立ちはだかるは魔獣の王から毒親まで⁉︎ 少年剣士と翼の少女と仲間たちの、絆と成長の物語 ー鋼魂戦記(こうごんせんき)ー

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入隊試験編

第15章 二次試験その6 もう止まらない

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「『大雷台祭(サンダーカーニバル)』!」

ギーメルは魂気を使って発生させた電流を、体外に一気に放出した。

電撃を浴びたティルは、苦痛の悲鳴を上げて足をバタバタとさせる。

「苦しいだろう?降参しちまえよ?楽になりたいだろう?」

「・・い、いやだ。誰がアンタみたいな奴に・・・降参するもんか!」

ティルは魂気のクナイを手に持ち、自らの首を掴むギーメルの腕に突き立てようとした。
しかし、ギーメルのパンチを受けたダメージの影響でクナイには普段のような切れ味はなく、ギーメルを傷つけることは叶わなかった。

再びギーメルの体が青白く明滅し、雷光が走る。

その後もギーメルは、明らかにすでに生殺与奪を掌握しているにもかかわらず、ティルに対して再三の降参勧告を突きつけ続けた。

電撃の威力は、相手が気絶しない程度にあえて抑えていた。その上で、ティルが決して屈しないことを悟っていながら、何度も降参するように告げ、舐めるように反応を楽しんでいるようだった。

「やめろ!もうティルは限界だ、離しやがれ!」

いたたまれなくなったメタルが、ステージの脇から声を荒げる。

「外野は黙ってろ。オレはルールに則って、こいつの相手をしてやってるだけだぜ⁉︎」

「てめぇ・・・!」

メタルは今にもステージに上がり込みそうな勢いで怒りを露わにした。

その横でもう1人、ギーメルに対してただならぬ怒気を向ける人物が。どこか遠くを見るような不思議な空気を宿した目つきは相変わらずながらも、眉間にしわを寄せたレイチェルがまっすぐにギーメルを睨みつけている。今にも全身からあふれるほどのオーラを立ち上らせそうなほどの圧力を発していた。

