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第十七話 波紋
第十七話 波紋
波紋というものは、石を投げた瞬間より、翌朝の方がよく見える。
夜会の熱気が冷めると、人は冷静になる。
冷静になると、昨夜何が起きたかを改めて考える。
考えると、気づく。
第三王女が、カーライル伯爵と話していた。
第三王女が、ヴァレン侯爵と話していた。
第三王女の髪が、いつもと違った。
たったそれだけのことが、貴族社会では十分な情報になる。
―――
後期最初の登校日。
教室に入った瞬間、空気が違うのがわかった。
視線の数が、違う。
以前はわたしに向いた視線がすぐに流れていた。
今日は——少し、止まる。
止まって、また流れる。
でもその一瞬の間が、以前とは違う。
——波紋が、届いた。
「殿下、おはようございます」
ミレイユが隣に座りながら言った。
「おはようございます」
「夜会、お疲れ様でした」
「ミレイユさんも来ていましたね」
「はい。殿下がカーライル伯爵とお話しされているのを見ました」
「ええ」
「……会場がざわめいていました。少しだけ」
「気のせいでしょう」
「嘘がお上手ですね」
わたしは笑った。
ミレイユも笑った。
「ヴァレン侯爵とも話されていましたね」
「ご挨拶を」
「それだけですか」
「フォンタン家についての噂話を聞かされそうになりましたが、お断りしました」
ミレイユの表情が、少し固まった。
「侯爵が直接、殿下に」
「クラリスさんと全く同じ手でした。親子で同じやり方をされるとは、少し驚きました」
「……そうですか」
ミレイユはしばらく黙っていた。
窓の外に目をやって、また戻してきた。
「殿下、ひとつ聞いてもいいですか」
「どうぞ」
「フォンタン家を利用した誰か、というのは——ヴァレン侯爵のことですか」
真っ直ぐな問いだ。
わたしは少し間を置いた。
「まだ確信はありません。でも、可能性はあります」
「可能性がある、というのは」
「昨夜、ヴァーン家の不正についてヴァレン侯爵に聞いたとき、目が揺れました」
「……目が」
「知っている人間の目でした。あるいは、関与している人間の目かもしれない」
ミレイユは静かに息をついた。
「もしヴァレン侯爵が関与しているとしたら——フォンタン家は、巻き込まれているということですか」
「おそらくは」
「父は、何も知らないのかもしれない」
「その可能性が高いと思います」
ミレイユは長い間、黙っていた。
「……殿下、お願いがあります」
「何でしょう」
「真相を、知りたいです。たとえフォンタン家に不都合なことが出てきても」
わたしはミレイユを見た。
彼女の目は、怖れていない。
少なくとも今は。
覚悟を決めた目だ。
「わかりました」
わたしは静かに頷いた。
―――
昼休みに図書館へ向かった。
今月のレオナルドの来訪日は、今日のはずだ。
案の定、図書館に入ると彼の姿があった。
いつもと同じように、棚の整理をしている。
でも今日は——手元に、いつもより多くの書類がある。
「殿下、いらしていたのですね」
「約束を果たしていただけますか」
「資料のことですか」
「はい」
レオナルドは少し周囲を確認してから、一冊の薄い冊子をテーブルの上に置いた。
「これは」
「三年前から昨年にかけての、王宮の食料供給入札の記録です。正式な記録ではありません。わたしが個人的に整理したものです」
わたしは冊子を手に取って、ページをめくった。
日付。入札参加者の家名。落札金額。落札者。
ヴァーン家の名前が、何度も出てくる。
三年前は落札率が高い。
二年前から徐々に下がっている。
昨年——突然、ゼロになった。
そしてフォンタン家の名前が、昨年から急増している。
「この変化が、一年の間に起きた」
「はい」
「自然な競争の結果とは考えにくい」
「そう思います」
わたしは次のページをめくった。
入札の事前情報漏洩を示唆する記録があった。
具体的な名前は書かれていない。
でも——入札前に価格情報を持っていた者がいることを示す、間接的な証拠が並んでいた。
「これを、ずっと記録していたのですか」
「はい」
「なぜ」
レオナルドは少し間を置いた。
「いつか、誰かが使うかもしれないと思っていました」
「誰かが、とは」
「動ける立場にある誰かが」
