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第1話:非常階段の最上階、期待と絶望の境界
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第1話:非常階段の最上階、期待と絶望の境界
冬の日は短く、終業のチャイムが鳴る頃には、オフィスビルの窓の外は深い群青色に沈んでいた。
「……あの。今日、帰り少しだけいいかな」
給湯室の陰で僕を呼び止めたのは、別部署の先輩だった。
仕事中はいつも膝丈のタイトスカートを履きこなし、淡々と事務をこなす清楚な女性。おとなしく控えめな彼女が、勇気を振り絞って僕を誘ったのは、これで三度目だった。
彼女が僕に向ける視線の熱に、僕はとっくに気づいていた。けれど、あえて気づかない振りをすることで、彼女の「好き」という感情をじりじりと煮詰めてきた。
「いいですよ。どこか店でも行きますか?」
「ううん、店だと……誰かに見られるかもしれないし。その、ここの、非常階段の最上階……人、来ないから」
彼女の頬が、わずかに赤らむ。僕は内側で冷酷に口角を上げた。
数分の時間差を置いて、僕はビルの裏手にある非常扉を押し開けた。重い鉄扉が閉まる音が、コンクリートの吹き抜けに反響する。
最上階。寒さに肩をすくめ、期待と不安を抱えた彼女が待っていた。僕の姿を認めると、彼女の顔にパッと灯がともる。
「……来てくれたんだ。ありがとう」
「先輩に呼ばれたら、断れるわけないじゃないですか。……寒くないですか? こんな場所で」
「大丈夫。……ねぇ、君は……私のこと、どう思ってるの?」
直球の問い。彼女の瞳は潤み、期待で震えている。
「そうですね、仕事ができて、いつも優しくて……本当に素敵な先輩だと思ってますよ」
僕がそう答えると、彼女は少しだけ寂しそうな、けれど意を決したような表情を見せた。
「……私は、一人の男の人として、好きなの」
僕は困ったような表情を作り、視線を泳がせた。
「……さ、そろそろ戻りましょうか。冷えてきましたし」
僕が背を向けようとしたその時だった。
「待って……っ!」
彼女が僕の手を強く掴み、引き止めた。その勢いで、僕たちは狭い踊り場で抱き合う形になる。
不意に重なった互いの体温。厚いコート越しでも伝わる僕の「反応」に、彼女の身体が跳ねた。
僕は何も言わず、申し訳なさそうに視線を伏せた。
だが、彼女は驚きに目を見開いた直後、それを「自分への情熱が抑えきれずに昂ぶってしまったのだ」という、都合のいい確信へと書き換えた。
(……ふふ、なんだ。あんなに澄ました顔して、こんなに熱くなって……)
年下の僕を「子供扱い」するような、余裕のある艶然とした笑みを浮かべる。
「……いいよ。先輩が、可愛がってあげる」
彼女は自ら跪き、僕の理性を解き放とうとした。冷えた階段室の空気に、隠されていた熱が晒される。
彼女はそれを慈しむように包み込み、ゆっくりと、陶酔した表情で奉仕を始めた。
おとなしい彼女からは想像もつかないような、熱心な口づけ。彼女は僕を満足させたいという献身的な悦びに浸りながら、甘い吐息を漏らす。
「……上手ですよ、先輩」
僕は優しく髪を撫でながら、彼女を褒めた。その言葉に、彼女の動きはさらに熱を帯びていく。
深い愛撫に抗えず、僕は彼女の熱い喉の奥へと、最初の情動をすべて解き放った。
その時だ。階下から、複数の足音と話し声が聞こえてきた。
「……見ろよ、屋上へのドア。一応上まで見てくるか」
足音。そして、一度果てたことで逆に研ぎ澄まされた僕の支配欲。
目の前で潤んだ瞳を見上げるこの女を、自分一人のものとして徹底的に染め上げたいという優越感が、再び僕を猛烈に突き動かした。
