立ちはだかるは魔獣の王から毒親まで⁉︎ 少年剣士と翼の少女と仲間たちの、絆と成長の物語 ー鋼魂戦記(こうごんせんき)ー

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空輸任務編

第38章 決死の一刺し

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「雑魚が何人増えたところで、同じことだ。このオレの力を、ドグマハート様の偉大さを知らしめてくれる!」

ネオグライダーは気勢を上げると、再び両腕の翼にエネルギーを纏わせ、ジェットバーニアを吹かせた。空気を突き破る破裂音が響き、瞬く間に天高く舞い上がる。
それを皮切りに、残り2体の量産型が散会し、それぞれ弧を描きながら飛び回り始めた。

「来るぞ!」

「メタル、ジェノ、気をつけて。あいつの速さは尋常じゃない。」

「ああ、悔しいけど、スカイバイクの機動力じゃ対抗できない。ティルはもう少しあいつの相手を頼む。オレたちも、残り2体を落としたらすぐに加勢する。」

今度は任せてくれた。いつものメタルだ。
ティルの瞳に輝きが戻る。

「・・・うん、任せて!」

勢いよく飛び出し、今度はネオグライダーを追尾、メタルとジェノはスカイバイクをふかし、残りの2体を追って飛び出した。

「何度繰り返しても同じだ。」

ネオグライダーはバーニアを噴射し、急旋回、ティルの真横に回り込むと、間髪入れずに『マッハブレード』を撃ち込んだ。

「危ない!」

ティルは紙一重で攻撃をかわした。
1対1なら、斬撃波を何とか避けられそうだ。さっきより少し目が慣れてきたのだろうか。
それとも、メタルやジェノが来てくれたことが背中を押してくれるのか。
無論、仲間の加勢はティルを大いに鼓舞し、気力を引き出していた。
しかし、それだけではなかった。

「そらそら!」

「力の差を思い知らせてやる。」

「まだまだ本気じゃないぜ!」

攻撃のたびに、ネオグライダーの吐く言葉には、力を誇示しようとする姿勢、そして、相手への侮りがありありと滲んでいた。勇ましい口ぶりの中に、チンピラ臭さのようなものさえも顔をのぞかせる。

「(ああ、本当に私のこと、舐めてるんだな・・・。)」

スピードもパワーも明らかに自分より上なのに、どこか攻撃が一本調子で、必殺の気迫を感じない。
ティルは必死に食らいつきながらも、頭のどこかで冷静に、ネオグライダーの思考を俯瞰し始めていた。
さらに・・・。

「ドグマハート様、すぐに戦果をお見せしますぜ!」

決定的な一言。
視界が狭窄し始めながらも、ティルはうっすらと口元に笑みを浮かべていた。

「(ふふ、自分の力を示して、主人に褒めてもらいたいんだ。)」

頭の中に幼い頃の記憶が蘇る。

・・・

『ねぇ、見て見てぇ!』

まだたどたどしさの残る言葉遣いで、夢中で捕えた獲物を包み込んだ手を差し出した。

ただ見てもらいたかった。ただ、褒めてもらいたかった。屈託のない笑みでティルが得意げに母ジルに見せようとしたのは、禍々しい黒と黄色に彩られた1匹のハチだった。
自分より小さく、力のない生き物だと思っていた・・・。


・・・

猛威を振るうネオグライダーのことが、不意に、親の気を引こうとする幼子のように感じられた。

それは、考えてやったことではなかった。直感的に、目の前の敵に刺さるのではないかと思っただけだった。
深く息を吸い、疼くような痛みを堪えながら、ティルは精一杯の得意顔で声を張り上げた。

「まだ生まれたばかりなんだ。かわいいね!」

無意識に口をついて出た言葉が、ネオグライダーのプライドを刺激した。

「かわいい・・・だと⁉︎ドグマハート様の粋を集めたこのオレを、侮辱するかー!」

量産型機兵の追随を許さない圧倒的な戦闘力に見合わない、荒削りな思考回路。
電子頭脳の中で『かわいい』という言葉の意味を確認したネオグライダーが、明らかに気色ばんだ。

