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11 公爵夫人とのお茶会
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もしかして、お義兄様にとってのわたしって、当主になることを妨害するかもしれない邪魔な存在なのでは……? お義兄様はわたしを疎ましい存在だと思っているのでは?!
一瞬そう思ったものの、すぐに考えを否定した。
違う。だってお義兄様は言ってくれた。絶対にわたしとティルマン様の婚約を破棄してみせる、と。
本当にわたしを邪魔な障害物だと思っているのなら、少しでも早く結婚させて家から追い出したいと思うはず。
そこでハッと思い出す。
あの時、お義兄様はこうも言っていた。わたしは愛されて幸せな結婚をすべきだ、と。
つまり、わたしを幸せにしないティルマン様とは結婚させないけれど、それはずっと家にいてもいいと言ったわけではなく、結婚自体はいずれ絶対にさせるつもりでいる、と、そういうつもりなのでは?
もしそうなら。
どうせ誰かといずれ政略結婚するのなら、わたしはティルマン様と結婚して、少しでも早く家を出た方がお義兄様のためになるのではないだろうか。
本来、ギレンセン侯爵家の正当な跡継ぎになるはずのわたしがいつまでも家にいては、お義兄様も色々と気を使うだろうし、やりにくいこともあるかもしれない。
と、そんなことを考えているわたしは、実は今、恒例のごとくアダルベルト公爵家へと来ている。夫人教育のためだ。
公爵家の歴史、他領との付き合い、事業展開についての授業が終わり、今はマナー練習のために公爵夫人とお茶をしている。
香り高いお茶を飲み、ほっと一息ついていたわたしに夫人がこんなことを言い出した。
「来年のオフシーズンには、あなたもティルマンと一緒に領地へ行きなさい。田舎で退屈なところだけれど、一度くらいは行っておかないとね。わたくしは行かないわよ? 王都とは違ってなにもないし、退屈ですもの。つまらなくて」
ほほほ、と笑う夫人はティルマン様にそっくりな容貌をしている。
金髪碧眼で美しく、とても若々しい。にこやかにお話をさせてもらってはいるけれど、実を言うとあまり好ましく思えない相手である。
なにせ選民思想が強い人で、なにかにつけてわたしを格下の侯爵令嬢だと小馬鹿にするような言動をとってくるから辟易してしまう。
ご自身は確か子爵家の出身で、公爵家にメイドとして雇われていた時に当時は七才年下で十三才だった現公爵様を誘惑し、身籠ったことで公爵夫人の座を手に入れたと聞いている。
自分は元下位貴族だったのに、どうしてああも身分を笠に高飛車に振舞えるのだろう。とても不思議だ。
今ではもう公爵夫妻の仲は冷え切っていると、社交界ではもっぱらの噂だ。
公爵は別宅に愛人を囲って禄に屋敷には戻らないらしいし、夫人はそれを気にすることもなく、暇さえあれば湯水のごとく金を使って豪華なドレスやアクセサリーを購入し、それらを身に付けて昼も夜も遊び回っているという。
そんな公爵夫人のお気に入りのメイドが、たった今、公爵邸を辞すわたしを玄関まで先導してくれている。小柄なのに豊満な胸をした色気ある体つきのそのメイドは、年齢はわたしと同じくらいで、美しいストロベリーブロンドの持ち主だ。
確か名前はリリカ。ティルマン様がそう呼んでいた。
そう、庭の茂みの奥でティルマン様に淫らに跨り、激しく腰を振って喘いでいたあのメイド。彼女こそがリリカだった。
一瞬そう思ったものの、すぐに考えを否定した。
違う。だってお義兄様は言ってくれた。絶対にわたしとティルマン様の婚約を破棄してみせる、と。
本当にわたしを邪魔な障害物だと思っているのなら、少しでも早く結婚させて家から追い出したいと思うはず。
そこでハッと思い出す。
あの時、お義兄様はこうも言っていた。わたしは愛されて幸せな結婚をすべきだ、と。
つまり、わたしを幸せにしないティルマン様とは結婚させないけれど、それはずっと家にいてもいいと言ったわけではなく、結婚自体はいずれ絶対にさせるつもりでいる、と、そういうつもりなのでは?
もしそうなら。
どうせ誰かといずれ政略結婚するのなら、わたしはティルマン様と結婚して、少しでも早く家を出た方がお義兄様のためになるのではないだろうか。
本来、ギレンセン侯爵家の正当な跡継ぎになるはずのわたしがいつまでも家にいては、お義兄様も色々と気を使うだろうし、やりにくいこともあるかもしれない。
と、そんなことを考えているわたしは、実は今、恒例のごとくアダルベルト公爵家へと来ている。夫人教育のためだ。
公爵家の歴史、他領との付き合い、事業展開についての授業が終わり、今はマナー練習のために公爵夫人とお茶をしている。
香り高いお茶を飲み、ほっと一息ついていたわたしに夫人がこんなことを言い出した。
「来年のオフシーズンには、あなたもティルマンと一緒に領地へ行きなさい。田舎で退屈なところだけれど、一度くらいは行っておかないとね。わたくしは行かないわよ? 王都とは違ってなにもないし、退屈ですもの。つまらなくて」
ほほほ、と笑う夫人はティルマン様にそっくりな容貌をしている。
金髪碧眼で美しく、とても若々しい。にこやかにお話をさせてもらってはいるけれど、実を言うとあまり好ましく思えない相手である。
なにせ選民思想が強い人で、なにかにつけてわたしを格下の侯爵令嬢だと小馬鹿にするような言動をとってくるから辟易してしまう。
ご自身は確か子爵家の出身で、公爵家にメイドとして雇われていた時に当時は七才年下で十三才だった現公爵様を誘惑し、身籠ったことで公爵夫人の座を手に入れたと聞いている。
自分は元下位貴族だったのに、どうしてああも身分を笠に高飛車に振舞えるのだろう。とても不思議だ。
今ではもう公爵夫妻の仲は冷え切っていると、社交界ではもっぱらの噂だ。
公爵は別宅に愛人を囲って禄に屋敷には戻らないらしいし、夫人はそれを気にすることもなく、暇さえあれば湯水のごとく金を使って豪華なドレスやアクセサリーを購入し、それらを身に付けて昼も夜も遊び回っているという。
そんな公爵夫人のお気に入りのメイドが、たった今、公爵邸を辞すわたしを玄関まで先導してくれている。小柄なのに豊満な胸をした色気ある体つきのそのメイドは、年齢はわたしと同じくらいで、美しいストロベリーブロンドの持ち主だ。
確か名前はリリカ。ティルマン様がそう呼んでいた。
そう、庭の茂みの奥でティルマン様に淫らに跨り、激しく腰を振って喘いでいたあのメイド。彼女こそがリリカだった。
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