異世界で子育てしながら静かに暮らしたい元スパイ

ライカタイガ

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1章

第3話:選ばれし者

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...「ちょっと待ってくれ、オレは確かにミアに子供たちを託された、しかし、それはついさっきの事。それなのになぜあなたはそれを知っている・・・」

ゼインの問いに、老人は静かに目を閉じ、小さく息を吐いた。

「ワシは村の長をしえおるリオと申す者じゃ。
ミアは、この村の守り手の血を引く巫女じゃった。
彼女には未来の欠片を見る力があった。
お主が来ることも……そして、あの子たちを託すことも、すでに彼女の中では決まっていたのじゃ」

「未来を……見る?」

「予知とは少し違う。可能性を読む力だ。お主が現れる未来を彼女は“選んだ”のだろう」

ゼインはしばらく言葉を失っていた。
超常的な話には馴染みがないわけではないが、
それを信じるかは別の問題だった。
しかし、ミアが最後に見せた安らかな表情と、光に包まれて消えた姿が、
全てが“偶然”ではないことを物語っている気がした。

「……なら、なおさら、俺はこの命を無駄にできないな」

リオは微笑んで頷いた。

「そう言ってくれると思っておった。
あの子たちは、まだ幼くて頼りない。
だが、あの兄妹には……特別な力が眠っておる」

「特別な……力?」

「その力が目覚めれば、この世界にとって大きな希望にも、
災いにもなりうる。
だからこそ、守る者が必要なんじゃ。ミアが託したお主に」

ゼインはリオの言葉を反芻しながら、空を見上げた。
青く広がる空に、かつていた世界の灰色の空はなかった。

「……それが、俺の“次の任務”ってわけか」

リオは重々しく頷いた。


「そうじゃ。これはこの世界を救うかもしれぬ大切な任務じゃ」

「だったらまずは――飯と仕事の確保だな」

ゼインの現実的な返しに、リオは声を上げて笑った。


「うむ、それでこそよ。生活が立たねば未来も守れん」


リオはゼインに村の中でできる仕事のいくつかを紹介した。畑仕事、木材の切り出し、水路の整備。どれも地味だが、村にとっては欠かせない作業ばかりだった。

「明日からでいい。好きなものを選んで、村の生活に慣れるとよい」

「助かる。じゃあ、まずは薪割りからだな」

「ふむ、ならば鍛冶屋のヴァルドのところへ行くといい。手荒な男だが、腕は確かじゃ」

「了解した」

そう言ってゼインは一礼し、リオの元を後にした。

異世界での生活。与えられた運命。

だがそれ以上に、今の彼にとって大事なのは――

「まずは、あの子たちを笑わせてやることから始めるか」

ゼインの中で、静かに何かが芽吹き始めていた。
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