雨晒し

Liz

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レッテルの下には、

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「バカにしてないよ」

「…嘘ばっか」

「本当だから。こっち向いてよ」

「…やだよ」

「ね、お願い」


シャツの裾をくいくいと引っ張れば、榛名くんは渋々といった感じであたしの方に顔を向ける。


ひとつの濁りもない真っ黒な瞳が、あたしを見上げる。

この瞬間が、好き。


あたしがゆっくりと顔を近づければ、まるで応えるようにゆっくりと瞼を下ろす。長い睫毛が、少し揺れる。

この瞬間が、ただ、好き。




「…、」


あたしと榛名くんの物理的な距離がゼロになる。
榛名くんのそれは薄いくせに柔らかくて、とても暖かい。
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