立ちはだかるは魔獣の王から毒親まで⁉︎ 少年剣士と翼の少女と仲間たちの、絆と成長の物語 ー鋼魂戦記(こうごんせんき)ー

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脅威との邂逅編

第23章 修練1 S級戦士の壁

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鋼魂精鋭隊への入隊が決まってから、メタル、ティル、レイチェル、ジェノの4人は同じ班に所属することになった。
時折任務に出向きつつ、待機時には指導係として割り当てられたS級戦士の元で、さらに能力を高めるための修練を受ける日々を送っていた。

この日、4人は屋外の演習場で、シェリー・ハイボール、並びにメイカ・バレンタインを相手に模擬戦による訓練を行っていた。

「S級相手にどこまで通用するのか、今の力を試すまたとない機会だ。」

元々ガンダラ軍に所属し、修練を重ねてA級に昇格したジェノは特に気合が入っていた。

S級の2人を相手に、メタルたち新規加入のA級4人が入り乱れて挑みかかる。

「さぁさぁ、メンズもレディスも遠慮はいらないよ!この私が全部優しく受け止めてあげるからね!」

シェリーが包容力をアピールするかのように両手を前に広げているが、その表情はお世辞にも慈愛の女神といったイメージには程遠い、好戦的な笑みを浮かべた肉食中さながらのものであった。模擬戦とはいえ、完全に戦闘モードのスイッチが入っている。

「それでは遠慮なく行かせていただきます!『フレイムブラスト』!」

最初に動いたのはレイチェルであった。杖の先に魂気を集めると、それを灼熱の炎に変えて巨大な火炎弾を撃ち出した。それを迎え打つシェリーは、手先にほのかに青色を帯びた魂気を纏わせると、襲い来る劫火の塊に向けてかざした。

「悪くない火球だけど、まだまだ熱量が足りないよ。『アイスニードル』!」

瞬く間に槍の穂先ほどの大きさの氷柱を形成すると、それを弾丸のように発射した。

レイチェルの火炎弾とシェリーの氷柱が衝突し、行き場を失ったエネルギーが眩い光となり辺りを照らす。
閃光が収まったとき、両者の技が激突した周辺には、ほのかに熱気を帯びた水滴が霧散していた。
シェリーが放った氷柱は、後から放った上にレイチェルの火球に比べれば大きさにして数分の一程度のものだったが、軽々とレイチェルの攻撃を相殺していたのだった。

「あんな小さな氷柱で、渾身の『フレイムブラスト』を相殺するなんて・・・!」

レイチェルの顔に焦りがにじむ。

次いで前に出たのはメタルだった。
光の剣を手に、レイチェルの横を駆け抜ける。

「レイチェル、火をくれ!」

「もう、人をマッチか何かみたいに言わないで下さい!」

口を尖らせて憤りながらも、レイチェルは杖の先から今度はメタルの剣に向けて炎を放った。
炎は剣の刃と溶けるようにして混ざると、吹き上がるような魂気が赤熱した刀身を形作った。
入隊試験以降、メタルはレイチェルと協力してのトレーニングを経て、水だけでなく炎を剣に取り込むことにも成功していた。

距離を詰めたメタルが、灼熱の刃をシェリーに振り下ろす。

「なかなか良い連携だね。微笑ましいね。」

シェリーが再び紺碧の魂気を両腕に纏わせると、メタルが渾身の力で頭上に振り下ろした炎の刃を、上段受けで止めてしまった。

剣をこれ以上振り下ろすことができないだけでなく、メタルはある異変を感じた。

剣の帯びていた灼熱の炎がみるみると小さくなり、熱を帯びていた刀身の赤みが消え失せていく。いや、それだけではない。シェリーの前腕とぶつかり合っている部分を起点に、刀身そのものまでも削り取られて徐々に細くなっていくのがわかった。」

