アイドルグループ脱退メンバーは人生をやり直す 〜もう芸能界とは関わらない〜

ちゃろ

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終幕までのカウントダウン

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とある事務所が毎年主催する所属タレント総出演の大型2DAYSイベント。その1DAYS目。


人気アイドルグループResonance☆Sevenを電撃脱退したリオンが明確な発表の無い中でシークレットゲストで出演すると噂され、そのイベントはSNSを中心に大きく注目されていた。
公式からの意味深匂わせ投稿によって噂やファンの推察が日に日に確信に変わるほど、SNSは"王子再始動!"のワードと共にそれはそれは大騒ぎだった。



リオンは甘くも美しい気品溢れる顔立ちから王子と呼ばれている。


誰もが見惚れてしまうほどの透明感溢れる華々しい容貌は、それぞれ最高のパーツを最高のバランスで組み合わせて配置された神の傑作と言っても過言ではない完璧な造形をしている。


カメラを通してもぼやけることのないパッチリとした幅広二重の大きな目、長い睫毛、高く筋の通った鼻、ぷるりと艷やかな唇、歯列の整った歯並び、毛穴1つ見当たらない陶器のような滑らかな肌、艷やかで手触りの良さそうな髪、横顔さえも美しく見せるフェイスライン。

はっきりした目元は綺麗な鼻筋と上品な口元によってくどすぎず、薄すぎず、完璧なバランスに調和されている。


目を奪う圧倒的なまでの存在感と光を背負っているかのように思えるキラキラした眩い輝きは舞台ステージでもカメラの前でも抜群に目立ち、画面に映っているだけで、目にするだけで、そこに居るだけで、その場が煌びやかになる華と輝きがあり、見た者をあっという間に虜にしてしまう。


王子という称号に誰もが納得せざるえないアイドルであり、ファンのみならず、業界は疎か世間でも当たり前の如く王子として認知され、浸透していた。
誰しもが1度は想い描いたことがあるだろう"理想の王子様"という幻想を、リオンはそのまま現実世界で体現した存在だった。



普段の立ち振る舞いからも気品が溢れ、ちょっとした仕草まで優雅で美しい。加えて人柄の良さが全面に出る柔らかくも優しい雰囲気と、隙の無い清潔感がその最強の容姿と相俟って好感度も高い。
話し方や選ぶ言葉の端々には礼儀正しさと育ちの良さが窺え、滲み出る誠実さも万人受けするのだろう。気取ることなく素直で自然体なのも好印象に映る。


それでいて誰に対しても発揮する人懐こっさは親近感を与え、愛嬌もあっていじりやすい上に然りげ無くボケにもツッコみにも回れるものだからたまに出演するバラエティ番組でもタレントとして重宝されていた。

尊く眩しい存在であると同時にずっと見守って応援したくなる親しみやすさもハマる魅力の1つだ。



だがしかし。
王子と呼ばれるリオンの真髄は実はそのパフォーマンスにあった。


身のこなしは軽やかで華麗、力強くも靭やかに、指先の細かな動きまで丁寧に表現しながら美しく優雅に舞うように踊る。



どんな体勢だろうと身体の軸が一切ブレない安定した体幹は見事なもので、クセのないお手本のような動きを基本としているかと思えば、時に大胆なまでのキレや緩急の差をつけたり、音に合わせて重心を瞬時に切り替えたりと身体の使い方ボディコントロールが抜群に上手い。
そして幼い頃からダンスをしているだけあって培われてきたリズム感は音ハメが正確で堂に入っている。



難しい動きをそう感じさせることもなくいとも簡単にこなしてしまうスマートさ、指先まで優雅に魅せる芸術性、どこをどう動かせば魅せられるのかわかっているかのようにここぞというタイミングで魅せてくる。


そして溜息が漏れる程の綺麗な表情と共に耳に残る特徴ある声で力強く歌い、どこか色気のような艶めきを時折見せるのだから多才にして多彩。自分の見せ方…いや、魅せ方が上手い。自己表現能力は計算を超えた天性の才能という他ない。


やること為すこと全てが絵に描いたようにさまになっており、指先1つ、視線1つを動かすだけでも目を惹き、気付けば目が離せなくなる。


最強の顔に甘えることなく常に努力を重ねて磨き続けている実力は、素人が見てもレベルが違うと瞬時に悟ってしまう程に、パフォーマンスの全てが別格で卓越していた。


存在そのものが完璧に王子様であり、王子という呼び名がピッタリな、アイドルになるべくしてなった逸材だろう。
王子=リオン。王子といえばリオン。
それが今の時代の認識だ。


