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空輸任務編
第34章 鋼の翼
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ドグマハートのアジトでは、ゲンジが忌々しげに気炎を吐いた。エクトプラズマーどうしでなら感知できるはずのレイドの魔力を、追うことができなくなったためであった。
「ガンダラ軍に殺されたか、捕縛されて何かしらの手段で魔力を封じられたか・・・。いずれにしても無力化されたと見るべきか。」
狂気も実力も、申し分ないはずだった。
せっかく王都に巣食う人材をエクトプラズマーとして引き入れたのに、正体を隠すどころか我欲のままに自己の存在をアピールするような振る舞いをし、オーバーテクノロジーをろくに回収することもないまま、鎮圧されるとは。
「くそ!統率がとれなければ意味がない。」
舌打ち混じりに独りごちたところで、背後に現れた人物の影が床に落ちる。
「まぁ焦るな。元々オレたちはネジの飛んだ自由人。好き勝手にするヤツもいるのは分かってただろう?」
ジグロが筋肉の鎧を揺らしながら、ひょうひょうとした笑みを浮かべていた。
隣にいるもう1人、エクトプラズマーを引き連れている。おどけた顔を模した大きな唇が目を引く仮面を被り、赤を基調とし、袖口にや裾にゆとりのあるシルエットの衣装を纏った男。小さく笑いながら肩を震わせている。
「ジグロ、それに、ウェルダンか。何がおかしい?」
ゲンジが睨みつけると、道化は笑いを止める。
「いやいや失敬。ゲンジ、ラフプレーを嫌うのは分かりますが、あなたらしくもない。ジグロの言う通り、想定内の出来事でしょう。イライラするのは、美容に悪いですよ。」
妙に肌艶の良い手を妖しく揺らしながら、通りのよい高らかな声で応じた。
「お前の頭の中は、いつもそれ(美容)だな。熱心なことだ。」
ゲンジが毒づくとウェルダンはうやうやしく首肯した。皮肉が通じていないらしい。
「とはいえ、オーバーテクノロジー『パンドラの小箱』まで持たせたのに、あっさり失敗されてもな。こんなヤツばっかりじゃ、流石にちと困るか。」
ジグロが指先で顎を擦りながらつぶやいたとき、ドグマハートの研究室がある一角から、アラームの音が漏れ聞こえた。
「これは、研究室で何やっているのか?」
訝しげにつぶやいたゲンジを先頭に、3人は音の出所に向けて足を進めた。
研究室の扉を開くと、アラームの音が一際大きくなる。中を見ると、ドグマハートがラックに格納された3体の機兵を眺めていた。機兵の体に繋がれたコードが伸びる機器に表示された数値が、徐々に大きくなる。アラームが鳴ったのは、高出力エネルギーの充填を行ったためだろう。
やがて、1体の機兵に繋いだ計器のランプが青く灯り、アラームが鳴りを潜めた。
「まずは1体・・・完成じゃ。目覚めよ、我が忠実なる最強の戦闘兵よ。」
暗く穴の空いたような機兵の瞳に、光が宿ると、金属製の脚がゆっくりと前に出されて床を踏み、無機質な音を規律的なリズムで立てた。
「あれが機兵。ふん、忠実な戦闘兵・・・か。」
歩みを始めたばかりの機兵を、ゲンジは品定めするように眺めた。
鋭利な刃物を思わせる流線型に尖った頭部。軽量化を優先した細身のボディフレームのかしこに施された刃物のような装飾が、獰猛な印象を際立たせた。背中と両足の脇に、ジェットバーニアが取り付けられ、肘から先が湾曲した形状のブレードになっている様は、翼竜の翼を彷彿とさせた。
「(あの見た目、恐らくは飛行能力持ち。空中戦特化型か・・・⁉︎)」
残り2つのラックにも目を配る。人間大のサイズの機兵と、ジグロの身の丈をも超える大型の機兵が静かに収められている。これらは動き出す気配はなく、今は未完成のようだ。
