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第六章

6-31シコちゃん復活

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 6-31シコちゃん復活


 「それじゃ気を付けてね、エルハイミ」
 
 そう言ってティアナはあたしと軽い口づけをする。

 ちゅっ!

 
 うーん、本当はもっとして欲しいのだけどみんなが見ている手前軽いものしかできない!
 ちょっと欲求不満なあたし。
 昨日はしばらく会えなくなるからと言ってあんなに激しかったのに!!
 はあぁ、仕方ない。

 あたしたちは馬車に乗ってユーベルトの街に向かって出発した。

 
 * * * * *


 「しかし、あんたたちって本当にお盛んよね? 昨日もお楽しみだったのでしょう?」

 「シェル、一応ショーゴさんたちもいるのですから言い方には気を付けてもらいたいですわ」

 馬車の中はあたしとシェルしかいないけどやっぱり他の人には聞かれたくない。
 こういったデリカシーの無い言い方は実家でも気を付けてもらわないと。

 「うん? 一応気をつけてはいるわよ。他の人には聞こえないよう注意はしてるわよ。それより、昨日はどんなプレイして楽しんだのよ!? 聞かせなさいよ!! もしかして最後までしちゃったの!?」

 おいこら、何ノリノリで聞いてくるのよ!
 
 「どんなって、いつも通りですわ! そ、それにお嫁に行くまで最後の一線は超えないってティアナと約束をしてますのよ! だから主にティアナの胸を大きくするマッサージがメインで‥‥‥ って! 何言わせるのですの!!」

 答えてしまってからあたしは赤面する。
 い、いかん、最近はティアナの事となるとついついうれしくなってゆるくなってしまう。
 
 「なんだぁ、まだ最後まで行ってないんだ、つまらないわね」

 ぶうたれるシェル。

 こ、こいつ!
 あたしたちの事でつまらないとはなによ!!

 「そ、そんなこと言ってシェルだって私たちの事覗き見て自分でしてるのは知ってますわよ! シェルだってあんなに激しくしているのは全て魂の隷属特権で見せていただきましたわ!!」

 「なっ!!!?」

 とたんに真っ赤になるシェル。
 耳の先まで赤くなっている。

 「こ、このエロハイミ!! それは卑怯だわ!!」

 「ふんだっ! これでおあいこ様ですわっ!!」

 プイっとあたしは明後日の方を向く。
 すると久しぶりにあの声が聞こえてきた。

 『全く、相変わらずあなたたちは騒がしいわね? おはよう、あたしはどのくらい寝ていたかしら?』

 「「シコちゃん!!」」

 あたしとシェルは久々にシコちゃんの声を聴いた。

 「今回は結構長かったですわ。かれこれ半年近かったですわ」

 「いやぁ、ほんと、長かったわね。って、人間界に来てからあたしもだいぶ時間の感覚が変わってきたわね? 半年なんて今まではほんのちょっとだったのに」

 『エルフの時間感覚と一緒にされたら大概は一瞬になってしまうわ。そう、半年か。みんな変わりはない?』

 あたしたちはシコちゃんにあの後の事を話した。
 そして無事学園を卒業して今は一時実家に帰る途中であることを伝えた。

 『ユーベルトの街ねぇ。昔は何もない宿場町だったのにね』

 懐かしむ様にいうシコちゃん。
 長寿のエルフと違いシコちゃんは途中長い眠りについたりもしていた。
 それにシコちゃんと会話できるのは魔法王ガーベルの血を引き継いだもののみ。
 そう考えるとシコちゃんてなんか可哀そう。

 「シコちゃんはご先祖様の魔法王ガーベルといろいろなところを回ったのですわよね?」

 『ええ、そうね。あいつがまだ魔法をちゃんと使えないで失敗ばかりするから手伝ったり指導したり。最初は忙しかったわね。でもあいつにはあの人がいたからそれなりに何とかなっていたけどね』

 「あの人ですの?」

 『ええ、アガシタ様の分身でガーベルの姉さん女房、ライムがね」

 ライム?
 誰それ??

 「えーと、シコちゃんそのライムさんて人誰ですの?」

 『あら、この時代には忘れ去られていたの? ガーベルを指導しながら一人前の男に仕立て上げた少女よ』

 えーと、アガシタ様の分身でご先祖様の姉さん女房で一人前の男にした少女って‥‥‥

 「伝説の少女ですの!?」

 『あら、ライムも御大層な呼び名になってるじゃない? そうよその人がライムよ』

 伝説では自分を犠牲にして狂気の巨人を撃退した人らしいけど、そうかライムさんって言うのか。
 あたしはその昔読んでもらった伝説を思い出していた。

 ライムさんかぁ‥‥‥
 ん?
 ライム、レイム‥‥‥

 「シコちゃん、そう言えばシコちゃんはレイム様知っているのですの?」

 『レイムって、あの見た目が女か男だか分から無い子でしょ? それってライムの弟よ?』

 なんと!?
 やはりそうか!
 レイム様の姉に当たるのか!?