わたしはレオナルドを見た。
彼はわたしを見ていた。
——動ける立場にある誰か。
彼はずっと、待っていたのかもしれない。
証拠を積み重ねながら、動ける人間が現れるのを。
「ヴァルテさんは、なぜ自分で動かなかったのですか」
「書記官は、記録をするだけです」
「それだけですか」
「……書記官が動けば、記録が消えます。記録を守るためには、動かない方がいい」
なるほど。
彼は動けなかったのではなく、動かないことを選んでいた。
記録を守るために。
「わかりました」
わたしは冊子をテーブルに戻した。
「この冊子は、お借りできますか」
「殿下のお手元に置いていただく方が、安全だと思います」
「……ありがとうございます」
「殿下」
レオナルドが、静かに言った。
「この記録を使うとしたら——相当の覚悟が必要です。ヴァレン侯爵はエレナ王女殿下派の中枢です。動かせば、派閥全体が揺れる」
「わかっています」
「本当に、わかっていらっしゃいますか」
わたしは少し考えてから、答えた。
「覚悟の意味を、問われているのですか」
「はい」
「わたしが動けば、エレナ姉様と対立するかもしれない。王宮が揺れるかもしれない。第三王女が動いたことで、わたし自身が標的になるかもしれない」
「……それでも」
「それでも」
わたしは静かに言った。
「腐ったものは、腐ったままにしておけません」
レオナルドはしばらく、わたしを見ていた。
それから、ゆっくりと目を伏せた。
「……わかりました」
彼は一礼した。
「必要なことがあれば、何でも」
その言葉は、短かった。
でも重かった。
わたしは冊子を手に取って、静かに頷いた。
―――
放課後、廊下でクラリスに出会った。
いつもの華やかな表情ではない。
少し、疲れた顔をしている。
「殿下」
「クラリスさん」
「昨夜は、父とお話しいただいたとか」
「少し、ご挨拶を」
クラリスは少し間を置いた。
「父は、何かお話ししましたか」
「フォンタン家のことを少し。でもわたしにはあまり関係のない話でしたので、早々に切り上げました」
「……そうですか」
クラリスの表情が、複雑だ。
安心しているのか、それとも不安なのか。
「クラリスさん」
「はい」
わたしは少し考えてから、静かに言った。
「お父様のことが、心配ですか」
クラリスは少し目を見開いた。
「……どういう意味ですか」
「ただの問いです。答えなくていいです」
わたしは微笑んで、廊下を歩き始めた。
クラリスは何も言わなかった。
でも、その沈黙が答えだった。
心配している。
娘として、父親のことを心配している。
クラリスは悪人ではない。
父親の焦りを、無意識に引き継いでいただけかもしれない。
——そのことは、忘れないでおこう。
―――
その夜、部屋でレオナルドの冊子を改めて読んだ。
ページを一枚一枚、丁寧にめくる。
入札の記録。
価格の変動。
フォンタン家への移行のタイミング。
そして——一番最後のページに、短い走り書きがあった。
「調達担当の名前:不明。ただし、ヴァレン侯爵と接触があった記録あり」
わたしはその一行を、じっと見た。
調達担当の名前が不明。
ミレイユの父、フォンタン侯爵が「調達担当から直接声をかけられた」と言っていた。
その調達担当が、ヴァレン侯爵と繋がっている。
つまり——
フォンタン家は、ヴァレン侯爵が仕掛けた構造の中に引き込まれていた可能性が高い。
でも、なぜヴァレン侯爵がフォンタン家を使ったのか。
自分の家の取引を増やす必要があったなら、フォンタン家を使う必要はない。
——誰かを、陥れるために使ったのか。
ヴァーン家。
ヴァーン家の不正の証拠として、フォンタン家を利用した。
フォンタン家に不正な情報を渡し、ヴァーン家を締め出した。
その結果として、ヴァレン家の財政も改善されるはずだった。
でも実際には——フォンタン家の方が品質も価格も良かったため、ヴァレン家の取引まで減ってしまった。
——皮肉な結果だ。
ヴァレン侯爵は自分で仕掛けた罠に、自分でも傷ついていた。
わたしは冊子を閉じて、静かに息をついた。
構造が、見えてきた。
でも、まだ足りない。
調達担当の名前。
ヴァレン侯爵との繋がりの証拠。
それが揃えば——動ける。
窓の外で、王都の夜が静かに広がっていた。
——さて。
次の一手は、調達担当の名前を探すことだ。