やがて、ラックから歩み出た機兵が、ドグマハートの目の前で、起立したまま足を止めた。
「ドグマハート様、このオレを造り出してくれたこと、感謝する。さぁ、なんなりとご命令を。」
攻撃的な姿からは想像もつかない恭しい仕草で、主人の前にかしずいた。
「特別強化機兵タイプ03『マッハ・ネオグライダー』よ。行け、お主に似合いの舞台を考えてある。ガンダラの強者を撃ち倒し、お主の性能を、このワシの叡智を知らしめるのじゃ。」
ドグマハートは興奮冷めやらぬ様子で命じた。
ネオグライダーと名を冠された機兵の眼光が、不気味に赤みを増した。
・・・
ガンダラ軍宿舎の食堂では、メタルとバルトスがテーブルに肩を並べていた。朝方にレッジを見送り、宿舎に戻ったメタルが朝食をとりに足を向けた先で、たまたま顔を合わせたのだった。
繁華街を拠点にしていたレッジの父親、エクトプラズマーレイドをメタルたちが退けたことはすでにバルトスに報告されていた。バルトスは改めて労いを口にしたりはしなかったが、事後処理にシェリーやメイカの手を煩わせたことについても、短く触れるのみで、追及はしなかった。
このような場合は大抵、バルトスが及第点を与えているときであった。
朝の食堂は忙しない。食堂内の席はそれなりの埋まり具合だが、談笑をする声は少なく、黙々と食事を流し込む者たちが立てる食器のぶつかる音が、まばらに飛び交っている。
「おっさん聞いたよ、レッジから。・・・親父のこと。」
不意に食事を口に運ぶ手を止め、メタルがつぶやいた。
「そうか。」
バルトスは、視線を横に向けたまま短く答えた。
少しの間、手にしていたカップを宙に止めていたが、静かにテーブルに着けると、言葉を選ぶように、ゆっくりと話し始めた。
「お前の父親・・・シルバは、強力な戦士だった。S級戦士の一角で、オレも鎬を削ったものだったが、剣技においては、彼の方が上だっただろう。」
バルトスの目線が、届かなかった何かを見つめるように遠くなった。
そんな横顔を見ながら、メタルは黙って話の続きを待った。
「・・・そして、戦士である以上に、優れた職人であり、技術者だった。彼の造り出した数々の武具は、兵士の心を支え、数多の魔獣を裂き、人々の命を守った。」
バルトスの口から初めて耳にする、鋼魂精鋭隊における父の姿。
メタルの胸に自ずと熱いものが込み上げる。
やがてバルトスは、壁の時計に目を移した。
「・・・次の修練までに、少し時間があるな。良い頃合いだ。見せてやろう。」
おもむろに立ち上がり、メタルに付いてくるよう促した。
バルトスがメタルを連れて来たのは、軍の整備工場だった。亀の甲羅を彷彿とさせる戦闘車両、小型の飛行船、遠距離射撃用の対空砲・・・敷地内にはおびただしい数の乗り物や武器が鎮座していた。ハンター時代によく仕事を回してくれた、マリオが乗り回していたのと同じタイプの車両も並んでいる。
「こっちだ。」
バルトスは一番奥の区画まで歩みを進めたところで、ドックに停められている小型の飛空艇を指し示した。
それは、一言で表せば金属で形どった怪鳥であった。船の先端は嘴のように鋭く尖り、左右に広がる翼には、多数の砲身がズラリと並んでいた。胴体部分前方には一際大きな砲身が口を開け、側面と後部に取り付けられた推進装置と思しき噴射口が目を引いた。大きさからして、搭乗人数は4、5人ほどといったところだろうか。
「見たことないタイプの飛空艇だ・・・。戦闘用、だよな。おっさん、これは一体?」
見上げながらメタルが疑問を口にした。
「こいつはな、魂気使い格納式戦闘飛空艇『ブラックファルコン』だ。」
「魂気使い・・・格納式?」
初めて耳にする言葉だった。
「5つのユニットはそれぞれ1人ずつ、異なる固有能力の魂気使いが搭乗できるように最適化されている。このブラックファルコンは、乗り手の力を最大限引き出し、結集することが出来る代物だ。未完成だがな。」