(あれ⁉︎めちゃくちゃ怒ってる。効果テキメン・・・!)」

「直接ぶった斬るのだってアリなんだぜぇ⁉︎」

ブレードを振り上げながら、ネオグライダーが距離を詰めてきた。すれ違いざまにティルに刃を振り下ろしては、一撃離脱を繰り返し、なおも余裕を見せつけようとする。

しかし、量産機への指揮が乱れたのだろうか。メタル、ジェノとドッグファイトを繰り広げていた、ラビットの動きが、にわかに固くなり、統制を失う。

「ここだ!」

メタルが剣を振るい『ソニックスラッシャー』を放ち、ラビットを両断する。

「破壊する!」

ジェノが『インデックスバルカン』の集中砲火を浴びせ、もう1体を打ち砕く。

「(やっぱ頼りになるなぁ。)」

スカイバイクを旋回させながら視線を交わすメタルとジェノを見て、ティルの顔がほころぶ。

「・・・おのれ!こうなれば、会心の一撃で船ごと体に穴を空けてくれる!」

ネオグライダーは体中にエネルギーを纏わせ、力を溜めていく。翼を覆う波動が禍々しく揺れ、バーニアのうなりが徐々に大きくなる。

「これは!」

「最大の一撃が・・・来る!」

メタルとジェノが固唾を飲む。

「すごいエネルギー。私も、もう長くは戦えない。でも、今ならいけるよね?・・・レイチェル?」

ラビット2機が撃墜され、ネオグライダーの飛び道具が止んだ今、流れ弾から結界で船を守る必要もない。

ティルが視線を向けた飛空艇のブリッジでは、レイチェルが、極彩色に輝く杖の先をこちらに向けて、狙いを定めていた。
険しい顔で目を細め、揺れる標的に照準を定める。

「飛空艇の上じゃ全力はムリですけど、当たったら痛いですよ?・・・『カオスフレア』!」

黒い火花を纏わせ、破壊の波動が矢のように空を貫いた。

「当たって・・・お願い!」

レイチェルは祈るような気持ちで、矢の軌跡に視線を注いだ。

しかし。

「なめるな!」

間一髪のところで、ネオグライダーは体を翻し、『カオスフレア』をかわしてしまった。

「そんな・・・!」

「アレをかわすか・・・!」

メタルとジェノが顔を歪める。

「確かに無視できない威力の攻撃だ。まずは、あいつから先に・・・!」

ネオグライダーは動きを止め、矢の飛んできた方角に視線を移した。絶望を浮かべた顔つきで見上げるレイチェルに、警戒が向けられたそのとき・・・

「どこ見てるの⁉︎あんたの相手は私よ!」

ティルは即座に、魂気のムチでネオグライダーの体を絡め取った。この機を逃さない。渾身の力で締め付けられ、金属製の細身のボディが軋みを立てる。

「バカめ、この程度の力でオレを止められるか!引きちぎってくれる。」

「そうはさせない!」

ネオグライダーが強引に振り解こうとしたそのとき、ムチの先端を、背中のメインバーニアの中に滑り込ませた。


幼い日、得意げに母に見せようとした小さな羽虫が、その手に置いて行った痛みと記憶が迸る。

次いで瞼に浮かぶのは、突然の痛みに悲鳴を上げた後、ふと視線を落とした足元に力無く転がっていた亡骸・・・。

「(自分がこっち側の立場になっちゃったな・・・。」

不吉な光景が心に影を落とすが、悟ったように口元だけで笑う。
それでも、やるしかない。残された全ての力を、ムチを通じてたたき込む!
『決死の覚悟』を乗せて・・・!

「『雀蜂の一刺し(ホーネットスパーク)』!」

命の灯火が爆ぜ、吸い込まれるような青天に火花を散らした。


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