 「あ、でも今はお亡くなりになっているのですわよね?」

 『うーん、どうだか。なんかさっきからそのライムの気配がビンビンと感じるんだけど?』

 「はぁえ?」

 シコちゃんと話していると馬車が止まる。
 どうしたのかと外を見るとちょうどショーゴさんがこちらに来ていた。

 「主よ、まずい。とにかく逃げてくれあれはどう見ても化け物だ!」

 既に衣服を脱ぎ始め戦闘体型になろうとしている。
 あたしはショーゴさんが見た方向に目をやる。
 すると年のころ十六、七くらいのピンク色の長い髪の可愛らしい美人なメイド服を着た女性が道の真ん中に立っていた。
 
 そしてあたしも気付いた。
 一目見ただけで只者じゃない事に!
 
 この感じ以前どこかで!

 あたしは同調して臨戦態勢を取る!

 「シェルっ!」

 「ええっ!!」

 シェルも気づいたらしく弓矢をもって馬車の天井に駆け上る。
 あたしも馬車を降りて注意深くそのメイドの女性を見る。
 ショーゴさんは既に異形の兜の戦士に変身している。

 
 「まったく、いきなりそんなに殺気出すなんてお母さんは悲しいです」


 そう言ってそのメイド服の女性はこちらに歩み寄る。
 同調をしたあたしにはこの化け物がマナと魔力の塊でどうあがいても勝てる相手では無い事を知らされる。


 お母さんですって?
 どういう意味よ!?
 こんな化け物がいつあたしのママンになったのよ!!!?


 『気配がビンビンしていたからまさかとは思ったけど、こんなところで会うとはね。ライム、何してるのよ?』

 シコちゃんのその一言にあたしとシェルは思わずシコちゃんを見てからその女性を見直す!

 「あら、シコちゃんお久しぶり。そう言えばあのぼんくらどこ行ったか知らない? 全然私を迎えに来ようとしないのだもの。まさか、またどこかで浮気してるのかしら!?」

 最後の方は少し怒気をはらんだその物言いはかなりの迫力が有った。
 しかし、この人がライム様?
 いきなりこんな所で出会うなんて、何の用なの!?

 「あ、あの、あなたはライム様なのですの? 私たちに何の御用ですの??」

 「何をそんなに怯えてるの? お母さんは悲しいわ。娘にそんなに怯えられるなんて」


 はぁ?
 娘ってどういう事!?


 「エ、エルハイミのお母さんてあんなに若くて怖い人だったんだ‥‥‥」

 「違いますですわ! 私のお母様はライム様ではありませんわ!!」

 そう言い切るあたしにライム様は困り顔をする。

 「うーん、確かに直接の母親じゃないけど、あなたにはガーベルと私の血が流れているのよ。ガーベルの子供たちや子孫は私にとって自分の子供同然なのよ。エルハイミ、あなたもティアナも私の娘同然です」

 そう言ってにっこりとほほ笑んでくれる。
 しかしそのほほえみは何故かあたしにはぞっとする微笑みだった。

 『立ち話もなんだからそこの宿場村で落ち着きましょうか? いいわよねライム』

 「ええ、勿論。じゃぁみんな一度に運ぶわね」

 そう言ってぱちんと指を鳴らすとあたしたちは一瞬で向こうに見えていた宿場村の酒場兼宿屋の前にいた。


 「なっ!?」


 同調していたあたしでさえ何が起こったか全くわからない。
 慌ててシコちゃんに何が起こったか聞く。

 『ああ、ライムが空間を縮めたのよ。それで向こうにその空間を置き換えたからあたしたちがここにいるってわけ』


 く、空間の置き換えぇっ!?
 そんな事が出来んの!?


 「ああ、のど乾いた。さ、エルハイミ中に入りましょう。他の人もいらっしゃい。ここはお母さんのおごりにしてあげるわ」

 そう言ってライム様はウインク一つする。
 あたしはまたまたぞっとなるのだが断るわけにもいかず指示された酒場に入る。
 シェルは髪の毛を逆立てたまま、ショーゴさんは戦闘形態のままあたしと一緒に酒場に入る。

 

 
 あたしたちはとんでもない人に出会ってしまったのだった。
 
 
 
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