「この腐れモヒカン、乙女の心を弄んだ罪は万死に値します!次のあなたの相手は、私だということをお忘れなくですよ⁉︎」

彼女なりの辛辣な語彙で、あらん限りの怒りを表明した。

「ヒヒ!そいつは楽しみだ。」

ギーメルは意に介さず下卑た笑いを浮かべると、今一度ティルに電撃を見舞った。

「あの野郎!もうこれ以上は見てられないよ。」

審査員席のシェリーも、流石に見かねて主審のガルドの方を仰ぐ。

「ギーメル、警告だ。いつでも試合を終わらせることができるはずのこの状況で、これ以上の降参勧告は、遅延行為と見なす。」

「ケッ、何でオレ様の方が警告されんだよ。しつこいのはコイツの方だろ?」

なおも心折れず降参しないティルに、忌々しげな視線を向けた。だが、何か良いことを思いついたとばかりに、おもむろに口角を上げてささやきかけた。

「なぁ小娘、お前にビッグチャンスをやろう。
『オレ様の負けだ。降参してやる。お前の勝ちを宣言しろ。』」

何を言われたのかすぐに飲み込めなかったティルは、虚ろな瞳のまま押し黙っている。

「戦士の風上にも置けんヤツめ。」

成り行きを見守っていたジェノも、驚き呆れて舌打ちをした。

再びギーメルが口を開く。

「もう一度言うぞ。『お前に勝ちをくれてやる。』
2度とないチャンスだぜ。さぁ、受け入れて楽になっちまえよ!」

ティルの顔がみるみる紅潮し、固く結んだ唇を震わせている。目から雫がこぼれそうになるのを、必死で堪えているのが、側からもわかった。

「・・・誰が、そんなことするもんか!バカにして・・・。死んだ方が・・・マシよ!」

ティルの心を支えているのは、もはや意地だけだった。

「そうかい。じゃあ、望みどおりに逝けや。」

一際大きな稲妻がティルの体を貫いた。
眩いばかりの雷光が上がり、悲痛な叫びがこだまする。

やがて静寂が戻ったときには、ティルの体からはダラリと力が抜け、ぴくりとも動かなくなっていた。
とうとう果ててしまったのだ。

「まぁまぁ楽しませてもらったぜ。雑魚にしちゃあな。」

ギーメルは捨て台詞を吐くと、まるでゴミを道端に放り出すかのように、ティルをステージの下に無造作に投げ捨てた。

「ティル!ティルー!」

メタルがすぐに駆け寄ってきて、ティルの体を抱き起こした。

ティルはうっすらと目を開けていた。かろうじて意識があるようだ。メタルの顔を見ると、安心したかのようににわかに顔がほころぶ。

「こんなボロボロになるまで・・・!絶対、絶対敵はとるから・・・!」

「・・・何言ってるの。メタルの相手は・・・あいつじゃないよ。・・・ほら、自分の戦いに・・・集中しなきゃ・・・。」

か細い声を絞り出し、メタルを気遣った。
そんなティルの気丈さに、メタルは胸を打たれる。

「・・・そんで、最後の試合は・・、私とメタルで・・恨みっこなし・・・だからね。」

そこまで話したところで、不意にティルの声に嗚咽が混ざり始めた。

「ごめんね・・・。約束だったのに。一緒に・・・頑張りたかったのに・・・。やっぱ、悔しいよぉ・・・。意地、張らなきゃ良かったのかな・・・?」

涙を見せないよう、手の甲で目を隠しながら天を仰ぎ、声を詰まらせる。

誰よりもティル本人がわかっていた。もう、この先の二次試験を戦い抜く力が、自分には残っていないことを。そして、その先に待ち受けているであろう、残酷な結果も。

そこへ、審査員席を立ったスカーフェイスがやってきた。

「残念だが、ドクターストップだ。医務室で治療を受けてもらう。今、医療スタッフがやってくる。」

バルトスもやって来て、メタルに声をかけた。

「スカーフェイスは右に出る者のない治癒能力者だ。ここは任せるんだ。」

やがて医療スタッフに担架で運ばれて行くティルと、それに帯同して試験会場を離れるスカーフェイスを見届けると、メタルは静かにステージに向き直った。

「なぁバルトスのおっさん。この場合、最終試合はティルが棄権で、オレの不戦勝になるんだよな?頼みがある。カードを変えてくれ。不戦勝はいらない。アイツと、ギーメルと戦らせてくれ!」

バルトスは、メタルの瞳に並々ならぬ決意を感じとった。
そこへ、レイチェルも話に加わった。

「気持ちはわかりますが、次にアイツと戦うのは私です。ティルとはまだちゃんと話したこともないですけど、私もアイツのことは許せません!」

静かに闘志をみなぎらせていた。

そんな様子を眺めていた、未だにステージを降りていなかったギーメルが荒々しく声を上げた。

「オレはどっちでも構わねえぜ。引き際を知らねえバカの相手だけじゃ物足りなかったところだ、オレはこのままでいいからさっさと来いや!」

メタルの脳裏に、ティルの声が蘇る。

(意地、張らなきゃ良かったのかな・・・?)

メタルの中で、何かのタガが外れた。

「(絶対に、許さねぇ・・・!)
ワルい、やっぱりここは譲れない!」

もう止まれなかった。バルトスとレイチェルの視線を振り払い、気がついたときには全身に魂気をほとばしらせ、助走をつけて一足飛びにステージに駆け上がっていた。

「よく言った少年!やっちまえ!このカード変更、ウチが、このシェリー・ハイボールが認める!ぶちのめせー!」

シェリーが高々と拳を挙げて、対戦カードの変更を大声で宣言していた。

「あいつもまた勝手なことを・・・!ええい、好きにしろ!」

バルトスも、もはや止めるつもりはなかった。

メイカも不敵な笑みを浮かべながら、静かに頷いている。

主審のガルドが、不測の事態を楽しむように豪快な笑いを浮かべながら高らかに声を上げた。

「『協議』の結果、第3戦はカード変更だ!
メタル対ギーメル、始め!」

ステージの石材を踏み抜かんばかりの勢いで、メタルは目の前で見下ろすギーメルへと、一直線に向かって行った。




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