立ちはだかるは魔獣の王から毒親まで⁉︎ 少年剣士と翼の少女と仲間たちの、絆と成長の物語 ー鋼魂戦記(こうごんせんき)ー

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脅威との邂逅編

第24章 修練2 傷心からの・・・⁉︎

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自分よりもさらに上空から見下ろすメイカに、ティルは気後れしそうになったが、己を振るい立たせると、意を決して飛び出した。

「(すごい威圧感だけど、母さんの訓練だって怖かったし!何もできないままじゃ終われない!)」

光の筋を空に描きながら縦横無尽にメイカの周りを飛び回った。

「(とにかく動き回って翻弄する!空中でのスピードなら、私だって負けてないはず。)」

翼が空を切る音を背中に感じながら、メイカの様子を見た。一方のメイカは・・・ティルが動き回る軌道の中心に身を置いたまま、ゆったりと体の力を抜いて、悠然と体を宙に浮かせている。

「(動かない、いや、もしかしたら動けない?スピードなら私の方が上なのかも?それならスキを見て攻撃を・・・)」

ティルが一抹の希望を持ち出したとき、不意にメイカはオーケストラの指揮者のように両手を広げ、高々と掲げた。
すると、地上からおびただしい数の石材の破片が浮遊し、ティルとメイカが交戦している空域を埋め尽くした。

突如目の前に現れた石材の迷宮に、ティルは目を見開いた。空を自在に駆け抜けていた動きが否が応でも止まる。

「(やばっ!こんな障害物だらけじゃフルスピードで飛び回れないよ。これだけの数と質量の破片を一度に操るなんて、直接手で触れてすらいないのになんてパワーなの⁉︎)」

行手を阻む破片に気を取られた刹那、背後から冷たい圧力が。一瞬にしてメイカはティルの後ろに回り込んでいた。

「勘違いするなよ?スピードで張り合えないわけではないが、より優雅に、効率的に君の背中をとりたかっただけさ。」

背後の気配に気がついたティルが振り向こうとしたときには、メイカは体に魂気の渦を纏わせ、攻撃の体勢に入っていた。

その時、地上で一際大きなエネルギーの鳴動が起こった。

メイカもティルも鳴動の起点に視線を移す。

「(これは・・・⁉︎)」

「(相変わらず素晴らしい出力だ。もう一度見せてみろ。)」

地上では、レイチェルの体から溢れるような魂気が立ち昇り、高々と掲げた杖の先には、赤、青、黄色の3色が入り乱れた極彩色のエネルギーが天を貫かんばかりに輝いていた。

「本当に『カオスフレア』を撃ち込んで来いって言うんですね⁉︎知りませんよ?ここまで出力を上げてしまうと、もう私自身でも発動を解除できないですからね・・・!」

攻撃体勢を整えながらも、レイチェルはカオスフレアを全力で放つことに、いざとなると躊躇いを覚えていた。これが直撃すれば、例えS級戦士でもただでは済まないかもしれない。
そんなレイチェルの気配を読み取ったシェリーは、腰をどっしりと落として力強く構えながら力強く返した。」

「昇給試験で見せたヤツだろう?いいよ、遠慮はいらないって言ったでしょう?修行は思いっきりやった方が身になるんだよ、お互いにね!」

口元に笑みを浮かべながら、眼光鋭くレイチェルを見据えた。
シェリーの気迫に気押され、レイチェルは空に掲げていた杖の先をシェリーに向け直す。

「撃たせてやるってわけですか。本当にどうなっても知りませんからね⁉︎・・・『カオスフレア』!」

杖の先で極彩色のオーラが溶けて混ざり合い、黒い火花を散らすと、レイチェルの目の前の景色を覆い隠すほどの巨大なエネルギー波が放たれ、シェリーに襲いかかった。

次の瞬間、巨大な火柱が高々と上がる・・・はずだった。しかし、目の前にはレイチェルが思いもよらない光景があった。

全身を弛むような紺碧のオーラで包み込んだシェリーが、両手を前に掲げてカオスフレアを受け止めると、黒い火花を帯びた眩いばかりの輝きとはみるみるうちに弱まり、まるで破裂寸前だった風船がしぼむように、文字通り消えてしまった。いや、それだけではない。

「これは・・・一体、どうなってるんですか⁉︎」

シェリーの体を包む魂気は、レイチェルの攻撃を受け止める前よりも明らかにその強さを増しており、はち切れんばかりの圧力が今にも周囲に溢れ出さんばかりであった。

何が起きているのか分からず、レイチェルは冷や汗を流して狼狽の表情を見せる。

「レイチェル、私がどうやって冷気を生み出しているか分かるかい?」

不意にシェリーから問いかけられ、レイチェルは答えに詰まった。今までも自分自身の技の仕組みについてすら、突き詰めて考えては来なかった。そうしなくても大抵のことは感覚的に出来てしまったのである。要はセンスが良すぎたのだ。まして、他人の技の原理について考えようとしたことなどなかった。自らが氷を生成するときも、極寒の地の吹雪や極地の氷塊など、結果をイメージすることで、能力のパフォーマンスを高めていた。