彼女の身体が恐怖で硬直する。口を離そうとする彼女の後頭部を、僕は逃がさなかった。
「……静かに。声を出したら、全部台無しになっちゃいますから」
僕は囁くような優しい声で、彼女の耳元に唇を寄せた。
それとは裏腹に、僕は彼女の髪を掴み、さっきまでの慈しみを踏みにじるように、激しく腰を突き出した。
「んんーーーっ!!」
喉の奥まで熱い塊を突き刺す。驚愕で目を見開く彼女を無視し、僕は情け容赦のない支配を続けた。
生理的な涙が彼女の目から溢れ、頬を伝う。さっきまでの余裕は微塵も残っていない。
足音は、一つ下の階で止まり、やがて遠ざかっていった。
そのすぐ真上で、清楚な先輩が後輩の欲情を無理やり飲まされ、涙を流しながら屈服している。
その絶望的なまでの背徳感が、僕を二度目の、そして本当の意味での支配的な絶頂へと押し流した。
「先輩……今度は、もっと深く飲んでください」
彼女の奥底へ、すべてを解き放つ。彼女は苦しげに、けれど抗うこともできず、僕のすべてを喉を鳴らして受け入れた。
僕は彼女から離れ、乱れた彼女の服を整えてあげた。
彼女は床に伏したまま、肩で息をしている。
「……ねぇ。……今の、私のこと……好きだから、してくれたんだよね?」
まだ、彼女は縋っている。あんなに蹂躙されたのに、その痛みを愛だと信じたがっている。
僕は何も答えなかった。
ただ、彼女の瞳をじっと見つめ、そして、残酷なまでに冷徹な笑みを浮かべた。
愛しているとも、違うとも言わない。ただ、次を期待させるような、底知れない闇。
彼女の顔に、言葉以上の衝撃が走り、やがて深い「依存」の色が定着した。
僕は彼女を残して階段を降り始めた。
後ろから、彼女が慌てて立ち上がり、僕を追ってくる気配がする。
冬の冷気が支配する非常階段の最上階。僕たちは、誰にも知られない共犯者となった。
第2話:地下書庫の静寂、刻印と置き去りの熱へ続く
冬の日は短く、終業のチャイムが鳴る頃には、オフィスビルの窓の外は深い群青色に沈んでいた。
「……あの。今日、帰り少しだけいいかな」
給湯室の陰で僕を呼び止めたのは、別部署の先輩だった。
仕事中はいつも膝丈のタイトスカートを履きこなし、淡々と事務をこなす清楚な女性。おとなしく控えめな彼女が、勇気を振り絞って僕を誘ったのは、これで三度目だった。
彼女が僕に向ける視線の熱に、僕はとっくに気づいていた。けれど、あえて気づかない振りをすることで、彼女の「好き」という感情をじりじりと煮詰めてきた。
「いいですよ。どこか店でも行きますか?」
「ううん、店だと……誰かに見られるかもしれないし。その、ここの、非常階段の最上階……人、来ないから」
彼女の頬が、わずかに赤らむ。僕は内側で冷酷に口角を上げた。
数分の時間差を置いて、僕はビルの裏手にある非常扉を押し開けた。重い鉄扉が閉まる音が、コンクリートの吹き抜けに反響する。
最上階。寒さに肩をすくめ、期待と不安を抱えた彼女が待っていた。僕の姿を認めると、彼女の顔にパッと灯がともる。
「……来てくれたんだ。ありがとう」
「先輩に呼ばれたら、断れるわけないじゃないですか。……寒くないですか? こんな場所で」
「大丈夫。……ねぇ、君は……私のこと、どう思ってるの?」
直球の問い。彼女の瞳は潤み、期待で震えている。
「そうですね、仕事ができて、いつも優しくて……本当に素敵な先輩だと思ってますよ」
僕がそう答えると、彼女は少しだけ寂しそうな、けれど意を決したような表情を見せた。
「……私は、一人の男の人として、好きなの」
僕は困ったような表情を作り、視線を泳がせた。
「……さ、そろそろ戻りましょうか。冷えてきましたし」
