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第八章
8-11兵器増強計画
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8-11兵器増強計画
「ルブクさぁ~ん、今何個目ですのぉ~??」
ここはティナの町のマシンドール工房。
マシンドールの補助パーツや消耗品を作っている。
「んん? あと予定の数まで二十だ、もう少しだぞ!」
既に作り上げた小型投石機は五十を超えるはず。
城壁に均等に最低限の数を作ろうと言う事となったものの結局人手が足りずあたしが錬金術で作る事となった。
いや、作るのはいいんだけど、毎回毎回同じ作業を永遠とするのって苦痛だわ!!
日本のモノづくりの職人さんたちに頭が下がります。
そんな訳の分からないことが頭をよぎっている。
どうも生前からこう言った同じ作業の繰り返しは苦手のようでずっと同じことやっていると生前に聞いた頭に残るCMソングの「レナ〇ン娘」の歌が永遠と頭の中に再生される。
あれは危険なCMだ。
当時あたしは須藤正志と言う日本の商社マンだったけど、手違いで衣服の袋詰め作業を手伝わされた時は気が狂うのではないかと思った。
だって一人二万枚の衣服の袋詰めだよ!?
しかも翌日の朝までにしなきゃならないのだもの!!
あの時は最後の方でみんな壊れていてそんな中でも気を紛らわせるためにつけたラジオから「懐かしの頭から離れないCMソング特集」なんて番組やっているもんだからみんな変になっちゃって、その後こういう作業をしていると勝手に脳内再生されるという恐怖!!
特に中毒性が高かったのが「レナウ〇娘」だった。
「メガネド〇ック」や「この木ぃ何の木~」や「ヤ〇ダ電機」なんかもあったけどあたしはやはり「レ〇ウン娘」だった。
そんな事を考えながら錬成をしているとルブクさんがわめいている!?
「エルハイミさん、それはだめだ! そんな物作ってもしょうがねえだろうに!!」
はたと気付いてみるとティアナが一糸まとわぬ悩ましい恰好で横になっている像が出来上がっていた!?
小型投石機も最後の方は三脚部分が女性の下半身だったり、下着の模様が入った投石機だったりしていた。
「わわわわっ、ごめんなさいですわ! すぐに作り直しますですわ!!」
あたしは慌ててそれらを小型投石機に再錬成した。
「ふう、とりあえずこれで全部だな。ご苦労様エルハイミさんよ。あとはこっちで城壁に届けておくから休んできな」
ルブクさんにそう言われあたしはお礼を言ってから部屋に戻った。
* * * * *
「疲れましたわぁ~」
あたしはぽてっとベッドに倒れ込む。
外を見ると夕焼け色に空が変わっていた。
不思議とお腹はすいていない。
今は精神的にあのCMソングのおかげで参っている。
お風呂も入りたいけど面倒になってきたので【浄化魔法】できれいにしてから服を脱ぎそのまま布団に潜り込む。
そしてティアナの残り香を楽しみながら目を閉じた。
* * *
夢を見ていた。
それはとても怖い夢だった。
ティアナが暗い闇に飲み込まれる夢。
どんなに手を伸ばしても届かない、魔法を使ってもどんどん離れていく夢。
あたしは夢の中でもがき、叫び、そして泣いていた。
ティアナを失う恐怖があたしをむしばんでいく。
それは何物にも代えがたい恐怖。
自分が死ぬことよりずっとずっと怖い夢。
「ティアナぁぁぁっっっ!!!!」
あたしの叫びは届かず黒い闇に飲み込まれるティアナ!!
* * *
「はっ!?」
あたしは目覚めた。
全身に汗をかいている。
いまだにあれが現実だったのか夢だったのか分からないほど動揺している。
『大丈夫、エルハイミ? だいぶうなされていたようだけど??』
シコちゃんが声をかけてくれている。
「だ、大丈夫ですわ。怖い夢を見ただけですわ」
わざと怖い夢と声に出して自分自身にあれは夢だと言い聞かせる。
それでも震えは収まらなかった。
今までに感じた事がないほどの恐怖。
「ティアナ‥‥‥」
あたしは何となくティアナの名前を呼んでみる。
ガチャっ!
「エルハイミ、起きたの?」
丁度ティアナが部屋に入ってきた。
あたしは涙でぐちゃぐちゃのままティアナに抱き着いた!
