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1章
8話
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「もしかして…勘違い?」
「どうしよう……え、閻魔様に叱られる……!!嫌だ!どうしよう!どうしよう!」
ばたばた身動きもとれないはずなのに暴れだす火車に、思わず夜安は落ち着いてと叫ぶ。それでも落ち着かない火車に、呆れたように鏡は上から水をかけた。
「ぎにゃぁぁ!!」
「うるせぇ。」
「ちょっと鏡!?」
どうやら水を操る今日は炎を操る火車にとって天敵と言って差し支えないようで、水をかけられるたび悲鳴を上げては炎を守るように体の下に隠す。そして、おびえた目で鏡を見た。
「とりあえず、群れに戻るには和尚さんのところに連れてけばいいの?」
「そうだ!」
「おい、正気か?」
「だって、この子そこまで悪い子っぽくないし、連れて行くだけでしょ?」
叫ぶ鏡に夜安は難なく返す。その腕の中にはすでに火車が収まっていた。それを見て、鏡は苛立ったように舌打ちした。
「お前さっきあったこと忘れたのか?お前はそいつに食われかけたんだぞ。いま俺から離れたら食い殺すかもしれない。」
「そんなことしない!…ちょっとおいしそうな匂いがしただけで。」
「ほら。」
「でもしないって言ってくれてるよ?」
夜安は引く気はないようで、真剣な目で訴えかける。すると、いよいよ折れたように鏡はため息を吐いた。
「俺は何があっても知らないからな。」
「うん!」
許可を得た夜安はすぐさま、立ち上がり、いこっかと火車に話しかける。そしてゆっくりと墓地から出て行った。
それを見届けて鏡は墓地に残った人間を病院の目の前に捨ててくる準備をした。
「和尚さんって誰でもいいの?」
「おう!和尚さんならだれでも地獄に送ってくれるって仲間は言ってたから大丈夫なんだ!」
「ならこの町のお寺に送っていくね。」
「ありがとう!夜安」
「あれ、俺、名前教えたっけ。」
腕の中で小さくなった火車はゆらゆらと尻尾を揺らす。それを触りたくなる衝動を抑え会話をしていく。
「あれだけ呼ばれてればわかる!ちなみに俺の名前は火の焔と書いて火焔て言うんだ。」
「そうなんだ。……あ、お寺についたよ。本当にここでいいの?」
「本当か!?ありがとうな夜安!この恩はいつか必ず返す!だから楽しみにしてろ!」
「なら、楽しみにしてるね。」
寺についたと言えば、火車は嬉々として夜安の腕の中から飛び降りる。
そして、胸を張って鼻を鳴らす。
「じゃあな!夜安!!」
「……うん!またね火焔。」
こんな深夜にお寺の前で大声を出すのはどうかとも思ったけど、それでも、できた友人に対して最大限の礼儀を尽くすため夜安は同じく大きな声で返事をする。
「…やっと来たか。」
「あれ、鏡待っててくれたの?」
「…お前は一人にしてたら死にそうだからな。」
寺から出てくると、そこには鏡が立っていた。どうやら、人間たちを送って行ったあと、夜安を迎えに来ていたようだ。
「ほら、とっとと帰るぞ。」
「え、いいよ。俺も学校の方に行くよ。今日掃除したいっていってたでしょ?」
「いや、いい。今日は学校の奴らが活発化している。そんなときにお前が来るとろくなことにならない。」
「あー…そっか。」
自分の体質の事を再起になってやっと自覚してきた夜安は気まずそうにうなずく。この体質のせいでただでさえ学校生活でも邪魔されているのに、夜の元気になってるタイミングで言って無事に帰ってくる保証など何一つないのだから。
「俺もとっとと帰って寝る。だからお前も帰れ。また面倒事を持ってこられるのはごめんだ。」
「…はいはい。今日も手伝ってくれてありがとうございました。」
「また明日!鏡」
「あぁ、また明日な。夜安。」