バルトスが簡潔に答える。
魂気使い専用の飛空艇ということか。
「こいつの要になる素材が、魂気を限りなくゼロに近い減衰率で伝え、S級クラスの出力にも耐え得る強度を備えた特殊合金・・・オルハニウムだ。」
「そ、そんなものが本当にあるの?」
メタルは想像する。もしも、目の前の兵器に5人もの強者を乗せてその本領を発揮したならば、どれほど凄まじい力になるのだろうか。
「オルハニウム合金を生成し、精密加工する技術をもたらしたのが・・・シルバだったよ。」
父の名を聞いたメタルに衝撃が走る。
「父さんが・・・そんなものを造っていたなんて・・・!」
確かに、父は魂気を通わせることで属性の力を発揮する、特殊素材を使った武具の作製に長けていた。しかし、独自の素材を開発し、武具だけに留まらず、このような兵器の開発にまで携わっていたとは。
『メタル、お前はオレより見どころあるかもな。ハハハハッ!』
初めて鍛えた剣を見せたときの、父の言葉が蘇る。
「ずるいよ父さん。オレなんて・・・まだまだだ。」
込み上げるものをこらえつつ、小さくこぼした。
ようやく同じ舞台に立ったと思った父の残影が、今までにまして遠く感じられた。
そんなメタルを見て、バルトスは静かに続けた。
「このブラックファルコンが完成したら、我々はレオスに仕掛けるつもりだ。これは、シルバが我々に残した・・・人類の未来を切り開く剣なんだ。」
最強の魔獣レオス。遠い存在に感じていたその名が、父の仇として、対峙するかもしれない敵として、輪郭を帯び始める。自ずと体が震える。これは恐怖か、武者震いか、それとも・・・。
「メタルよ、次にお前たちに当たってもらいたい任務は、空輸船の護衛だ。その船が積んでいるのは・・・オルハニウム合金の生成に不可欠な原料、オルハン鉱石だ。行ってくれるか?」
整備場にたたずむ鋼の鳥は、翼を広げるその日が来るのを、今はただ静かに待ち続けているのだった。
「ああ・・・もちろんだよ。」
メタルの中で、心の剣が静かに輝きを増した。
「ガンダラ軍に殺されたか、捕縛されて何かしらの手段で魔力を封じられたか・・・。いずれにしても無力化されたと見るべきか。」
狂気も実力も、申し分ないはずだった。
せっかく王都に巣食う人材をエクトプラズマーとして引き入れたのに、正体を隠すどころか我欲のままに自己の存在をアピールするような振る舞いをし、オーバーテクノロジーをろくに回収することもないまま、鎮圧されるとは。
「くそ!統率がとれなければ意味がない。」
舌打ち混じりに独りごちたところで、背後に現れた人物の影が床に落ちる。
「まぁ焦るな。元々オレたちはネジの飛んだ自由人。好き勝手にするヤツもいるのは分かってただろう?」
ジグロが筋肉の鎧を揺らしながら、ひょうひょうとした笑みを浮かべていた。
隣にいるもう1人、エクトプラズマーを引き連れている。おどけた顔を模した大きな唇が目を引く仮面を被り、赤を基調とし、袖口にや裾にゆとりのあるシルエットの衣装を纏った男。小さく笑いながら肩を震わせている。
「ジグロ、それに、ウェルダンか。何がおかしい?」
ゲンジが睨みつけると、道化は笑いを止める。
「いやいや失敬。ゲンジ、ラフプレーを嫌うのは分かりますが、あなたらしくもない。ジグロの言う通り、想定内の出来事でしょう。イライラするのは、美容に悪いですよ。」
妙に肌艶の良い手を妖しく揺らしながら、通りのよい高らかな声で応じた。
「お前の頭の中は、いつもそれ(美容)だな。熱心なことだ。」
ゲンジが毒づくとウェルダンはうやうやしく首肯した。皮肉が通じていないらしい。
「とはいえ、オーバーテクノロジー『パンドラの小箱』まで持たせたのに、あっさり失敗されてもな。こんなヤツばっかりじゃ、流石にちと困るか。」
