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1章
9話
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「……おはよぉ、じいちゃん……って何それ。」
朝、起きて来た灯我が一番最初に見たのは、祖父の膝の上でゴロゴロと喉を鳴らす火車の姿だった。
「昨日の深夜に訪ねて来てな。どうやら群れからはぐれたようだ。こういう地獄に住まうアヤカシ者は本家に送ってしっかりと地獄に送り返してやらねばならん。」
「わかってるよ。それは極楽に住んでるアヤカシ者も一緒、でしょ?聞き飽きた。」
何度も言い聞かせられたことを復唱する。地獄や極楽に仕えるアヤカシ者は傷つけると世界同士に亀裂を生むことになる。それを避けるため、しっかりと本家に送って確実にその住む世界に送り返す。それがルールだ。
「そうだ、ついでに修行だ。灯我、このアヤカシ者を本家に送ってやれ。」
「え、やだよ。未熟な俺じゃ全然知らないところに飛ばしちゃうかも。」
「嘘を吐け。そういっていつも成功させているのはどこのどいつだ。お前は才能があるのに、下らん理由でいつも嫌がりおって。」
「くだらなくないよ。あんなイタイセリフ誰だって言いたくないって。」
灯我がそういうと、暁照は顔を赤くして立ち上がった。
「なんだと!?あの口上は先祖代々受け継がれてきた口上だ。本家の頭の固い連中共よりも一番先祖の能力が強く受け継がれてるお前が言わずに誰が言うんだ。」
「嫌なものは嫌だよ。」
火車を挟んで口論を始めた二人に火車、基火焔は困ったように右往左往し始める。そして終いには、ぽろぽろと涙をこぼしながら「俺は閻魔様のところにはもう帰れないのか?」といって、やっと口論が終わった。
「…わかったよ。本家に送ってあげるからそんなに泣かないでよ。」
「本当か!?」
キラキラと目を輝かせる火焔を見て、灯我は子供を診てる気分になる。それもそうだろう、火焔は猫又から火車になってまだ日が浅い。アヤカシ者として知性を持ったのも再起なせいで、少し精神が人間の子供に近しいのだ。
「……はぁ、揺らめく陽炎よ、朝を呼ぶ者どもが集いし場所にその門を開き、朝を求む者に道を示せ。我の灯りと繋げる。」
灯我が口上を述べると、人ひとりが通れるくらいの山門が出来上がった。それをしっかりと確認した灯我は、通りやすいように火焔を持ち上げてやる。
「はい、敷石は踏まないようにね?」
「わかった!」
大げさに敷石を踏まないようにして、門に入っていく。山門の奥に入った瞬間火焔のすがたがみえなくなって 、無事に送れたことに灯我は肩の力を抜き、暁照は満足気に後ろからその様子を眺めていた。
そして完全に山門が閉じたことを確認すると、灯我はふと見た時計を見て顔を青くする。
「やば!遅刻する!!
灯我は大急ぎで着替えて、朝食を口に突っ込み、カバンを持って家を飛び出す。通学路を駆け抜けて、教室についたときには朝礼を知らせる鐘が鳴った。
「おはよう葉風!」
「あぁ…萩白くんおはよう。」
「鏡は遅かったけど、どうかしたの?」
「朝っぱらから来客があってね…」
軽く説明してる好きに、灯我はちらっと夜安の後ろにいる鏡を見る。今日は机に伏せて眠っているようだった。
「おらお前らー静かにしやがれ―」
今日もやる気のない担任の号令から学校が始まる。灯我は先ほどの火車が無事に地獄に帰れたか、そもそも本家にしっかりと遅れているかなどを考えてちょっかいをかけてくる小さいアヤカシ者をやり過ごしていた。
朝、起きて来た灯我が一番最初に見たのは、祖父の膝の上でゴロゴロと喉を鳴らす火車の姿だった。
「昨日の深夜に訪ねて来てな。どうやら群れからはぐれたようだ。こういう地獄に住まうアヤカシ者は本家に送ってしっかりと地獄に送り返してやらねばならん。」
「わかってるよ。それは極楽に住んでるアヤカシ者も一緒、でしょ?聞き飽きた。」
何度も言い聞かせられたことを復唱する。地獄や極楽に仕えるアヤカシ者は傷つけると世界同士に亀裂を生むことになる。それを避けるため、しっかりと本家に送って確実にその住む世界に送り返す。それがルールだ。
「そうだ、ついでに修行だ。灯我、このアヤカシ者を本家に送ってやれ。」
「え、やだよ。未熟な俺じゃ全然知らないところに飛ばしちゃうかも。」
「嘘を吐け。そういっていつも成功させているのはどこのどいつだ。お前は才能があるのに、下らん理由でいつも嫌がりおって。」
「くだらなくないよ。あんなイタイセリフ誰だって言いたくないって。」
灯我がそういうと、暁照は顔を赤くして立ち上がった。
「なんだと!?あの口上は先祖代々受け継がれてきた口上だ。本家の頭の固い連中共よりも一番先祖の能力が強く受け継がれてるお前が言わずに誰が言うんだ。」
「嫌なものは嫌だよ。」
火車を挟んで口論を始めた二人に火車、基火焔は困ったように右往左往し始める。そして終いには、ぽろぽろと涙をこぼしながら「俺は閻魔様のところにはもう帰れないのか?」といって、やっと口論が終わった。
「…わかったよ。本家に送ってあげるからそんなに泣かないでよ。」
「本当か!?」
キラキラと目を輝かせる火焔を見て、灯我は子供を診てる気分になる。それもそうだろう、火焔は猫又から火車になってまだ日が浅い。アヤカシ者として知性を持ったのも再起なせいで、少し精神が人間の子供に近しいのだ。
「……はぁ、揺らめく陽炎よ、朝を呼ぶ者どもが集いし場所にその門を開き、朝を求む者に道を示せ。我の灯りと繋げる。」
灯我が口上を述べると、人ひとりが通れるくらいの山門が出来上がった。それをしっかりと確認した灯我は、通りやすいように火焔を持ち上げてやる。
「はい、敷石は踏まないようにね?」
「わかった!」
大げさに敷石を踏まないようにして、門に入っていく。山門の奥に入った瞬間火焔のすがたがみえなくなって 、無事に送れたことに灯我は肩の力を抜き、暁照は満足気に後ろからその様子を眺めていた。
そして完全に山門が閉じたことを確認すると、灯我はふと見た時計を見て顔を青くする。
「やば!遅刻する!!
灯我は大急ぎで着替えて、朝食を口に突っ込み、カバンを持って家を飛び出す。通学路を駆け抜けて、教室についたときには朝礼を知らせる鐘が鳴った。
「おはよう葉風!」
「あぁ…萩白くんおはよう。」
「鏡は遅かったけど、どうかしたの?」
「朝っぱらから来客があってね…」
軽く説明してる好きに、灯我はちらっと夜安の後ろにいる鏡を見る。今日は机に伏せて眠っているようだった。
「おらお前らー静かにしやがれ―」
今日もやる気のない担任の号令から学校が始まる。灯我は先ほどの火車が無事に地獄に帰れたか、そもそも本家にしっかりと遅れているかなどを考えてちょっかいをかけてくる小さいアヤカシ者をやり過ごしていた。
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