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特別の合図
、
しおりを挟む榛名くんは目を伏せたまま、綺麗な指をスッと伸ばしてあたしがさっき書いていた数式をとん、と叩くように差した。
「…ここ、間違ってる」
「えっ?うそ」
「…ほんと。数式は合ってるけど、計算が間違ってる」
「……ほんとだ」
解き直してみると確かに計算を間違っていたようだった。
パッと見ただけでこの間違いに気付けるなんて、やっぱり榛名くんて相当頭いいよなぁと呑気に感心していたけれどハッと我に返る。
「っていうか榛名くん、なんでここに居るの…?」
顔を上げてそう問いかければ、榛名くんはあたしをちらりと一瞥してから口を開いた。
「なんでって、陸に頼まれたから」
「……、」
あのテキトー教師め。
あれだけ呼ばないでって釘を刺したのに。
「とりあえず付き合うから、分かんないところがあったら聞いて」
「…いい」
向かいの椅子に腰を掛けようとしていた榛名くんはあたしが発した低い声に「え?」と間抜けな声を返して、動きを止めた。
「…付き合ってくれなくていい」
再びプリントへと視線を落として静かにそう言う。
雑音がほとんどなく、静寂に包まれているこの空間には小さなあたしの声も嫌なほどに響いた。
「…なんで?」
少しの間を置いて返ってきた榛名くんの声は、さっきよりも少し低いような気がした。
「ひとりで大丈夫だから」
「…まだ一枚目じゃん。ひとりで解いてたら時間かかるよ」
「ほんとに大丈夫だから、榛名くんは帰って」
これ以上一緒に居たら、また変な事を口走ってしまいそうで嫌だった。
だから、少しキツイ言い方をしてでも榛名くんと2人きりの状況を避けたかったのに。
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