秋草を揺らす風が吹く先に

溯蓮

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1章

11話

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「アヤカシ者にはいくつか種類がいるんだ。まずは、一般的に妖怪といわれるようなやつら、鬼とか、さっきのちびっこい奴ら。これが百鬼系って言われてる。」

 図解をするためにそこらへんにある木の棒を使って地面をがりがりと削って絵をかいていく。子供とかかわることが多かったからか、その絵は男子高校生が描く絵にしてはずいぶんとかわいらしい。
 それに夜安はほんの少し驚きながらも灯我の説明を聞いていく。

「次に、前に君が遭遇してた人体モデル。あれは学校の怪談とかの噂からできてるから、その名の通り都市伝説系って呼んでる。」

「都市伝説系…あ、口裂け女とかも入るんだ。」

 かわいらしい鬼や、提灯お化けの横に、花子さんや口裂け女と思われるマスクをした女が書き足される。なんだかかわいいそのイラストによって、妙に緊張感が抜けるが、灯我はそれに気づいていないのか、説明を続けていく。
 次に書き足されたのは天使や兎、屈強な鬼や火車だった。

「で、昨日君があったのは地獄に棲んでる火車。これは所謂天国や地獄に居る異界系に所属するんだよね。神の使いだったり、日本書紀に出てくる因幡兎とかは天国、獄卒だったり火車は地獄に棲んでる。」

「この鬼はこっちの鬼と何が違うの?」

「いい質問だね。正式には出自が全然違うんだ。」

 そういって灯我は百鬼系のほうに山姥や牛鬼などを書き足し、地獄者のほうには幽霊を描き、獄卒と矢印でつなげる。

「百鬼のアヤカシ者は昔からそういう種族なんだ。鬼っていうカテゴリに入る山姥や牛鬼みたいなね。でも、獄卒は違う。もとは幽霊で、地獄にやってきた亡者たちなんだ。その中から獄卒を選んで役職として与えるんだ。」

 百鬼のほうには種族、異界のほうには役職とか聞く加えて、夜安は同じ鬼でもこんな違いがあったのかと、思わず感嘆の声を上げる。同時に、自分の説明に少しの不安を感じていた灯我も問題なく伝わっていることに安どのため息を吐き出した。

「そして最後が、呪物と呼ばれるもの。これは完全な物なんだ。」

「もの?」

「そ。例えば、メリーさんの人形があったとする。それが力を持って呪を発する。それが噂となってメリーさんの電話という都市伝説に進化した場合。」

 灯我は淡々とメリーさんの人形を二つ描く。一つにはオーラのようなものをまとわせて、一つは電話を持たせる。

「その場合、この都市伝説はそのまま都市伝説系のアヤカシ者になる。で、問題はこっち、本体。厄介なことに、都市伝説としてのメリーさんの電話にも力があるんだけど、こっちの本体にも力が宿ってる。」

「それが、呪物…?」

「そう。呪を宿した物体。メリーさん人形とか、お菊さん人形とか、あとなんだ…アナベル人形とか?」

 その説明に、ふと違和感を夜安が持つ。

「呪物って、人形しかないの?」

「え…?あー、形として、呪を持ちやすいんだよ。藁人形とかも入ってくるし、人型って、呪を入れる器としてちょうどいいんだよ。もちろん、それ以外の呪物もあるよ。妖刀とかも呪物だし。」

 夜安はなるほど、とうなづく。今までかかわってきたアヤカシ者にそういった分類があることを知らなかった夜安は、それを専門としている灯我から教わることを忘れないようにと聞き入っていた。

「でも、なんでそんなに分類してるの?混乱しない?」

「する。すごいする。でも、分類しないと、対処が違うから間違った対応する可能性があるんだ。」
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