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脆弱を覆う優しさ
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しおりを挟むそんな事を考えているうちに、いつの間にか教室のドアの前まで来ていた。
結局その単語を思い出せないまま、あたしは目の前のドアをガラッと開けた。
後ろ手で開けたドアをピシャリと閉めてから俯き気味だった顔を上げた瞬間、あたしは静かに息を呑んだ。
てっきり誰も居ないと思っていたそこには、ひとりの男子生徒が居た。
しかもよりにもよって、一度もまともに会話という会話を交わした事のない人物だった。
その整った容姿のおかげで、辛うじて名前を知ってるくらい。
――…最悪だ。
こんな時に、しかもこんなずぶ濡れの状態で、よく知りもしない男子と2人きりなんて、気まずすぎる。
「…榛名くん、まだ学校に居たんだ?」
もうドアを閉めた手前、すぐに出ていくのはさすがに感じが悪すぎるし、視線はかち合ったままだし、とりあえず笑みを貼りつけてそう言えば、数メートル離れたところに立っている榛名くんは「うん」って小さく返事をした。
シン…とした沈黙が流れる。
気まずい、気まずすぎる。どうしよう。
「…ていうか、その格好…」
あたしが何か話題を見つけ出すよりも先に、沈黙を破ったのは榛名くんの方だった。
言いにくそうに放たれた榛名くんの言葉に「あー、これ?」と極めて明るい声で切り出した。
「傘どっかいっちゃってさ、もうずぶ濡れ!こんなに濡れたの初めてってくらい濡れちゃった」
あはは、あたしの乾いた笑い声が榛名くんとの数メートルの間を流れる。
「あ、そういえば、こうやって傘も差さずに雨に打たれる事をなんていうか、榛名くん知ってる?」
「……、」
「なんかの本で読んだ気がするんだけど、ど忘れしちゃって思い出せないんだよね」
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