黒鬼の旅

葉都

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第二章 地の底の緑

第十六話 声

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狂喜、憤怒、憎悪、


巨神の叫びが、闇に轟く。


巨神の手足に巻きついていた黒い糸は、粉々に消え失せた。

巨神の胸から、黒い螺旋状のうねりを纏う薄暗い光柱が四方八方に散り、空間を貫こうと這い廻る。


ビキリ、ビキリ、闇にヒビが入る。


割れた先から、甲高い音が入りこむ。

耳を澄ませば、人間の悲鳴。


巨神は笑った。


黒朗の身を守る赤い炎鱗に包まれた銀色の光球は砕け散った。

薄暗い光が黒朗の身体を注ぎ打ち、その身体は、ヒビ割れる。

黒朗の身体が赤く染まり、するとヒビは消えてなくなった。

降り注ぎ続ける薄暗い光に、黒に、赤に、忙しなく点滅する鬼。

身を守ろうと黒朗の創る光球は、片端から消される。

無数の赤い炎鱗に包まれた銀色の光球が、巨神を燃やし、消そうと襲う。

だが、巨神の身体で、赤い光球が火柱を上げても、巨神の身体から、黒い螺旋状のうねりが沸き上がり、修復する。


『………。』


黒朗の手足が、ぶるぶると震え始めた。

牙を剥き出しに、歯を喰い縛る小さな黒鬼を巨神は笑い声を上げながら、何度も殴り付け、擂り潰し、踏み潰す。


『………ッ!!』


黒鬼の首が、手足が、腰が、あられもない方向に曲がり、伸びていく。














火花が、

闇に跳ねる。




『………て…、…』




冷たい空間を黒が浸食している。

暗い空間で、白く浮かぶもの。




天の雲の上、遊ぶ虎たちの姿が描かれた服。


白い虎たちは、空を駆け、風を、雨を、雪を、嵐を纏い、まばゆい太陽の傍らで微睡むのだ。




(ああ、たしかに)




闇の中、泳ぐ白い指先は、

邪悪なる鬼が置いていった白い服を握りしめた。




(ヤツラのものだ)




白い服は、淡く光りながら、彼の闇色に染まった身体に髪に溶けていく。


闇を波打たせながら、身を起こしたアルシャンの身体は白く、長いその髪は、黒と白が入り交じる。


ざばり、闇の中から出てきた手の中には、赤い数珠玉の糸たち。


アルシャンをこの暗い地底に縛り付けてきた人間の血の雫が、ぱちん、ぱちんと泡のように弾けて消えていく。


300年間、落ちてきた赤いそれには、アルシャンの愛した少女の血は一つもなかった。


赤いその血は、別の人間のものだった。




(あいつは、どこにいったんだろうな…)




黒い髪をなびかせ、金色の目を勝ち気に煌めかせる少女は。

我が強く、自分勝手に動き回る。



(あいつの声がききたいなぁ…)



