立ちはだかるは魔獣の王から毒親まで⁉︎ 少年剣士と翼の少女と仲間たちの、絆と成長の物語 ー鋼魂戦記(こうごんせんき)ー

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入隊試験編

第14章 二次試験その5 その時が訪れる

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「『ジャッジメントレイン』!」

翼からティルの放った光の羽根が、弾丸の集中豪雨となってギーメルを襲った。無数の光弾がまるで標的を襲う蜂の群れのように、地上から不敵な笑みを浮かべて空を見上げるギーメルに向かって、一直線に降り注いだ。

だが、またしてもギーメルの体が一瞬青白く発光し、体に稲妻が走ると、目にも止まらない速さで走り出した。

ティルの放った光の羽根が着弾し、けたたましい炸裂音とともにステージの石材を文字通り蜂の巣に変えたときには、ギーメルの姿はすでにステージ上の反対側にあり、涼しい顔で上空のティルに視線を向けていた。

「このっ!逃がさないから!」

ティルは狙いを再びギーメルに向け直し、なおも光の羽根の豪雨を撃ち込み続けた。まるで戦闘ヘリの機銃掃射のように、ギーメルを追撃し続けたが、思うように標的をとらえることができない。ギーメルは、あらかじめ狙いを見透かしているかのように変幻自在の足運びで、稲妻のようにステージ上を駆け回り、ティルを嘲笑った。

「遅え遅え!そんなんじゃ一生当たらねぇな。
もっとやる気出して来いや!」

「ダメだ、集中砲火じゃとらえられない。だったら、これでどう⁉︎」

ティルは光の尾を引きながらさらに上空へと飛翔する。
ステージ全体を視界におさめることができる高さから、地上を見下ろすと、深く息を吸い、再び背中の翼に魂気を充填する。翼がにわかに輝きの強さを増すと、今度はステージ全域にまで攻撃範囲を広げて光の羽根を斉射した。裁きの雨がステージ全体に降り注ぎ、視界に入るものを焼き払った。

「これならどう?いくら素早く動けても、逃げ場はなかったハズ・・・。」

ティルは呼吸を乱しながら、土煙で覆われたステージ上を見下ろしていた。そのとき、不意に、体が浮力を失い、地面に落下しそうになる感覚を覚える。

「(いけない!)」

翼に魂気を集中し直し、体勢を整えた。
ただでさえ翼の形成には大量のオーラを消費する。その翼から、光の羽根を雨の様に放っての大規模攻撃を立て続けに行った反動が現れ始めていた。この調子のまま長く戦い続けることはできない。

「(これでもダメだったら、空中からの攻撃じゃ倒しきれない・・・)」

ティルは祈る様な気持ちで、眼下の土煙が晴れて行くのを見守った。

だが、土煙の中から姿を現したのは、体の至るところに傷を負いながらも、なお我健在なりとばかりに全身から覇気を立ち昇らせ、眼光鋭く上空を睨みつけるギーメルの姿であった。

「(ダメだ、攻撃範囲を広げた分、羽根の密度が保てなかったんだ。いくらか命中はしたみたいだけど、決定打には程遠い。どうしよう・・・⁉︎」

気力を削っての大規模攻撃でも事態を打開できず、焦燥感を覚え始めたティルに対し、ギーメルは突き立てた親指をこれ見よがしに突き出すと、地面に向けて反転させ、大きく口角を上げて、これでもかというほど歯を剥き出しにして、挑発的な笑い顔を向けていた。

「コイツ・・・!バカにして!いいよ、やってやろうじゃない、接近戦で仕留めてやる!」

このまま遠距離戦で根気を消耗しても、ジリ貧だ。それなら、イチかバチか距離を詰めて、『雀蜂の一撃(ホーネットスパーク)』を撃ち込む。

ティルは意を決して急降下すると、光のムチを振るいながらギーメルの周囲を縦横無尽に飛び回った。

一足で強打を撃ち込まれないギリギリの距離を保ちつつ、隙あらば急所にムチを撃ち込む機会をうかがいながら、集中を切らさずにギーメルを牽制し続けた。

「空中でのスピードなら、私だって負けてない、必ず隙を見つけてやるから!」

「いいねぇ!早く飛び込んで来いよ、ムラムラしてきたぜぇ⁉︎」

ギーメルもまた昂りを見せ、さらに速度を上げて稲妻のごとく駆け回った。

両者があらん限りのスピードで空中、地上、それぞれの土俵を駆け巡り、時折接触する度に散る火花が、観戦する者たちの真剣な眼差しを照らし出していた。

ティルとギーメルのスピード勝負は互角と言えたが、やがてその時が訪れる。

ティルは接近戦では、光のムチとクナイによる牽制と一撃離脱戦法に徹していたが、密かに翼に、数発分だけ羽根の光弾を放つためのオーラを溜めていた。

「(この間合いで動き回りながらの、翼からの攻撃はないと思っているハズ。だからコレは、決まる!)」

ムチを振るうと見せかけて、翼から数発の光弾をギーメルの顔面に目がけて撃ち出した。

「うおお⁉︎危ねぇ!」

それでもギーメルは咄嗟に反応し、大きく体をのけぞらせ体勢を崩しながらも、光弾を回避した。

「(なんて反応速度なの。でも、まだ想定内。本命はこっち!)」

体をのけぞらせた拍子にガラ空きになったギーメルの首元に狙いをつけ、ムチの先端を滑り込ませる。逆転の『雀蜂の一撃(ホーネットスパーク)』を撃ち込むために。

だがその時、ギーメルの体が一段と強い光を放つと、体勢を崩していたはずのギーメルが、ティルの視界から消え去っていた。

次の瞬間、ティルの視界が反転する。
体から力が抜け、まるで頭の中に壊れたスピーカーを詰め込まれたように、キンキンと耳鳴りが響く。自分が顔を壁に押し当てている状態であることに気がつく。私は一体何をやって・・・いや、これは壁ではない、ステージの床だ。いつの間にか攻撃を受け、ダウンを喫したんだ!

「今の見たかい?バルトス。」

「ああシェリー、奴は体勢を崩された状態から、電流刺激によって限界を超えた反応速度で、立て続けに体を動かし、回避、接近、攻撃の3動作を一瞬のうちにやってのけた。」

「あのアジリティでコンボを繰り出せるとはね。これは、勝負ありかな?」

ギーメルはステージにはいつくばるティルを、仁王立ちで見下ろしていた。

「どうだ、オレ様の『雷光演舞(サンダーダンサー)』の味は?このオレを仕留めに来てたハズなのに、何が起きたかわからないだろう?」

ティルはどうにか起き上がろうと、体を起こすが、掌と膝を地面に着けた体勢から、立ち上がることができない。膝がガクガクと笑って震えが止まらない。景色が歪んでいる。目に映るものすべてが、まるでグチャグチャに混ぜた絵の具をぶちまけたかのようだ。

「ムダだぜ。アゴのいい所に、パンチを入れさせてもらったからな。脳がメチャクチャに揺らされて、体はいうことを聞かねぇし、魂気を満足に練ることもできないハズだ。」

「う・・・うるさい。まだ・・終わってない・・!」

絞り出すような声で威嚇すると、かろうじて掌を地面から離して、震える2本の足で体を支え、ギーメルを睨みつけた。

「いいねぇ、まだ目が死んでねぇ。だが、お前はもう終わりだよ!」

おもむろにティルの首元を片手で掴み、体ごと吊り上げた。

「『大雷台祭(サンダーカーニバル)』!」

ギーメルの体に稲光が走り、掴んだ首元から伝った電撃がティルに襲いかかった。
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