誰が見ても美しく、どこを見ても優雅に麗しく、いつどんな時も輝く完璧な理想の王子様。
それがResonance☆Sevenのリオンだった。


彼の魅力はここまで語った上で、更にここから千言万語を費やしても語り尽くせない。



そんなリオンの唯一惜しむべき点は事務所の選択を早まりすぎたことだろう。
事務所主体のイベントを催すくらいに急成長した事務所ではあるが、それでも強豪事務所に比べればまだまだ弱小で、権力の強さで肩を並べるには遠い。

事務所がもっと影響力の強いところであればきっと今頃は日本を代表する国民的アイドルとして君臨していたことだろう。世界だって余裕で狙えたかもしれない。
しかし現実はグループとしては中堅止まり。個人の知名度の方が高いのが現状だ。
事務所が違えば直ぐにでも伸し上がって頂点に君臨していただろうに。そこで止まってしまったことが逸材なだけに個人的な感想としては悔やまれる。


だがこの事務所を選択したからこそ、リオンが己の力で掴み取ったものが多いのも確かだった。
それは今だからこそ言える結果でしかないかもしれないが、今の確固たる地位を築き一目置かれる存在にまでなったのは、事務所の力だけでなく、本人の仕事に対する向き合い方や日々の努力が大きい。
何の努力もせずに事務所に推されただけでいつまでも生き残れるほど芸能界の最前線は甘くない。


どれだけ売れようとも本人は鼻に掛けることもなく、気取ることもなく、デビュー当初から変わらずにノースキャンダルの綺麗な身のまま、アイドルとしてのイメージを崩すことなく守ってきた。その実績と信頼は大きい。
成功した大抵の人間は歳を重ねるに連れてどこか擦れていく傾向にあるが、リオンは驕らず、擦れることなく感謝を忘れない謙虚な人間のまま成長していった。彼のアイドルとしての姿勢は誰もが認める程に素晴らしいものだった。


グループの伸び悩みはあってもリオン個人の評価は頗る上々。
品行方正さはアイドルとして正しい姿であり、賞賛されるべきものだろう。
ファンを裏切らないからこそ安心して推せるアイドルとしても評判だった。


グループの中で人気No.1だったリオンのファンは業界関係者にも多い。
それは共演者だけでなく、どんな末端のスタッフに対しても礼儀正しく接する彼の人柄と、どんな仕事も真摯に取り組む彼の姿勢が勝ち取った信頼の賜物だろう。
一緒に仕事をすると画面の中のイメージそのままで、細かい気遣いもできる上に謙虚に腰も低いものだから、その人柄から必ずファンになってしまうと業界では有名だった。


リオンの突然の脱退にどれだけの人が嘆いたことだろう。今後の活動情報が無いままに、空白の期間を経て突如として舞い降りた再始動。
それはファン界隈だけでなく、業界全体が驚きと喜びで飛び上がる程に湧き上がった吉報だった。




一体、どんなひと時の夢を見せてくれるのか。非常に楽しみで、期待に胸が踊る。
シークレットゲストが誰かなのか未だに正式に発表されていないのに、開演前の会場はリオンに向けたコールで溢れている。
ここまで層が厚く、熱狂的なファンを維持し続ける単独のアイドルは近年では珍しい。
リオンが自ら積み重ねてきた功績でもあるのだろう。




そんな我らの王子様の再スタートは今までの"王子"というイメージをがらりと変えてきた。

全身黒に統一されたバックダンサーと共に暗闇の中から突如として現れたリオンに照明が当てられる。
王子を連想させる派手な衣装が多かった彼はイメージと真逆であるスタイリッシュで暗い色の衣装に身を包んでいる。


リオンが登場した瞬間から、空気が今までと明らかに違うのを肌で感じた。以前までとは何かが違う。それにシンプルにワクワクした。


大画面のモニターに映し出されたリオンは鳴り止まない歓声を操作するように片手を正面にゆっくり伸ばして肩の高さまで上げた。
歓声が弱まりかけた瞬間、手の甲を反転させ、手首を煽るようにクイッと曲げてみせる。まるで"来いよ"と言いたげな、不敵な笑みを浮かべて。


