『強制交配支配アスリートママ ―ママ友に「種馬」として管理された僕が、最後に笑った理由― 【18年後・復讐編始動】』

まさき

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第9話:決裂の朝、聖域への逃避

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第9話:決裂の朝、聖域への逃避

 あの日、競技場から逃げ出した彼女を、僕は都内のシティホテルへと連れて行った。
 もちろん、僕は泊まらない。ただ、彼女が落ち着きを取り戻すまで、静かな部屋で側についていただけだ。

「……こんなに静かな夜、初めて。お母さんの怒鳴り声も、明日への不安もないなんて」

 ホテルのベッドの端で、彼女は憑き物が落ちたような顔で呟いた。僕は彼女の冷えた手に温かいお茶を握らせ、優しく微笑む。

「今夜は何も考えなくていい。君を傷つけるものは、ここには何ひとつないからね」

 翌朝。僕は彼女を助手席に乗せ、自宅近くまで送り届けた。
 車を降り、彼女が家の門をくぐろうとしたその瞬間。玄関のドアが勢いよく開き、鬼のような形相のあの女が飛び出してきた。

「どこに行っていたの!? 一晩中連絡もつかずに、自分の立場を分かっているの!?」

 静寂を切り裂く怒声。娘の肩がビクリと跳ねる。すかさず僕は車を降り、二人の間に割って入った。

「……少し落ち着いてください。彼女は混乱していた。昨夜はあまりにひどく動揺していたので、静かに休める場所を用意しただけです」

 僕が静かに諭すと、あの女の矛先が鋭くこちらを向いた。

「昨夜? ……あなた、まさか未成年を連れ回して外泊させたっていうの!? これは誘拐と同じよ! 警察を呼んでもいいのよ!」

 娘を心配しているのではない。自分の「道具」が思い通りに動かず、他人の手に渡ったことへの苛立ちが、彼女を狂わせている。

「お母さん、違うの! おじさんは、私が死にたいって言ったから、泊まるところを用意してくれただけで……!」

 娘が泣きながら必死に説明するが、あの女は聞く耳を持たなかった。

「黙りなさい! こんな出所も分からない男の言うことを信じるとでも思っているの!? どうせ、あなたが唆したんでしょう!?」

 あの女のその冷酷な言葉が、娘の心に最後の一線を超えさせた。信じてもらえない絶望。自分の救世主までをも汚された屈辱。娘の瞳から、光が消えていくのが分かった。

 その日から、あの賑やかだった家からは、会話が完全に消えた。
 娘が陸上の練習に行かなくなっても、あの女は何も言わなくなった。いや、自分の「最高傑作」に傷がついたことを認められず、彼女を「壊れた道具」として無視し始めたのだ。

 一方で、彼女から僕への連絡は日に日に増えていった。
『おじさん、会いたい』
『おじさんの声を聞くと、お父さんに守られているみたいで安心するの』

 父親という温もりを一度も知らずに育った少女。
 あの女が十八年前に「用はない」と切り捨てた存在が、今、彼女の娘にとって呼吸をするための酸素となっている。

 自宅のリビングで、僕は妻の淹れたコーヒーを飲みながら、スマートフォンに届く彼女からの依存に満ちたメッセージを眺める。
 
 あぁ、滑稽だ。
 お前が無視し、切り捨てようとしているその娘は、今、お前が最も軽蔑した男の影の中で、僕に支配される悦びに浸っているよ。

第10話へ続く
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