してくれるのが普通だと思ってた。転生は見たことない訳じゃない、過去に身内や冒険者仲間が転生するのを何度か見たが、その時は恩恵やらを確認するために精霊意思…が……来る?
 「おーーーいっ! 精霊意思さん! 来てくれますかーーー!」
 平原が風で揺れてる中、俺は立ち上がり大声を上げた。すると、
 《なんでしょうか》
 脳内へと直接あの心優しい声が響いたのだった。
 「精霊意思さーーーんっ!!!」
 《はい、御用でしょうか?》
 「はい! 転生後の事とか何も聞かずにいたので色々と確認したく……」
  《状況を確認……確認完了。貴方様の基本情報はステータスにおいて確認することを推奨致します。また、個性に関しても統合可能な物が二つ存在するので、そちらの統合も行います》
 「あぁ、言ってたヤツね。ふむふむ、取り敢えずステータスっと」
 ステータス――自分自身の能力や個人情報を一括して表示できるこの世の便利な力。生きているもの全てがこのステータスを表示することが出来る――を表示すべく、俺は脳内でステータスと、念じた。
 「おぉ、出てきた」
 すると、淡い発光と共に目の前の何も無い空間に画面のようなものが表示された。
 《ステータス表示を確認、対象者のステータスに関して誤りがないか確認……確認完了。誤りに関して一点発見を確認。その他は正常なステータスである事を確認しました。対象者の………》
 精霊意思の声が聞こえたのだが、多分話していたのだろうが、俺には何一つ聞こえていなかった。何故なら――
 「能力値パラメーターがそこら辺の村人と同レベルじゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!」
   ここで一旦この世界におけるステータスの平均値をご紹介しよう。まず、生まれて死ぬまでを農業などの第一次産業で終わるような人はレベル等も技術面でしか上がらず体力が高いようなものになる。
例として…

  レベル……二十五(技術レベル…五十八)
  筋力値…四十五 
  器用値…四十 
  持久値…六十二 
  敏捷値…三十一 
  知力値…二十七 
  魔力値…二

 このように三桁に到達する能力値などは持たない。また、冒険者等のモンスターとの戦闘などを生業とする様な人であっても、四桁に届くのは国の騎士団のトップの方だ。
 そこで、俺自身はどったったかって? そこは、ステータスと共に今見てみよう。
 《名前…▒▒▒▒▒》《称号…転生者》《加護…創造の主の祝福》《種族…亜人デミ・ヒューマン特異体質人種アブノーマライズ』体質…強奪イクストーション》《性別…男》 《年齢…二十四》《職業…個性収集家スキル・コレクター》《レベル…一》《経験値…一/二十》《体力…百/百》《魔力…三十/三十》《所持金無し》《個体個性ユニーク・スキル…『個性創造スキル・クリエイション』 能力…個性所持者の意志に応じて個性を創造する力》《限定個性リミット・スキル  ・『転生』 能力…個性所持者が死亡又は存在消滅した場合、転生可能となる ・『個性鑑定スキル・ジャッジ』 能力…対象となる個性を鑑定し、その詳細を知ることが可能。未知の個性の場合でも可 ・『個性強化スキル・リインフォースメント』 能力…対象となる個性に対して強化を図る能力》《個性・『社交性』》《上位個性エクストラ・スキル・『精霊意思ナビゲーター』 能力…精霊意思のと念話が可能》《能力値 ・筋力値…五・器用値…三・持久値…四・敏捷値…六・知力値…十・魔力値…八》《特筆・因果律補正▒▒  ▒  ▒  ▒▒▒▒・転生による各種恩恵所持・世界系統覇者・他者影響可・種族超越可・個性所持数上限無し・個性統括可》……
 「能力値……嘘だろ……。あまりにも低すぎる……」
 《能力値の低下については、転生時に掛かる負荷によるものと推測》
 「負荷ねぇ……」
 《ですが、貴方様は能力値以外で人間としての範疇を超えていると考えられます》
 「はぁ……。確かに色々と前は無かった筈の項目が増えているし、というか、何よ創造の主の祝福って。転生する時に精霊意思さんが話してた人?」
 《はい。創造主はこの世界の因果律や黄金律に干渉できる唯一の存在です》
 唯一ねぇ、俺はそんな人から祝福貰っちゃいましたよ、あはは。
 「はぁあ、取り敢えずまた振り出しに戻ったって事か。まぁ、うん、最初は祝福とかも確認したいから戦闘でもしようかな」
 《はい、戦闘を推奨致します。各種恩恵につきましては発動時に御説明致します。また、個性使用に伴う魔力の消費が貴方様はほぼございません》
 「え、、」
 《何か?》
 「いや、うん……凄いね、俺」
 《はい、では、私はこれで。また何かあればご連絡下さいませ》
 そう言って彼女? 精霊意思さんの声は聞こえなくなった。一気に驚きによる疲れが体を飲み込み、その場へと腰を下ろした。大草原の一角で俺は、転生という奇跡に近い出来事を改めて認識した。前世で俺が何をしていてどんな人であったかなんてもう分からない、名前すら思い出せないのだ。ステータスで先程確認したが、名前の部分にはモヤが掛かっており、精霊意思さんに聞こうとしたが何故か辞めてしまった。
 「あーあ、一体これから何を目的にしたら」
 《個性『意思決定』を作成致しますか? はい/いいえ》
 突然だった。俺の目の前へと、先のステータスのような画面が現れ、はい/いいえの二択を迫られた。
 「こ、これって……個性の作成だよな? まさかだと思うが、はいって選んだ場合……」
 恐る恐る自分の仮説を確かめるために、左側の選択へと指を伸ばす。そして……
 《選択、はいを確認。個性『意思決定』を創造致しました。対象者▒▒▒▒▒に付与致しますか? はい/いいえ》
 「作れた、まじか、嘘だろ」
 だが、本当の事だった。確かに目の前のはいを選択したら脳内で精霊意思さんに似たような(違う人であることは間違いない声で)アナウンスが流れ、個性を一つ生み出してしまった。
 「えっと、俺が所持したいから、はい」
 《返答、はいを確認。対象者▒▒▒▒▒に付与致します……付与完了》
 その声の終了と同時に俺の体がほんの僅かに発光した。ステータスを急いで確認してみると、そこには、
 《個性・『社交性』・『意思決定』》
 と、個性の欄が一つ増えていた。
 「こんなに簡単に個性が増やせる……ははっ、やばいだろこれ。因みに意思決定の能力とかは」
 《個性『意思決定』 能力…対象となる物の意思を決定できる。しかし、個性所持者が対象よりも強くないと不可。また、自らの目的等を順序立てて整理するような使い方も可》
 「便利な個性だこと。要するに音声無しのナビ機能か、後はなんだろう、洗脳…とか?」
 こうして俺は個性創造という所謂チート級個性によって、個性で転生後のこの世界を蹂躙する第一歩を踏み始めたのだった。
 「転生ってのも……悪くないな」
 大草原で一人、最強となる人が誕生した瞬間だった。
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