「し、知りませんよ。他人の技の仕組みなんて。」

「そうかい。大抵の冷気使いは、魂気を使って対象の持っている熱を周囲に逃したりして温度を下げる。私も普段はそうなんだけど、『こいつ』を使うときはちょっと違ってね。」

シェリーはゆらめく紺碧のオーラを纏わせた右手をレイチェルの方に差し出した。

「吸熱。温度が下がるってのはね、物体からエネルギーが奪われて分子レベルでの運動がどんどん低下することなんだ。分子の運動が完全に停止する温度が-273℃、いわゆる絶対0度ってやつさ。私はオーラの中に、周囲の熱や敵の攻撃エネルギーを閉じ込めちまうことも出来るのさ。」

突然始まった講釈にレイチェルが困惑気味の表情を浮かべて立ち尽くしていた。

「(もっとサバサバした人かと思ってましたが、話し出したら長くなる系の人だったんですね。)
・・・そのパワー、まさか私の『カオスフレア』のエネルギーを吸収したと⁉︎」

思い至ったレイチェルの血相が変わるのと同時に、シェリーの渾身の力を込めた拳が空を切った。突風が吹き抜けたかのような衝撃がレイチェルの頬をかすめる。恐る恐る振り返ると、レイチェルの背後の地面は暴風による災害に見舞われたかのように大きくえぐり取られていた。

「自分が使えるオーラを敵から奪い取れるっなんて・・・反則ですよ、そんなの。」

口を尖らせながらじっとりとした目つきでシェリーを睨みつつ、レイチェルが両手を挙げた。

「同じことをやれとは言わないさ。それに、私には炎や雷は扱えない。あんたは私にはないモノを持ってるけど、エネルギーの移り変わりにも目を向けたら、持ってる技術の精度が底上げされるんじゃないかって話さ。」

「むぅ~、小難しいのは好きじゃないです。」

「アハハ、大丈夫!あんた、自分で思ってるよりずっとできる子だよ。」

渋い顔をするレイチェルに、シェリーはまるで教え子の背中を押す教師のような眼差しを向けた。

その時、けたたましい音を立てて上空から落下した何かが地面に叩きつけられた。

「いたた・・・!思いっきり蹴り落とされちゃったよぉ・・・。」

レイチェルの視線を向けた先では、ひび割れたティルが大の字で仰向けになり、悔しそうな表情を滲ませながら苦悶の声を漏らしていた。

「空中での動きは悪くないが、スピードに頼りすぎだな。強みを封じられた状況や、自分と同等以上の動きで飛び回る相手にも対処できるようにならないとな。」

余裕の笑みを浮かべながら空から舞い降りたメイカが、ティルの元へと歩み寄り、手を差し伸べた。

「はい・・・、肝に銘じマス。」

ティルは背中を痛そうにさすりながらゆっくりと立ち上がり、メイカの差し出した手を握り返した。その瞬間、微かにメイカの額の水晶が輝き、交わした手を通じて小さな光の粒がティルへと送り込まれた。しかし、ティルを含め周囲の者は異変を感じ取ることはなかった。
「(仕込み完了。成長の見込める、悪くない『名柄』だ。)」
メイカ口元がほんのわずかだが、確かに持ち上がっていた。

そこへ、先刻のメイカの攻撃を受け、全身に手傷を負い土埃にまみれたジェノがよろめきながら現れた。

「・・・手も足も出なかった。オレはまだまだということがよく分かったが、このままでは終わらない。」

肩で息をしながらも、瞳にはなおも強い意志が宿っていた。

シェリーの前蹴りを受けてダウンを喫していたメタルもまた、己の未熟さを改めて噛み締めながらも、ゆっくりと立ち上がっていた。

S級戦士との模擬戦は、メタルたちにとって想像以上にほろ苦い結果をもたらすものであった。

その時、各々の顔に滲む苦渋の色を見てとったかのように、シェリーが高らかに声を上げた。

「さーて、いい時間だし今日のトレーニングはこのぐらいにしようか。みんなこの後、時間大丈夫かい?ご飯行くよ!今日は私がおごるよー!」

「ええっ、今日これからですか⁉︎えっと、蹴り落とされてボロボロで、腰も痛いんですけど・・・」

「私は必殺技を破られて、傷心モードですぅ・・・!」

ティルとレイチェルは、指導教官からの突然の提案に戸惑っていた。

「だからこそだよ!せっかくいい汗かいたんだから、今日は色々話聞かせてよ!」

メタルたち一同は最初呆気に取られながらも、空気を一転させてサバサバとした笑顔で誘うシェリーの勢いに飲まれ、いつの間にか自然に首を縦に振っていた。
メタルはしばし目をつむり、ふぅと一息ついた。

「(確かに、お互いゆっくり話をするタイミングもなかなかなかったかな。もういいや、今日は、開き直っていっぱい食べようかな?」

S級戦士の壁の高さを痛感したところに、修練の疲れも重なり、少し気分が落ち込みそうになっていたが、シェリーの楽天的な勢いにかき乱され、なんとなく胸襟を開いてみようかという心持ちに傾いていた。
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