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1章
4話
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「えっと…教科書は適当でいいや。後昼と、札、ぐらいあればいいかな。」
転校してきて早二か月、二回目の登校は池身高校特有の長く急な坂を上って進む。同じ制服をまとったたくさんの生徒に紛れて高校に入ると、灯我はすこし悪いことをしている気分になった。それでも教室に入れば、最初に目についたのは、自分の席の後ろに座る夜安だった。
「あ!葉風!来たんだ!」
「おはよう萩白くん。本当に俺の後ろの席だったんだ。」
「だから言ったじゃん!てか、本当に来たんだな。」
「また明日って言われたからね。」
そういうと、夜安は一瞬きょとんとすると、直ぐに弾けるような笑顔を見せた。
「おい。邪魔だ夜安。」
「あ!おはよう鏡!!」
すると不意に後ろから、声が聞こえてきた。その声はどこか怒っていて、夜安と、言外に灯我を攻めたてるような雰囲気を持っていた。振り向くと、マスクをした青年が立っていた。
「教室の入り口に立つんじゃねぇ。はいれねぇだろうが。」
「あ、ごめん。」
夜安と灯我が入口から避けると青年はずんずんと進んでいき、夜安の席の後ろ、つまり灯我の席の二つ後ろの席に座った。そしてすぐさま、机に臥せって眠り始める。
「今のは…?」
「同じクラスの蓮離鏡。無愛想だけどいいやつだよ、俺の友達。」
「いいやつ…ねぇ。」
灯我はさっきの一連を思い出す。教室に入って言って席に座る。ただそれだけの動作の時、自分の隣をすれ違う時に彼は自分の事を睨んだような気がした。初対面にそんな態度を取る人がいいやつ、と言われても些か信じられない。
「てか、この教室名前順に席並んでるんだね。」
「先生が席替えは面倒くさいから出席番号のままでいいだろうってさ。」
「あぁなるほど。」
転校初日の時に自分を案内した担任を思い浮かべて、灯我は納得した。一日の、しかも少ししか関わっていないが、担任は少々適当で、放任主義的なところがあるらしい。
「ま、いいや。あ、そうだ葉風ってスマホ持ってるよな?連絡先交換しようぜ。」
「あ、いいよ。ついでに時間割送ってもらっていい?」
「いいぜ!」
「おらおまえらー席つけー」
二人が話しながら自分の席に着くと、タイミングよく担任が入ってくる。そして、灯我がいることを確認すると、薄く笑って連絡事項を話し出した。案外悪い人ではないのかもしれない。
久々の学校と、移動教室の多さに戸惑いながらも夜安の補助を受け、灯我は何とか学校を終わらせる。そして、部活をしてない人たちが全員帰ったあたりで、やっと灯我は目的の理科室に向かった。
「やぁ、昨日ぶりだね。元気?」
理科室の奥に鎮座していた人体モデルに向かって話しかけると、普通の人体モデルのふりをしているのか微動だにしない。しかし、いくらか理科室内の温度が下がる。
「怒らないでよ。君のそれは自業自得だろ?自分のナワバリ出て俺に会った自業自得。さて、君みたいな有名になりすぎたタイプは祓っても祓ってもきりがないから、封印してタンクになってもらうことにするよ。」
灯我はカバンから札を取り出し人体モデルの心臓の部分に貼る。有名になりすぎた妖怪は、祓ったとしても人の噂で復活する。だからこそ一体を残して動けない状態で無害化した方が厄介ではないのだ。
「朝をもたらす太陽の炎よ、影となりし夜に悪しきものを封じ込めよ。我の灯りを捧げる!」
封印を施して札が小さく燃えて人体モデルの中に入っていく。すると下がった室内の気温が戻っていく。終わってすぐに誰かに聞かれていないか急いで灯我はあたりを見る。すると入り口には夜安がいた。
「………死にたい。」
「またぁ!?」
転校してきて早二か月、二回目の登校は池身高校特有の長く急な坂を上って進む。同じ制服をまとったたくさんの生徒に紛れて高校に入ると、灯我はすこし悪いことをしている気分になった。それでも教室に入れば、最初に目についたのは、自分の席の後ろに座る夜安だった。
「あ!葉風!来たんだ!」
「おはよう萩白くん。本当に俺の後ろの席だったんだ。」
「だから言ったじゃん!てか、本当に来たんだな。」
「また明日って言われたからね。」
そういうと、夜安は一瞬きょとんとすると、直ぐに弾けるような笑顔を見せた。
「おい。邪魔だ夜安。」
「あ!おはよう鏡!!」
すると不意に後ろから、声が聞こえてきた。その声はどこか怒っていて、夜安と、言外に灯我を攻めたてるような雰囲気を持っていた。振り向くと、マスクをした青年が立っていた。
「教室の入り口に立つんじゃねぇ。はいれねぇだろうが。」
「あ、ごめん。」
夜安と灯我が入口から避けると青年はずんずんと進んでいき、夜安の席の後ろ、つまり灯我の席の二つ後ろの席に座った。そしてすぐさま、机に臥せって眠り始める。
「今のは…?」
「同じクラスの蓮離鏡。無愛想だけどいいやつだよ、俺の友達。」
「いいやつ…ねぇ。」
灯我はさっきの一連を思い出す。教室に入って言って席に座る。ただそれだけの動作の時、自分の隣をすれ違う時に彼は自分の事を睨んだような気がした。初対面にそんな態度を取る人がいいやつ、と言われても些か信じられない。
「てか、この教室名前順に席並んでるんだね。」
「先生が席替えは面倒くさいから出席番号のままでいいだろうってさ。」
「あぁなるほど。」
転校初日の時に自分を案内した担任を思い浮かべて、灯我は納得した。一日の、しかも少ししか関わっていないが、担任は少々適当で、放任主義的なところがあるらしい。
「ま、いいや。あ、そうだ葉風ってスマホ持ってるよな?連絡先交換しようぜ。」
「あ、いいよ。ついでに時間割送ってもらっていい?」
「いいぜ!」
「おらおまえらー席つけー」
二人が話しながら自分の席に着くと、タイミングよく担任が入ってくる。そして、灯我がいることを確認すると、薄く笑って連絡事項を話し出した。案外悪い人ではないのかもしれない。
久々の学校と、移動教室の多さに戸惑いながらも夜安の補助を受け、灯我は何とか学校を終わらせる。そして、部活をしてない人たちが全員帰ったあたりで、やっと灯我は目的の理科室に向かった。
「やぁ、昨日ぶりだね。元気?」
理科室の奥に鎮座していた人体モデルに向かって話しかけると、普通の人体モデルのふりをしているのか微動だにしない。しかし、いくらか理科室内の温度が下がる。
「怒らないでよ。君のそれは自業自得だろ?自分のナワバリ出て俺に会った自業自得。さて、君みたいな有名になりすぎたタイプは祓っても祓ってもきりがないから、封印してタンクになってもらうことにするよ。」
灯我はカバンから札を取り出し人体モデルの心臓の部分に貼る。有名になりすぎた妖怪は、祓ったとしても人の噂で復活する。だからこそ一体を残して動けない状態で無害化した方が厄介ではないのだ。
「朝をもたらす太陽の炎よ、影となりし夜に悪しきものを封じ込めよ。我の灯りを捧げる!」
封印を施して札が小さく燃えて人体モデルの中に入っていく。すると下がった室内の気温が戻っていく。終わってすぐに誰かに聞かれていないか急いで灯我はあたりを見る。すると入り口には夜安がいた。
「………死にたい。」
「またぁ!?」
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