呼んでいる声がする

音羽有紀

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呼んでいる声がする(その21)夕凪書店

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 月は白く輝いている。すうと伸びた月光は、アパートのイエローハウスも照らしていた。

「じゃあ。」

 猫男は言った。瑠子はアパートに入ってから思案した。

 新聞配達に行くかなと夜中寝ながら耳をすましていたが、夜中には出て行かなかった。



 次の日の土曜日、佐季店長に月曜日の休みの事を言うと、休んでも大丈夫だとの事であった

 帰りにさっそく蓮花に休みが取れた事を言いに行った。

「楽しみ。」

 そう言って蓮花は嬉しそうに笑ったので瑠子もまた嬉しくなった。

 従業員通用口から出るとあたりはもう闇が迫っていて北風が冷たい。

 夕凪駅まで、電車は海岸線を通る。つり革に捕まってコンビナートや工場のチカチカした夜景を見た。

 うっとりと見惚れていると、建物の隙間から真っ暗な海岸が見えてそれから夕凪駅の案内のアナウンスが聞こえて来た。

車両のドアの前にいそいそと歩み寄り揺られながら待ちドアから下車する。改札をくぐり抜けると波の音と潮の香がして幸せな気持ちになる。それが瑠子の夕凪駅に到着するまでのいつもだった。

 夕凪駅前の小規模な商店街の小さな本屋の夕凪書店に寄った。

その書店は商店街では珍しく9時までやっているのでぎりぎり間に合う時がある。

 そこで、占星術の本を手に取った。瑠子の星座は蟹座だが、合っている所と外れている所があると瑠子はいつも思う。

たいてい蟹座の性格は自分の仲の良い人には親切に振る舞うが外部の人間には殻に入ってしまう、と書いて有る。

瑠子のそうありたい姿では無いなと思う、もっと華やかな性格が良いななどと解説を読んでいつも思うので新に目新しい事が書いてないかじっと見入った。その集中して読んでいる時に突然背後に男の声がした。

「占い?」

驚いて振り向くと猫男だった。

「ああ、びっくりした。」

「蟹座って女の子っぽいよね。」

人の立読みしている本見ないでと思った。それでつっけんどんに

「そうかな。」

と、一言だけ返した。それからまた、新聞配達の事が思い出されて聞いた。

「あの、バイト帰りですか?」

「夕方だけだけどね、いいよ、運動になって、バイクだけど。」

「バイク、新聞の配達?」

ついに聞いてしまったと瑠子は思った。

「あれ、知っているの?。」

「留萌さんが。」

「あ、そうか。夕方のみの配達だけど偉いでしょ。」

自分で言うかと瑠子は思った。



それにしても、新聞配達なんて軽いキャラクターに合わないですね。

なんて事は言ってはいけないなと思い口をつぐんだ。  

                                    つづく
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