ドラゴンすら肥える異世界農園〜最弱スキルで世界の胃袋を掴みました〜

ライカタイガ

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【第8話】市場からの使者と広がる可能性

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 祭りの翌朝、村の門に一台の馬車が停まっていた。珍しい訪問者に村人たちはざわめき、
俺もリリィとともに門の方へ向かった。

 馬車の前には、上品そうな身なりの女性が立っていた。
金の縁飾りがついた旅装、腰には革の帳簿を下げている。

「初めまして。私はメイナ=ルスト。中央市場の流通管理をしている者です」
中央市場。それは村から南に三日かかる大都市アルデリアにある巨大な交易拠点だ。

「実は昨日、こちらで使われた野菜の噂を聞きまして……味見もできると伺いました」
 どうやら祭りで訪れていた商人が中央に報告し、それを聞いたメイナさんが直接視察に来たらしい。

 さっそく収穫していた野菜を数種類差し出すと、彼女は手慣れた様子でナイフを取り出し、切った断面の香りを確かめながら、口に運んだ。

「……これは……すごいですね。香りも味も濃い。しかも見た目に艶がある。これは並の作物じゃありません」
 リリィがそっと俺の腕をつついた。

「タケルさん、チャンスかもしれません!」
 俺は少し戸惑いながらも頷いた。

 メイナさんはそのまま村長と話を進め、数時間後には俺とリリィを含めた正式な打診の場が設けられていた。

「もし可能であれば、定期的にこの“特別な野菜”を中央市場へ出荷していただけませんか?」

「定期的に……?」
俺が育てられる数には限りがある。だが村人たちと協力すれば、ある程度の生産はできるはずだ。

「もちろん、無理のない範囲で構いません。こちらでも育成地を設けることは可能ですし、指導という形で協力していただけるだけでも」

 つまり、俺のスキルと知識をベースにした農園展開──ということらしい。

「すごい……タケルさんの力が、村の外にも届くんですね」
リリィが、少し目を潤ませながら微笑んだ。

 その夜、村の集会所で簡単な報告会が行われた。村人たちは皆、大きな拍手で俺の決断を歓迎してくれた。
「本当に……これでよかったのかな」

 焚き火の前で独りごちた俺に、リリィがそっと寄り添って言った。

「大丈夫。タケルさんが信じた道なら、きっと間違いありません」
ふと見ると、モフが俺たちの間に割って入ってきて、俺の膝に頭を乗せた。

「お前も……応援してくれてんのか?」

 モフはくぐもった声で「むー」と鳴きながら尻尾をぱたぱたと振る。

 俺は空を見上げた。満天の星が瞬いている。
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