ドラゴンすら肥える異世界農園〜最弱スキルで世界の胃袋を掴みました〜

ライカタイガ

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【第12話】王室謹製野菜、誕生の予感

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 王室への献上野菜の試作が始まった。

 俺はリリィとモフ、そしてセルゲイド領主の手配で借りられた温室を使って、特別な区画を用意した。
使用する土は山間から運ばれた特級の黒土、水は地下から湧き出る清流。
王室謹製となれば、環境からして全てが一級品だ。

「タケルさん、緊張してますか?」

 リリィが笑いながら水やりをしている。

「そりゃ、するだろ……王様に食べてもらうんだぞ、俺の野菜を」

「でも、タケルさんのスキルなら、きっと大丈夫です」

 その言葉に少し勇気をもらい、俺はいつも通り“微成長”スキルを発動させた。

 だが──

「……あれ?」

 いつものように育つはずの苗が、妙に元気がない。
葉の色が淡く、茎の太さも不安定だ。何かが違う。土、水、気温……すべてが最上級のはずなのに、なぜ?

.
.
.
 数日間、試行錯誤を繰り返すも、結果は変わらず。

「タケルさん、疲れてませんか?」

「ううん、たぶん……違う原因がある気がする。スキルの反応が、なんか鈍いんだ」

 その晩、俺は一人で温室に入り、土をじっと見つめた。


 “微成長”──これは、俺の体調や気持ち、環境にとても敏感に反応する力だ。


(もしかして……素材の質が高すぎて、逆に“過保護”すぎるのか?)

 野菜は“育つ環境”を選ぶ。強すぎる栄養、安定しすぎた条件では、逆に本来の力が出せないこともある。

 翌日、俺は温室の半分に、村で使っていた“素朴な土”と“日常の井戸水”を持ち込み、並行して育ててみた。

.
.
.

一週間後。

「タケルさん! こっちの畝、すごく元気です!」

 リリィの声に振り返ると、素朴な土を使った畝の方では、野菜が見違えるように生き生きとしていた。

「やっぱり……“育てる”って、ただ環境を整えるだけじゃないんだな」
 その夜、収穫したトマトをセルゲイド辺境伯に持参した。

「これは……おお……これは素晴らしい。まさに王室の晩餐にふさわしい!」

 満面の笑みを浮かべる領主を見て、俺もほっと胸を撫で下ろした。

 その場でセルゲイド辺境伯を通じ、正式に“王室謹製農園”としての契約書が交わされることになった。



「タケルさん、すごいです……本当に王室に届くんですね」

 リリィが目を細めて微笑む。

「まあ、俺が育てたっていうより……野菜が頑張ってくれた、って感じだけどな」

 モフがどこからか現れて、俺の足元で寝そべった。


「むー」

 この世界で、小さな“微成長”が、大きな未来へとつながり始めている。
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