ジグロが指先で顎を擦りながらつぶやいたとき、ドグマハートの研究室がある一角から、アラームの音が漏れ聞こえた。
「これは、研究室で何やっているのか?」
訝しげにつぶやいたゲンジを先頭に、3人は音の出所に向けて足を進めた。
研究室の扉を開くと、アラームの音が一際大きくなる。中を見ると、ドグマハートがラックに格納された3体の機兵を眺めていた。機兵の体に繋がれたコードが伸びる機器に表示された数値が、徐々に大きくなる。アラームが鳴ったのは、高出力エネルギーの充填を行ったためだろう。
やがて、1体の機兵に繋いだ計器のランプが青く灯り、アラームが鳴りを潜めた。
「まずは1体・・・完成じゃ。目覚めよ、我が忠実なる最強の戦闘兵よ。」
暗く穴の空いたような機兵の瞳に、光が宿ると、金属製の脚がゆっくりと前に出されて床を踏み、無機質な音を規律的なリズムで立てた。
「あれが機兵。ふん、忠実な戦闘兵・・・か。」
歩みを始めたばかりの機兵を、ゲンジは品定めするように眺めた。
鋭利な刃物を思わせる流線型に尖った頭部。軽量化を優先した細身のボディフレームのかしこに施された刃物のような装飾が、獰猛な印象を際立たせた。背中と両足の脇に、ジェットバーニアが取り付けられ、肘から先が湾曲した形状のブレードになっている様は、翼竜の翼を彷彿とさせた。
「(あの見た目、恐らくは飛行能力持ち。空中戦特化型か・・・⁉︎)」
残り2つのラックにも目を配る。人間大のサイズの機兵と、ジグロの身の丈をも超える大型の機兵が静かに収められている。これらは動き出す気配はなく、今は未完成のようだ。
やがて、ラックから歩み出た機兵が、ドグマハートの目の前で、起立したまま足を止めた。
「ドグマハート様、このオレを造り出してくれたこと、感謝する。さぁ、なんなりとご命令を。」
攻撃的な姿からは想像もつかない恭しい仕草で、主人の前にかしずいた。
「特別強化機兵タイプ03『マッハ・ネオグライダー』よ。行け、お主に似合いの舞台を考えてある。ガンダラの強者を撃ち倒し、お主の性能を、このワシの叡智を知らしめるのじゃ。」
ドグマハートは興奮冷めやらぬ様子で命じた。
ネオグライダーと名を冠された機兵の眼光が、不気味に赤みを増した。
・・・
ガンダラ軍宿舎の食堂では、メタルとバルトスがテーブルに肩を並べていた。朝方にレッジを見送り、宿舎に戻ったメタルが朝食をとりに足を向けた先で、たまたま顔を合わせたのだった。
繁華街を拠点にしていたレッジの父親、エクトプラズマーレイドをメタルたちが退けたことはすでにバルトスに報告されていた。バルトスは改めて労いを口にしたりはしなかったが、事後処理にシェリーやメイカの手を煩わせたことについても、短く触れるのみで、追及はしなかった。
このような場合は大抵、バルトスが及第点を与えているときであった。
朝の食堂は忙しない。食堂内の席はそれなりの埋まり具合だが、談笑をする声は少なく、黙々と食事を流し込む者たちが立てる食器のぶつかる音が、まばらに飛び交っている。
「おっさん聞いたよ、レッジから。・・・親父のこと。」
不意に食事を口に運ぶ手を止め、メタルがつぶやいた。
「そうか。」
バルトスは、視線を横に向けたまま短く答えた。
少しの間、手にしていたカップを宙に止めていたが、静かにテーブルに着けると、言葉を選ぶように、ゆっくりと話し始めた。
「お前の父親・・・シルバは、強力な戦士だった。S級戦士の一角で、オレも鎬を削ったものだったが、剣技においては、彼の方が上だっただろう。」
バルトスの目線が、届かなかった何かを見つめるように遠くなった。
そんな横顔を見ながら、メタルは黙って話の続きを待った。
「・・・そして、戦士である以上に、優れた職人であり、技術者だった。彼の造り出した数々の武具は、兵士の心を支え、数多の魔獣を裂き、人々の命を守った。」