「(これは⁉︎剣に込めた炎やエネルギーが、失われていく⁉︎)」

違和感に気を取られた刹那、至近距離からシェリーの前蹴りを腹部に受け、メタルは十数メートルほども吹き飛ばされ、地面を転がった。

「メタルさん!」

「他所見してる余裕なんてあるのかい?」

戦線の外へと弾き出されたメタルを気にかけたレイチェルに、シェリーはまるで悪役のような台詞を吐く。

「(氷結技の精度の底が見えない上に、肉弾戦の強さも最上級・・・!それに、メタルさんの剣を受け止めたときの違和感。力も技も圧倒的に格上!)」

威圧的なほどのオーラを身に纏わせたシェリーがゆっくりと歩みを進めて迫っていた。

「(・・・だからこそ試したい!単独の属性技では手が出なくても、これなら・・・!)」

レイチェルは深く息を吸うと、汗ばむ両手で杖を握り直し、空高く掲げた。

一方、ジェノとティルは、メイカと対峙していた。

「『インデックスバルカン』!」

ジェノは両手の人差し指から、魂気の弾丸を連射して、メイカに攻撃を仕掛けた。しかし、メイカは回避をするでも、防御の姿勢をとるでもなく、何事もないかのように表情一つ変えずにその場に立ち尽くしていた。次の瞬間、ジェノの放った弾幕は、メイカの身に届くことなく、彼の体から数十センチほど離れた距離で、まるで動画を停止させたかのようにピタリと動きを止めた。

「『神の見えざる手(サイコキネシス)』。僕の周囲にあるものは、僕の意のままに操ることが出来る。そに程度の魂気弾を止めるなど、造作もないことだ。」

メイカが不敵に笑うと、額の青い水晶が輝きを放ち、彼の足元の石材がビシビシと乾いた音を立ててひび割れ、瞬く間に粉々に砕かれた。
石材の破片は、メイカの周囲を守るように取り囲みながら宙を浮いて、彼の周りをまるで衛星のようにゆっくりと回っていた。破片はメイカの額の水晶が放つのと同じ色の輝きを纏っており、1つ1つにメイカの魂気が高密度で込められていることが見てとれた。

「君の攻撃では僕を傷つけることはできない。利息をつけてお返ししよう。」

先ほど受け止めたジェノの魂気弾と合わせて、メイカは石材の破片を雨霰のようにジェノに向けて撃ち込んだ。

「(まずい、防御を固めなければ。)『カゲロウ』!」

ジェノは咄嗟に魂気の傀儡カゲロウを自らの前に出して、メイカの攻撃を受け止めようとした。しかし、メイカの猛攻にさらされたカゲロウは、まるで柔らかい粘土でできた人形のように全身をあっけなく撃ち抜かれて、バラバラに引きちぎられてしまった。

さらに、カゲロウを貫通した石片の嵐がジェノを襲う。轟音と共に土煙が上がり、ジェノの姿を飲み込んだ。

「やれやれ、君たちには期待しているんだ。この程度の攻撃で終わるなんてことはないだろうね。・・・もう1人の君は、どうなんだい?」

メイカおもむろに視線を上空へと向ける。
そこには、光の翼で宙を舞い、ジェノとメイカの戦闘を見守っていたティルの姿があった。 

空中に陣取ったものの、攻守共に付け入る隙の見つからないメイカの戦闘スタイルを目の当たりにし、ティルは打つ手を決めかねていた。

「(まるでエスパー。あんなの反則じゃないの⁉︎空中から牽制し続けて、活路を探す?でも、あの攻撃は空にも届くんじゃ・・・)」

ティルに動きが見られないと見るや、メイカは両掌を横に広げ、自らの体を魂気で包み込んだ。次の瞬間、メイカの足元で空気が渦巻くと、まるで竜巻のような乱気流が彼の周囲を覆い、その体を一瞬にしてティルが飛んでいるよりもさらに高い所まで運んだ。

サイコキネシスで自らの身を浮遊させ、まるで重量から解き放たれたかのように宙を舞ったのだ。

「メイカさんが、飛んだ⁉︎」

ティルは目を見開いて、自分よりもさらに上空から見下ろすメイカの姿を見上げた。

「空中戦が自分の専売特許だとでも思ってたかい?良い機会だから、より華麗な空の舞い方を教えてあげよう。」

戦慄するティルの顔に影を落とすメイカの額が、不気味な輝きを放った。






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