元気に手を振って家に帰っていく夜安を見送って、鏡はゆっくりと学校の方へと帰って行った。
「どうしよう……え、閻魔様に叱られる……!!嫌だ!どうしよう!どうしよう!」
ばたばた身動きもとれないはずなのに暴れだす火車に、思わず夜安は落ち着いてと叫ぶ。それでも落ち着かない火車に、呆れたように鏡は上から水をかけた。
「ぎにゃぁぁ!!」
「うるせぇ。」
「ちょっと鏡!?」
どうやら水を操る今日は炎を操る火車にとって天敵と言って差し支えないようで、水をかけられるたび悲鳴を上げては炎を守るように体の下に隠す。そして、おびえた目で鏡を見た。
「とりあえず、群れに戻るには和尚さんのところに連れてけばいいの?」
「そうだ!」
「おい、正気か?」
「だって、この子そこまで悪い子っぽくないし、連れて行くだけでしょ?」
叫ぶ鏡に夜安は難なく返す。その腕の中にはすでに火車が収まっていた。それを見て、鏡は苛立ったように舌打ちした。
「お前さっきあったこと忘れたのか?お前はそいつに食われかけたんだぞ。いま俺から離れたら食い殺すかもしれない。」
「そんなことしない!…ちょっとおいしそうな匂いがしただけで。」
「ほら。」
「でもしないって言ってくれてるよ?」
夜安は引く気はないようで、真剣な目で訴えかける。すると、いよいよ折れたように鏡はため息を吐いた。
「俺は何があっても知らないからな。」
「うん!」
許可を得た夜安はすぐさま、立ち上がり、いこっかと火車に話しかける。そしてゆっくりと墓地から出て行った。
それを見届けて鏡は墓地に残った人間を病院の目の前に捨ててくる準備をした。
「和尚さんって誰でもいいの?」
「おう!和尚さんならだれでも地獄に送ってくれるって仲間は言ってたから大丈夫なんだ!」
「ならこの町のお寺に送っていくね。」
「ありがとう!夜安」
「あれ、俺、名前教えたっけ。」
腕の中で小さくなった火車はゆらゆらと尻尾を揺らす。それを触りたくなる衝動を抑え会話をしていく。
「あれだけ呼ばれてればわかる!ちなみに俺の名前は火の焔と書いて火焔て言うんだ。」
「そうなんだ。……あ、お寺についたよ。本当にここでいいの?」
「本当か!?ありがとうな夜安!この恩はいつか必ず返す!だから楽しみにしてろ!」
「なら、楽しみにしてるね。」
寺についたと言えば、火車は嬉々として夜安の腕の中から飛び降りる。
そして、胸を張って鼻を鳴らす。
「じゃあな!夜安!!」
「……うん!またね火焔。」
こんな深夜にお寺の前で大声を出すのはどうかとも思ったけど、それでも、できた友人に対して最大限の礼儀を尽くすため夜安は同じく大きな声で返事をする。
「…やっと来たか。」
「あれ、鏡待っててくれたの?」
「…お前は一人にしてたら死にそうだからな。」
寺から出てくると、そこには鏡が立っていた。どうやら、人間たちを送って行ったあと、夜安を迎えに来ていたようだ。
「ほら、とっとと帰るぞ。」
「え、いいよ。俺も学校の方に行くよ。今日掃除したいっていってたでしょ?」
「いや、いい。今日は学校の奴らが活発化している。そんなときにお前が来るとろくなことにならない。」
「あー…そっか。」
自分の体質の事を再起になってやっと自覚してきた夜安は気まずそうにうなずく。この体質のせいでただでさえ学校生活でも邪魔されているのに、夜の元気になってるタイミングで言って無事に帰ってくる保証など何一つないのだから。
「俺もとっとと帰って寝る。だからお前も帰れ。また面倒事を持ってこられるのはごめんだ。」
「…はいはい。今日も手伝ってくれてありがとうございました。」
「また明日!鏡」
「あぁ、また明日な。夜安。」
元気に手を振って家に帰っていく夜安を見送って、鏡はゆっくりと学校の方へと帰って行った。
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