(第十七話 了)
波紋というものは、石を投げた瞬間より、翌朝の方がよく見える。
夜会の熱気が冷めると、人は冷静になる。
冷静になると、昨夜何が起きたかを改めて考える。
考えると、気づく。
第三王女が、カーライル伯爵と話していた。
第三王女が、ヴァレン侯爵と話していた。
第三王女の髪が、いつもと違った。
たったそれだけのことが、貴族社会では十分な情報になる。
―――
後期最初の登校日。
教室に入った瞬間、空気が違うのがわかった。
視線の数が、違う。
以前はわたしに向いた視線がすぐに流れていた。
今日は——少し、止まる。
止まって、また流れる。
でもその一瞬の間が、以前とは違う。
——波紋が、届いた。
「殿下、おはようございます」
ミレイユが隣に座りながら言った。
「おはようございます」
「夜会、お疲れ様でした」
「ミレイユさんも来ていましたね」
「はい。殿下がカーライル伯爵とお話しされているのを見ました」
「ええ」
「……会場がざわめいていました。少しだけ」
「気のせいでしょう」
「嘘がお上手ですね」
わたしは笑った。
ミレイユも笑った。
「ヴァレン侯爵とも話されていましたね」
「ご挨拶を」
「それだけですか」
「フォンタン家についての噂話を聞かされそうになりましたが、お断りしました」
ミレイユの表情が、少し固まった。
「侯爵が直接、殿下に」
「クラリスさんと全く同じ手でした。親子で同じやり方をされるとは、少し驚きました」
「……そうですか」
ミレイユはしばらく黙っていた。
窓の外に目をやって、また戻してきた。
「殿下、ひとつ聞いてもいいですか」
「どうぞ」
「フォンタン家を利用した誰か、というのは——ヴァレン侯爵のことですか」
真っ直ぐな問いだ。
わたしは少し間を置いた。
「まだ確信はありません。でも、可能性はあります」
「可能性がある、というのは」
「昨夜、ヴァーン家の不正についてヴァレン侯爵に聞いたとき、目が揺れました」
「……目が」
「知っている人間の目でした。あるいは、関与している人間の目かもしれない」
ミレイユは静かに息をついた。
「もしヴァレン侯爵が関与しているとしたら——フォンタン家は、巻き込まれているということですか」
「おそらくは」
「父は、何も知らないのかもしれない」
「その可能性が高いと思います」
ミレイユは長い間、黙っていた。
「……殿下、お願いがあります」
「何でしょう」
「真相を、知りたいです。たとえフォンタン家に不都合なことが出てきても」
わたしはミレイユを見た。
彼女の目は、怖れていない。
少なくとも今は。
覚悟を決めた目だ。
「わかりました」
わたしは静かに頷いた。
―――
昼休みに図書館へ向かった。
今月のレオナルドの来訪日は、今日のはずだ。
案の定、図書館に入ると彼の姿があった。
いつもと同じように、棚の整理をしている。
でも今日は——手元に、いつもより多くの書類がある。
「殿下、いらしていたのですね」
「約束を果たしていただけますか」
「資料のことですか」
「はい」
レオナルドは少し周囲を確認してから、一冊の薄い冊子をテーブルの上に置いた。
「これは」
「三年前から昨年にかけての、王宮の食料供給入札の記録です。正式な記録ではありません。わたしが個人的に整理したものです」
わたしは冊子を手に取って、ページをめくった。
日付。入札参加者の家名。落札金額。落札者。
ヴァーン家の名前が、何度も出てくる。
三年前は落札率が高い。
二年前から徐々に下がっている。
昨年——突然、ゼロになった。
そしてフォンタン家の名前が、昨年から急増している。
「この変化が、一年の間に起きた」
「はい」
「自然な競争の結果とは考えにくい」
「そう思います」
わたしは次のページをめくった。
入札の事前情報漏洩を示唆する記録があった。
具体的な名前は書かれていない。
でも——入札前に価格情報を持っていた者がいることを示す、間接的な証拠が並んでいた。
「これを、ずっと記録していたのですか」
「はい」
「なぜ」
レオナルドは少し間を置いた。
「いつか、誰かが使うかもしれないと思っていました」
「誰かが、とは」
「動ける立場にある誰かが」
わたしはレオナルドを見た。
彼はわたしを見ていた。
——動ける立場にある誰か。
彼はずっと、待っていたのかもしれない。