きっと、アルシャンを捨てたのだろう。


彼女にとってアルシャンは何の価値もなかったから。


彼女の目は、アルシャンなど見ていなかった。




彼女が愛するのは、歌と自由と享楽。


彼女が追い求めるものは、富と、世界。




人外の者からの愛など、彼女には何の価値もなかった。






アルシャンは、わかっていたのだ。








長い黒と白の斑の髪を垂らしながら、アルシャンは闇の上で、ふわりと浮く。


あざやかな黄緑色に、赤や黄色、群青色が星のように散らばる両目が光り輝く。


アルシャンの身体から、白と金色の渦が吹き出した。


それは闇を縦横無尽に吹き抜け、消しさり、黒鬼と、巨神の蠢く空間に手を伸ばす。






『アルシャン…?』


《ⅩΘⅥⅧЮⅨⅨーー!!》








愛する少女は、アルシャンを裏切り捨てた。






地上から降ってくる赤い血が、アルシャンの心を打ち砕く。



春になれば、



降ってくる。




愛する少女とは違う人間たちの血が、




降ってくる。




夏に、



秋に、



冬に、




『大丈夫だよ。あんな魔物怖くない!この街には神様がいるんだ!』




弾けるような笑顔で、




『ありがとう神様!!』




叫ぶ子供たち




『神様ー、聞いてくださいよー』




通りすがりの愚痴りに、




『神様、いつもありがとうございます。』




柔らかな感謝の祈り、




『神様!!一緒に飲みやしょ~やア!』




飲んべえに、




『神様、今日はですね、』




話し始める子供がいて、





地の底の、虎の元に、


人間への憎悪を地に滲ませながら、うずくまる虎の元に、






降ってくる。









『…うか……』




大地が波打ち、街は崩れゆく




『どう…か…!神様!』




血を流しながら、子を抱きしめる女




『お願いです……、この子をお守りください…!!』




逃げ惑う、人間たち





『助けて…』


『助けて!!』




大地が裂ける




『神様!!』





たくさんのものが、降ってくる。
















ため息を、奥底の闇へと落とす。








『悪いな、ジャージィカル』




巨神と共に、渦巻く白と金の光によって、闇に押し込められかけている黒鬼の耳がぴくりと動く。




『ソイツと一緒に…、ちょっと封印されてくれ。』




黒鬼は、アルシャンのいる光の渦を見上げ、巨神は怨嗟の叫び声を上げる。

灼熱色の目と、輝く黄緑色の目がかち合う。



《ⅧⅨ!!ⅧⅨ!!ⅧⅨーーーーーー!!!》



高くて、低い、怨嗟の叫び声を上げながら、巨神の手が光を貫き、アルシャンのいる空間に伸びる。

その身体を掴もうと迫る。

が、その手は、拳1つ分の空白に、何も掴めない。


巨神の手は、光に押し潰されながら闇に引き込まれて消えていく。





ぱち…





アルシャンの身体がビクリと震え仰け反った。

白い額から、灼熱がバチバチと音をたてて零れ落ちる。



『…オマエは、わからないかもしれねーけど…』



黒朗が触れたアルシャンは、少し火を抱いた。

今、黒朗の力は、地底を暴れ狂っていた。

業火と変わったそれは、アルシャンを燃やす。



『…オマエはさ、結構、悪くねえんだよ…』



そして、アルシャンが溜め溢した憎悪を、

闇を、燃やし尽くした。


だから、灼熱は、アルシャンに、


『…ありがとな、ジャージィカル』


死と、平穏をもたらす。



アルシャンの腕が、足が、白く、金色の雲渦に変わっていく。










巨神は、完成していく封印から逃れようと暴れる。

黒鬼は、砕けてぼろぼろに伸びきった身体を、ゆらりと起こした。

小さな黒鬼は、ひとまわり大きくなっていた。

吼える巨神を見上げた黒鬼は、灼熱色の目を細め、


くぱり、


楽しそうに、笑みを浮かべ、





『アアアアアあるじいーーさまああアアアア!!!』





目を細めた。





『あるじさま!!あるじさまああアアッ!!』





頭の中で、何かがやかましい。





『あなたノオッ!!仁矢ですッ!!!』





黒鬼は、眉間にシワを寄せる。


あなたのじんや…………


奇っ怪な言葉だと鬼は思った。


黒鬼のモノ、という存在は、この世界にはない。

黒鬼は、ただヒトリで在る。

比肩のモノなどいない。

黒鬼のそばにあれるのは、灼熱と破壊と死だ。

それだけだ。



それなのに…



『あるじ様、今何されてるんですか??!!アタシもうさっきから胸騒ぎが止まらないッ!!』



あるじ…


あるじ…



『身体中もう熱くって熱くって、アタシとろけちゃいそうなんですよ!!あるじ様の熱いタッ!!「死ねやオラアアア!!」ちょっ、アンタッ、何刺してんのよオオオオ!!??イッタ!!しっぽイッタイッ!!「うるせえッ!このクソトカゲ!!オレの家が、木っ端微塵じゃねーかッ!!」仕方ないでしょおお?!!、今、あるじ様の力がアタシの中を駆け巡りまくってるのよッ!!もお~、イきまくりよッッ!!「黒朗の…?そっか、そういう、ん?何だこれ、頭に、あああ?!」ちょっ、アタシのしっぽ、てめえ!!輪切りにすんなッ!!』



