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特別の合図
、
しおりを挟む次の瞬間、優しい力で引き寄せられたあたしの身体は榛名くんの腕の中にすっぽりと収まった。
頬に榛名くんのサラサラの髪が当たって、少しくすぐったい。
黒い髪の間から覗く耳は心配になるほど赤く染まっていて、何故かそれが視界に映った瞬間、涙が込み上げてきた。
榛名くんは声も手も佇まいも、言わずもがな顔だって勿論綺麗だけど、きっとあたしは何よりも綺麗なその心に惹かれたんだ。
「…こんな恥ずかしい事、初めて言ったんだけど」
小さな声でボソリとそう呟いた榛名くんは、あたしを抱きしめる腕にぎゅうっと力を籠める。
「…責任、取ってくれないの?」
「…っ」
堪え切れなかった涙が目からポロリと零れ落ちた瞬間、心の中で何かが弾けたような感覚がした。
深く息を吸い込めば、あたしの中に入ってくる榛名くんの匂い。
香水のクドい匂いじゃなくて、石鹸のような清潔なその香りに、また涙が溢れる。
「…榛名くんの首元って、すごくいい匂いがするの」
「…っは?」
いきなり話し出したあたしに榛名くんは素っ頓狂な声を出す。「知ってた?」そう問いかければ「…何急に」淡泊な返事が返ってきた。
「あたしが発見した榛名くんの特徴を教えてあげてるの」
「…いいよ、そんなの教えてくれなくて」
「他にはね、左耳の後ろにホクロがあるんだよ」
「……」
「あと、照れた時は首の後ろを掻いたり手で口元を隠したりする」
「……」
「あと…、横腹を触られるのが少し苦手」
「っ、」
シャツを掴んでいた手でそっ、と撫でるように横腹を触れば、榛名くんはバッと勢いよく身体を離した。
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