証拠を積み重ねながら、動ける人間が現れるのを。
「ヴァルテさんは、なぜ自分で動かなかったのですか」
「書記官は、記録をするだけです」
「それだけですか」
「……書記官が動けば、記録が消えます。記録を守るためには、動かない方がいい」
なるほど。
彼は動けなかったのではなく、動かないことを選んでいた。
記録を守るために。
「わかりました」
わたしは冊子をテーブルに戻した。
「この冊子は、お借りできますか」
「殿下のお手元に置いていただく方が、安全だと思います」
「……ありがとうございます」
「殿下」
レオナルドが、静かに言った。
「この記録を使うとしたら——相当の覚悟が必要です。ヴァレン侯爵はエレナ王女殿下派の中枢です。動かせば、派閥全体が揺れる」
「わかっています」
「本当に、わかっていらっしゃいますか」
わたしは少し考えてから、答えた。
「覚悟の意味を、問われているのですか」
「はい」
「わたしが動けば、エレナ姉様と対立するかもしれない。王宮が揺れるかもしれない。第三王女が動いたことで、わたし自身が標的になるかもしれない」
「……それでも」
「それでも」
わたしは静かに言った。
「腐ったものは、腐ったままにしておけません」
レオナルドはしばらく、わたしを見ていた。
それから、ゆっくりと目を伏せた。
「……わかりました」
彼は一礼した。
「必要なことがあれば、何でも」
その言葉は、短かった。
でも重かった。
わたしは冊子を手に取って、静かに頷いた。
―――
放課後、廊下でクラリスに出会った。
いつもの華やかな表情ではない。
少し、疲れた顔をしている。
「殿下」
「クラリスさん」
「昨夜は、父とお話しいただいたとか」
「少し、ご挨拶を」
クラリスは少し間を置いた。
「父は、何かお話ししましたか」
「フォンタン家のことを少し。でもわたしにはあまり関係のない話でしたので、早々に切り上げました」
「……そうですか」
クラリスの表情が、複雑だ。
安心しているのか、それとも不安なのか。
「クラリスさん」
「はい」
わたしは少し考えてから、静かに言った。
「お父様のことが、心配ですか」
クラリスは少し目を見開いた。
「……どういう意味ですか」
「ただの問いです。答えなくていいです」
わたしは微笑んで、廊下を歩き始めた。
クラリスは何も言わなかった。
でも、その沈黙が答えだった。
心配している。
娘として、父親のことを心配している。
クラリスは悪人ではない。
父親の焦りを、無意識に引き継いでいただけかもしれない。
——そのことは、忘れないでおこう。
―――
その夜、部屋でレオナルドの冊子を改めて読んだ。
ページを一枚一枚、丁寧にめくる。
入札の記録。
価格の変動。
フォンタン家への移行のタイミング。
そして——一番最後のページに、短い走り書きがあった。
「調達担当の名前:不明。ただし、ヴァレン侯爵と接触があった記録あり」
わたしはその一行を、じっと見た。
調達担当の名前が不明。
ミレイユの父、フォンタン侯爵が「調達担当から直接声をかけられた」と言っていた。
その調達担当が、ヴァレン侯爵と繋がっている。
つまり——
フォンタン家は、ヴァレン侯爵が仕掛けた構造の中に引き込まれていた可能性が高い。
でも、なぜヴァレン侯爵がフォンタン家を使ったのか。
自分の家の取引を増やす必要があったなら、フォンタン家を使う必要はない。
——誰かを、陥れるために使ったのか。
ヴァーン家。
ヴァーン家の不正の証拠として、フォンタン家を利用した。
フォンタン家に不正な情報を渡し、ヴァーン家を締め出した。
その結果として、ヴァレン家の財政も改善されるはずだった。
でも実際には——フォンタン家の方が品質も価格も良かったため、ヴァレン家の取引まで減ってしまった。
——皮肉な結果だ。
ヴァレン侯爵は自分で仕掛けた罠に、自分でも傷ついていた。
わたしは冊子を閉じて、静かに息をついた。
構造が、見えてきた。
でも、まだ足りない。
調達担当の名前。
ヴァレン侯爵との繋がりの証拠。
それが揃えば——動ける。
窓の外で、王都の夜が静かに広がっていた。
——さて。
次の一手は、調達担当の名前を探すことだ。
(第十七話 了)
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