挑発じみた合図にファンが応えるように叫ぶと、解散したアイドルグループの曲が会場に流れ出す。
それは重低音溢れるノリノリなクラブミュージックとしてバズった曲であり、リオンの幼馴染でリオン大好き芸人として有名な伊月が所属していたグループの曲だった。

さすがに1人でこの曲を歌いながら激しいダンスを踊るとなると難しいのでは?
そう思っていたのだが。
歌い出し。リオンは踊りながらもマイクを通して美声を響かせた。
レゾブンで綺麗めに歌い上げていた彼はこの曲ではパワフルに所々こぶしやビブラートをきかせて歌い上げている。



それは誰もが息を忘れてしまう程に圧倒されるパフォーマンスだった。
成長するところがあるのかと疑問を浮かべるくらいに実力者である彼の更なる成長を目の当たりにして、歴史的な瞬間に立ち会ったような高揚感が全身に走る。


歌いながらも止まることなく踊り、そのクオリティが下がることはない。
それどころかリオン自身のテンションが上がってきたのかダンスのキレがバッチバチに増し、余裕ある合間に観客に"もっとテンション上げろ!"と手振りで煽っていく。     

決められた振り付けを綺麗に優雅に見せながら、卒なく完璧に、且つ精密に踊る謂わば優等生タイプだったリオンはどこにもいなかった。


以前までの彼ならばグループの為、ファンからのイメージを損なわない為に卒なく最善にこなしていた。
そうであったはずの彼は今この場で自分自身の最大のパフォーマンスで観客と一緒に楽しんでいる。留学での経験をしっかりと見せつけつつ、自由に伸び伸びと。ファンと共に。
それが場を更に盛り上げ、一体感のある空間が出来上がる。
曲のカッコよさと相俟って新たな世界が創り上げられていくようだった。



品のあるお綺麗な顔が妖艶に微笑み、大人の男としての色気が溢れ出す。
そこに居たのは"理想の王子"から一転、カリスマ性のある闇の主人公ダークヒーローといったような、今までに無い姿のリオンだった。


普段のイメージと結び付かない意外性と研鑽を積んだ動きが更なる深みを出して、新しい世界を見せてもらっているかのようで、一時も目が離せない。


彼は確実に日々進化して、己の新たな新境地を見せてくれた。
そんな1日目だった。




2DAYS目では。
眼福とも言える幼馴染2人がついに夢のユニット共演を果たす。
どれだけのファンがそのユニットを待ち望んでいたことだろう。


色違いの衣装で登場した2人はキラキラと輝く王子そのものだった。
前日のパフォーマンスを見ているだけあって、そのギャップからか本日のリオンは光の王子感がかなり強い。


伊月がリオンの前でだけ見せる笑みが終始出ているのは勿論のこと、リオンはリオンで嬉しそうな甘い笑みを伊月に浮かべている。


曲もそんな2人に合わせたみたいな、みんなの気持ちが明るくなるようなリズミカルでポップな歌だった。


ダンスは誰もが動画で撮れるくらいの踊りやすそうなもので、複雑さはそんなに無い。だからこそ絶対に盛り上がるし、真似して踊りたくなるような、そこまで考え抜かれたダンスだった。
この振付けを2人で考えたというエピソードが更にファンの胸を熱くする。


楽しくもカッコよく、そして可愛く見せられるように。
これは絶対にバズる、とその場に居た誰もが疑うことなく確信する。
時代に合わせて振付けを考えた2人のセンスや先を見通す才能は2人の今後の未来の可能性さえ感じた。


2人の連携はさすが幼馴染というだけあって息もぴったりで、歌もダンスも最高のクオリティだった。
それでいて余裕ある分ファンサービスを至る所でしてくれるものだからファンは大歓喜。
ファン界隈では有名な2人のじゃれあいを生で目にし、強烈すぎる視界の暴力に悲鳴を上げたり失神しかける者が続出した。
歌と踊りが凄いのはもちろんだが、やはり2人の見た目の良さのインパクトが何よりも強く、最初から最後まで最強の顔面ビジュアル×2で殴られまくったパフォーマンスとも言えた。



この2人を企画ユニットとして期間限定で終わらせるにはとても惜しい。
是非とも正式なユニットとして結成を果たしてほしいところだ。



──そして楽しい時間はあっという間というだけあって、夢の時間は残念ながら終わりを迎える。
曲の終わりと同時に2人に降り注ぐ鳴り止まない拍手や歓声がしばらく会場全体に響き渡った。






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