輪切りか、と黒鬼は思った。




『「黒朗かッ!!」』




叫ぶ声に、

黒鬼は、ぐらりと身体をよろめかせた。



『「オマエッ、何してんだッ!!」』



黒鬼の身体を、千と万の刃が貫くような痛みがめぐる。


『ちょっ、うるさ、「今、どこにいるんだよ!?」アンタなんで割り込めてんの?!あるじ様とアタシの繋がりにッ!!』


痛みに、

灼熱の目から、赤く燃える雫が一筋落ちた。


『「む…?天才だから?」ハアア?!「たぶん、こうやってオマエにぶっ刺してるのが、ハァーーーまずいこれ死ぬわ死ぬあれ見えあれやばい母様じゃ」』



『…アオヤギ…。』



聞き覚えのある音に、黒鬼は、あえぐ。



『…それに、ジンヤだな…。』



『キャアアアアーーーー!!!あるじさぐ「黒朗ーーー!!!、オマエ今どこにいる?!!仁矢がッ、竜になりやがったぞ!!トカゲにしては何かおかしいと思ってたけどな!?でかいししゃべってるし仕方ないかってそうじゃねーんだよ裏切れよオレの期待をッ!!ふざけんなよクソ鬼」もっとイケるわよ?「うるっせえ!!オマエ絶対黒くなりかけてんだろそうだろ?!今すぐそっから離れろシャレにならんそこで慎ましく生きてる方々に大迷惑だつーかオレの家を返せバカヤ」』


『…うるさい、』


『「なにィイ?!」』


『…黙れ…』


『「黒朗、てめえ…」』




『黙れーーーーーーーーーーー!!!』



ふらり揺れる黒鬼を、巨神の拳が捕らえた。




拳の中の黒鬼に、

巨神は、にぱり、と笑った。




《(∥ⅢⅢ、δⅡⅧЮЮⅨ?
∥ΘΘⅡΗЮЮⅨⅧⅩⅩ…》











晴れた青い空、

吹き荒れる寒風に震える森の木々、

突然地響きが鳴る。


赤い屋根の家の残骸の上、赤い竜と側にいた黒髪の少女は、ぶっ倒れていた。


「…な、」

(何だ、くそ)


脳天まで駆け抜けた衝撃に、身体が痺れて動けない。


『ハヒャ、ハヒャ、ハヒャ』

「…お、い、だいじょうぶか、じんや…。」


泡を吹きながら、荒い息をついている死に体の赤い竜に、青柳は、声をかける。


『じ、って、る』

「じんや…、しゃべるな、無理を、するな」


美しい赤鱗が、しゃりしゃりと砕け落ちた。


(アイツ、なんで…)


『あるじ、さ、怒って、る』


喘ぐ仁矢の言葉に、青柳は口を引き結ぶ。











黒鬼を握りしめていた巨神の手が、赤く輝き弾けた。

灼熱となって、どろどろと溶けたそれは宙を舞う。



《ⅩⅧ?!》



黒い目を見開く巨神。

黒鬼の身体が、赤と金色の灼熱に染まりながらどんどん膨れあがり大きくなっていく。



《Ⅵδ!ⅥЮーーーーー!!》



巨神の片方の耳が、金色の溶岩となって溶け落ちる。


片方の肩が、金色の溶岩となって溶け落ちる。


片腹が、金色の溶岩となって溶け落ちる。


片足の脛が、金色の溶岩となって溶け落ちる。



今や巨神の半分ほどの大きさの、灼熱の塊となった鬼から、腕が、脚が飛び出し、巨神に飛び付いた。

盛り上がった塊に、穴が空き、



『アアアああアアアーアアーアアアアーー!!』



それは吼えた。

同時に、巨神の身体中から、灼熱の火柱が上がる。

火柱と巨神の薄暗い光柱が、闇の空間をぶち壊した。









《ソレガ、オマエノダイジニシテイルモノカ?》





《グチャグチャニシテヤロウナ》







巨神はそう言って、黒朗と仁矢の繋がりに触れようとした。


(もう少しで、アイツらが、死ぬところだった…オレが防がなければ、青柳と仁矢は消えて…)






黒い灰が、舞う






(やめろ、考えるな…)





黒朗の立つ大地には、誰もいない





(やめろ)





誰もいない、何もいない



生きているものは、いない



黒朗が、殺した…



黒朗が、みんな殺した…



黒と白の斑な虎も、消えていく…




(やめろ…)




黒鬼は嗤う




『ずっと、ずっと、そうだった…』




青柳も、仁矢も、そこにはいない




『いつものことだ。』






大地が激しく揺れ、街を、森を、震い落としながら、割れていく。


火柱が、噴き出した。


幾つも、幾つも、噴き出したそれのなかから、

禍々しい黒の巨人と、灼熱色の巨人が、絡みあいながら姿を現す。









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