雨晒し

Liz

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漸進的愛情表現

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一目見た瞬間に、とかそんな分かりやすい物じゃなかった。

切っ掛けと呼べるのかすらも危うい、そんな曖昧なものしかなかった。









「――ねぇ」


自分の席に着いて、意味もなくスマホを弄っていると高い声が鼓膜を揺らした。


その声に反応して視線を上げた先、女子生徒が突っ立っていた。





ぐるぐるに巻かれた明るい髪。明らかに校則違反であろう短いスカート。ばっちり施されている化粧。


名前は…なんだっけ。思い出せない。



昔から興味のない事にはとことん興味がない淡泊なこの性格の所為で人の顔と名前を覚えるのが苦手だった。いや、苦手なんてレベルじゃないかもしれない。



そんな事を思っていると、その女子生徒は俺の席を通り過ぎ、その隣の席でぴたりと足を止めた。


どうやら俺ではなく、隣の席の女子生徒に用があるらしい。それを察した俺はホッと胸を撫で下ろす。

名前も知らない女と話すのなんて面倒臭い事この上ないし、何よりこういう派手なタイプは苦手を通り越してハッキリ言って嫌いだ。


音にもならないほどの小さな安堵の溜め息を零したところで「山根さん」と、その派手な女がそんな名前を口にした。





「えっ、あ…はい」



俺の隣の席の女子生徒――“山根さん”は慌てた様子で顔を上げる。

規定通りに着こなされた制服、分厚そうな眼鏡、少しごわつている真っ黒な長い髪。

どこからどう見ても地味としか言いようがない容姿のその子。

入学してからずっとこの席の配置だったのにも関わらず、俺はこの時に初めてその子の名前を知った。
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