バルトスの口から初めて耳にする、鋼魂精鋭隊における父の姿。
メタルの胸に自ずと熱いものが込み上げる。
やがてバルトスは、壁の時計に目を移した。
「・・・次の修練までに、少し時間があるな。良い頃合いだ。見せてやろう。」
おもむろに立ち上がり、メタルに付いてくるよう促した。
バルトスがメタルを連れて来たのは、軍の整備工場だった。亀の甲羅を彷彿とさせる戦闘車両、小型の飛行船、遠距離射撃用の対空砲・・・敷地内にはおびただしい数の乗り物や武器が鎮座していた。ハンター時代によく仕事を回してくれた、マリオが乗り回していたのと同じタイプの車両も並んでいる。
「こっちだ。」
バルトスは一番奥の区画まで歩みを進めたところで、ドックに停められている小型の飛空艇を指し示した。
それは、一言で表せば金属で形どった怪鳥であった。船の先端は嘴のように鋭く尖り、左右に広がる翼には、多数の砲身がズラリと並んでいた。胴体部分前方には一際大きな砲身が口を開け、側面と後部に取り付けられた推進装置と思しき噴射口が目を引いた。大きさからして、搭乗人数は4、5人ほどといったところだろうか。
「見たことないタイプの飛空艇だ・・・。戦闘用、だよな。おっさん、これは一体?」
見上げながらメタルが疑問を口にした。
「こいつはな、魂気使い格納式戦闘飛空艇『ブラックファルコン』だ。」
「魂気使い・・・格納式?」
初めて耳にする言葉だった。
「5つのユニットはそれぞれ1人ずつ、異なる固有能力の魂気使いが搭乗できるように最適化されている。このブラックファルコンは、乗り手の力を最大限引き出し、結集することが出来る代物だ。未完成だがな。」
バルトスが簡潔に答える。
魂気使い専用の飛空艇ということか。
「こいつの要になる素材が、魂気を限りなくゼロに近い減衰率で伝え、S級クラスの出力にも耐え得る強度を備えた特殊合金・・・オルハニウムだ。」
「そ、そんなものが本当にあるの?」
メタルは想像する。もしも、目の前の兵器に5人もの強者を乗せてその本領を発揮したならば、どれほど凄まじい力になるのだろうか。
「オルハニウム合金を生成し、精密加工する技術をもたらしたのが・・・シルバだったよ。」
父の名を聞いたメタルに衝撃が走る。
「父さんが・・・そんなものを造っていたなんて・・・!」
確かに、父は魂気を通わせることで属性の力を発揮する、特殊素材を使った武具の作製に長けていた。しかし、独自の素材を開発し、武具だけに留まらず、このような兵器の開発にまで携わっていたとは。
『メタル、お前はオレより見どころあるかもな。ハハハハッ!』
初めて鍛えた剣を見せたときの、父の言葉が蘇る。
「ずるいよ父さん。オレなんて・・・まだまだだ。」
込み上げるものをこらえつつ、小さくこぼした。
ようやく同じ舞台に立ったと思った父の残影が、今までにまして遠く感じられた。
そんなメタルを見て、バルトスは静かに続けた。
「このブラックファルコンが完成したら、我々はレオスに仕掛けるつもりだ。これは、シルバが我々に残した・・・人類の未来を切り開く剣なんだ。」
最強の魔獣レオス。遠い存在に感じていたその名が、父の仇として、対峙するかもしれない敵として、輪郭を帯び始める。自ずと体が震える。これは恐怖か、武者震いか、それとも・・・。
「メタルよ、次にお前たちに当たってもらいたい任務は、空輸船の護衛だ。その船が積んでいるのは・・・オルハニウム合金の生成に不可欠な原料、オルハン鉱石だ。行ってくれるか?」
整備場にたたずむ鋼の鳥は、翼を広げるその日が来るのを、今はただ静かに待ち続けているのだった。
「ああ・・・もちろんだよ。」
メタルの中で、心の剣が静かに輝きを増した。
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