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特別の合図
、
しおりを挟む伏し目がちにあたしを捉えていた榛名くんの薄い唇がゆっくりと動き出す。
「…上手く言えないけど、なんか…辻本の仕草とか表情とかに、もうだいぶ心持ってかれてんの」
「…っ嘘だ、」
「嘘じゃないよ」
優しい声で、でも力強い口調できっぱりとそう言い切った榛名くんはあたしの頬にその大きな手をぴとりと当てる。
たまらずに、その手に自分の手を重ねた。
「…っじゃあなんで、あたし以外の子に触るの…っ」
「触ってないよ」
「…嘘つき…っ、」
「だから、嘘じゃないって」
「…だって、聖蘭学院の子と家の中に入っていったって聞いたもん…っ!」
泣きじゃくりながらそう言えば、榛名くんはあたしの両頬を両手で包み込んで、ぐいっと顔を上げさせた。
「辻本、ちゃんと聞いて」
「…っなに、」
いつになく真剣な表情でじっと見つめられて、少し身構えてしまう。
嗚咽に詰まりながらもそう返せば、榛名くんは再び唇を動かした。
「今、辻本が言った聖蘭学院の子のことだけど…」
「…うん」
「それ、陸の妹だから」
「……、」
思考が一瞬止まった。見事にフリーズした。
陸の妹ってことは、担任の妹ってことで……
って、あれ?
ということは……、
「………イトコ…?」
あたしの口からぽろりと零れ落ちたその言葉に榛名くんは「うん」と頷く。
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