呼んでいる声がする

音羽有紀

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呼んでいる声がする(その17)謎な人

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新聞配達ってあの男とはかけ離れている。留萌さんなんか勘違いしているのではないか。もう一度聞いてみた。

「新聞配達しているのですか?」

「ん?ああ、紫苑君、ああ、うん。」

「あの人、大学生ですよね?」

「そうだよね、偉いよ。」

 イメージじゃ無いなあと瑠子は思った。

 そんな話をしているうちにイエローハウスの前の階段に辿り着いた。

階段は雪が積もっているが他の住人の歩いた後がけものみちになっていて

上がる事が出来た。

「じゃあね、風邪ひかないようにね、お疲れ様。」

「ありがとうございます。」

 頭を下げ瑠子は部屋に入り濡れているコートを脱ぐとハンガーにかけた。

電気ストーブのスイッチを押して灯らせて暫く冷たい体を暖め、それからユニットバスのお湯を入れた。

 そうしながら雪の海岸綺麗だったなと、また思い出し猫男の事も思い出した。

 新聞配達を本当にしているのだろうか。

まさか、やっぱり留萌さんの勘違いだわ、そうに違いないと瑠子は首を振った。

 お風呂から出るともう、時間は午前2時だった。

やれやれと憂鬱になった。もう日付を超えてしまったと思った。

 案の定、眠りについた瞬間がわからないまま、朝は、すぐやって来た。

窓を開けると雪は止んでいて日が差し一面白かった。

「寒い。」

 携帯で、電車の運行情報を見たら、風の木線は走っていた。やはりと思った。風の木線はめったな事では運休にはならない。

 いやいや支度して、階段がどうなっているか心配しながらドアを開けた

階段に辿り着くとそれをじっと見つめた。

運の良い事に凍ってはいなかったのでほっとした。

 また昨夜の様に住民の足跡の上を踏みしめながら手すりに捕まって下に降りて行った。

やっと地面に無事辿り着いた時は安堵のため息をついた。

階段横のポストに一か所新聞がささっていた。それを見て思いだした。

「猫男がね、まさかね。」

そう呟くとこんな時にでも動く電車を恨めしく思いながら坂を下っていると見覚えの有る姿を見つけた。それは、こちらに向かって来る猫男だった。

 それで、またしても頭の中の疑問が渦巻いた。

あの事を留萌さんから聞く前だったら朝帰りかとか思って軽蔑していた事であろうが

今朝は違った、もしかしてまさか新聞配達の仕事の帰りなのか。

その時、猫男と目が合った。彼の表情は真顔から笑顔になった。

その笑顔に朝日が差して眩しく瑠子の目に映った。

「今から出勤?」

頷く瑠子に

「行ってらっしゃい。」

歩きながらそう言った猫男との間はもう2メートル程の近さになっていた。

「どうも。」

小さな声でそう返しながらも疑惑が胸の中を渦巻いた。

瑠子の背後に去って行った猫男に瑠子は振り向いた。

その姿は疲れている感じにも受け取れた。

今までと猫男に対する感覚が違う様に感じて来た。       

                                  つづく

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