僕が背を向けようとしたその時だった。
「待って……っ!」
彼女が僕の手を強く掴み、引き止めた。その勢いで、僕たちは狭い踊り場で抱き合う形になる。
不意に重なった互いの体温。厚いコート越しでも伝わる僕の「反応」に、彼女の身体が跳ねた。
僕は何も言わず、申し訳なさそうに視線を伏せた。
だが、彼女は驚きに目を見開いた直後、それを「自分への情熱が抑えきれずに昂ぶってしまったのだ」という、都合のいい確信へと書き換えた。
(……ふふ、なんだ。あんなに澄ました顔して、こんなに熱くなって……)
年下の僕を「子供扱い」するような、余裕のある艶然とした笑みを浮かべる。
「……いいよ。先輩が、可愛がってあげる」
彼女は自ら跪き、僕の理性を解き放とうとした。冷えた階段室の空気に、隠されていた熱が晒される。
彼女はそれを慈しむように包み込み、ゆっくりと、陶酔した表情で奉仕を始めた。
おとなしい彼女からは想像もつかないような、熱心な口づけ。彼女は僕を満足させたいという献身的な悦びに浸りながら、甘い吐息を漏らす。
「……上手ですよ、先輩」
僕は優しく髪を撫でながら、彼女を褒めた。その言葉に、彼女の動きはさらに熱を帯びていく。
深い愛撫に抗えず、僕は彼女の熱い喉の奥へと、最初の情動をすべて解き放った。
その時だ。階下から、複数の足音と話し声が聞こえてきた。
「……見ろよ、屋上へのドア。一応上まで見てくるか」
足音。そして、一度果てたことで逆に研ぎ澄まされた僕の支配欲。
目の前で潤んだ瞳を見上げるこの女を、自分一人のものとして徹底的に染め上げたいという優越感が、再び僕を猛烈に突き動かした。
彼女の身体が恐怖で硬直する。口を離そうとする彼女の後頭部を、僕は逃がさなかった。
「……静かに。声を出したら、全部台無しになっちゃいますから」
僕は囁くような優しい声で、彼女の耳元に唇を寄せた。
それとは裏腹に、僕は彼女の髪を掴み、さっきまでの慈しみを踏みにじるように、激しく腰を突き出した。
「んんーーーっ!!」
喉の奥まで熱い塊を突き刺す。驚愕で目を見開く彼女を無視し、僕は情け容赦のない支配を続けた。
生理的な涙が彼女の目から溢れ、頬を伝う。さっきまでの余裕は微塵も残っていない。
足音は、一つ下の階で止まり、やがて遠ざかっていった。
そのすぐ真上で、清楚な先輩が後輩の欲情を無理やり飲まされ、涙を流しながら屈服している。
その絶望的なまでの背徳感が、僕を二度目の、そして本当の意味での支配的な絶頂へと押し流した。
「先輩……今度は、もっと深く飲んでください」
彼女の奥底へ、すべてを解き放つ。彼女は苦しげに、けれど抗うこともできず、僕のすべてを喉を鳴らして受け入れた。
僕は彼女から離れ、乱れた彼女の服を整えてあげた。
彼女は床に伏したまま、肩で息をしている。
「……ねぇ。……今の、私のこと……好きだから、してくれたんだよね?」
まだ、彼女は縋っている。あんなに蹂躙されたのに、その痛みを愛だと信じたがっている。
僕は何も答えなかった。
ただ、彼女の瞳をじっと見つめ、そして、残酷なまでに冷徹な笑みを浮かべた。
愛しているとも、違うとも言わない。ただ、次を期待させるような、底知れない闇。
彼女の顔に、言葉以上の衝撃が走り、やがて深い「依存」の色が定着した。
僕は彼女を残して階段を降り始めた。
後ろから、彼女が慌てて立ち上がり、僕を追ってくる気配がする。
冬の冷気が支配する非常階段の最上階。僕たちは、誰にも知られない共犯者となった。
第2話:地下書庫の静寂、刻印と置き去りの熱へ続く
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