「うわっとっ! どうしたのエルハイミ!? どこか痛いの??」
「うわぁーんんっ! ティアナぁッ!!」
なぜかほっとするのと愛おしさが同時にこみあげてくる。
あたしはしばし訳の分からないままティアナに泣きついていた。
そして夢の話をした。
「なに? 怖い夢見たですって?? もう、エルハイミったらまだまだ子供なんだから。あら? これってもしかして汗? こんなに汗までかいて。仕方ない、一緒にお風呂入りましょ?」
ティアナはそう言ってあたしをお風呂に連れていく。
あたしを脱がして自分も服を脱ぎ、お湯であたしの体を流してくれる。
そして二人で湯船に入り抱き合う。
「どう? 少しは落ち着いた?」
「はい、ごめんなさいですわ。ティアナに心配をかけて‥‥‥」
ティアナはそっとあたしの額にキスをして優しく髪の毛をなでてくれる。
「いろいろあったから疲れているのよ。今日はお風呂出たらもう寝ましょ。大丈夫、エルハイミが落ち着くまでずっと抱きしめてあげるから」
「はい。ありがとうですわ、ティアナ」
そしてお風呂から上がりベットのシーツを取り換えてティアナと二人で布団に入る。
ティアナは約束通りあたしを抱きしめながら眠りにつく。
『どうやら落ち着いたみたいね。しかしエルハイミが寝ている時に予知夢のような魔法が発動していたような‥‥‥ あら? 二人とももう寝ちゃったみたいね?? それじゃあおやすみなさい、今度はいい夢が見れるといいわね』
遠くでシコちゃんが何か言っていたようだけどあたしはティアナの香りに安心しながらまた眠りについたのだった。
* * * * *
翌日元気を取り戻したあたしはみんなを呼んで兵器増強計画を話す。
「アンナさんが開発中の剣を参考にもっと安価で量産に向いた剣を作ろうと思いますの!」
「でもエルハイミ、流石にここの兵全員分を作るのは大変よ? それに魔晶石核だって足らないわよ?」
ティアナのその言葉にあたしは待ってましたと図面を開く。
「そうなのですわ、ここの兵全員に魔装具を渡すのは困難ですわ。第一にそこまでの魔晶石核はありませんわ! そこで魔晶石に魔法を閉じ込めたものを剣に装着して必要な時に一回限りの短時間魔法発動が出来る代物を作ろうと思いますの! これならコストもかからず開発時間も短縮でき生産も容易にできますわ!!」
そう言って図面を指さす。
丁度剣のつばの所に魔晶石がはめ込まれるようなデザインの図面をみんなに見せる。
短時間切れ味を増幅し、場合によっては魔法の矢なども切り落とせる程度の魔力付加を魔晶石に閉じ込め力ある言葉を言うだけで魔法が発動する魔装具の廉価版。
今回あの猿のキメラが城壁の上まで登ってきたのを考えると鍵爪のロープに鉄線が練り込まれていたのを切るには魔力で切れ味を強化した剣が必要だった。
それに登り切った猿は体のあちこちにプロテクターのように固い装甲板をつけていたから普通の剣では切れなかった。
しかしたとえ一回きりでも魔力を帯びた剣があれば対処できる。
兵全体の戦力を底上げできるのだ。
「なるほど、多用は出来ないがいざと言う時の切り札か? 兵士たちにもそれがあればさらにいろいろできそうだな?」
ゾナーが唸る。
「それだけではありませんわ! シェルの弓と同様にこの魔晶石は使い終わったら交換ができますわ! 幸いコルニャからは格安で魔晶石原石が手に入りますわ。そうすれば予備まで持つと最大二回は使えるのですわ!」
ショーゴさんの魔装具交換やシェルの弓の属性交換を考えると一般の兵士の剣だってできるだろう。
アンナさんは魔晶石核の交換で属性変換を考えていたけどこちらは使える切り札の回数を増やすための交換を考える。
それだけでもさらに大幅に戦力が上がる。
「よし、それではさっそくその剣と魔晶石の制作にとりかかりましょ! マシンドールのマスターたちには一人二個以上のノルマで『魔力付加』の魔法を魔晶石に封じてもらうわよ! いいですよね兄さま、まさかまたエルハイミ一人にやらせるつもりじゃないでしょうね??」
「なっ!? そんな事はさせん! 小型投石機と違い魔晶石の魔力付与ならマシンドールマスターでも出来る。エルハイミ殿、その役目私めにお任せあれ!!」
そう言ってあたしの手を取って口づけをする。
まあ、ここの兵の数分魔晶石に魔力込めるのは流石に一人じゃきついからお願いしよう。
「そうするとあとは剣だが、工房の連中に最優先で作らせるか? ルブクたちを呼べ!」
ゾナーはそう言って兵士にルブクさんを呼びに行かせる。
* * * *
「お呼びですか、ゾナーの旦那?」
「ルブク、すまんが急ぎ作ってもらいたいものがある。当面は城壁待機の人数分だがエルハイミ殿が提唱する簡易魔装具の剣を作ってもらいたい。新造が間に合わなければ現状の剣の改修でも構わん。とにかく急いでくれ!」
ルブクさんたちは大きなため息をついてあたしを見る。
「またエルハイミさんですか? まあ、ゾナーの旦那の頼みだ、勿論やるけど次から次へとエルハイミさんの発明は底なしかよ??」
「ごめんなさいですわ、ルブクさん。でもホリゾンの聖騎士団にキメラ部隊、ジュメルのマシンドールまで出てきたのですわ、こちらも戦力の増強をしなければですわ!」
ルブクさんはやれやれと言いながらあたしから図面を受け取る。
そしてゾナーから最低限の必要数を聞かされ嫌な顔をする。
「仕方ねえ、みんなで頑張るか! エルハイミさんの口ずさんでいた歌でも歌いながらな!」
「へっ? う、歌ですの??」
「ああ、あの何とか娘がたんたかたんたん~って歌だ。やけに耳に残っていてな、今じゃ工房の連中も仕事しているとなんとなく歌っちまうんだ。同じことするときにはありゃぁいいんだがな」
そう言って大笑いする。
あたしは想像する。
工房で男たちがあの歌を口ずさみながら作業をする様を‥‥‥
あたしは当分工房には行くまいとか頑なに思うのであった。
「ルブクさぁ~ん、今何個目ですのぉ~??」
ここはティナの町のマシンドール工房。
マシンドールの補助パーツや消耗品を作っている。
「んん? あと予定の数まで二十だ、もう少しだぞ!」
既に作り上げた小型投石機は五十を超えるはず。
城壁に均等に最低限の数を作ろうと言う事となったものの結局人手が足りずあたしが錬金術で作る事となった。
いや、作るのはいいんだけど、毎回毎回同じ作業を永遠とするのって苦痛だわ!!
日本のモノづくりの職人さんたちに頭が下がります。
そんな訳の分からないことが頭をよぎっている。
どうも生前からこう言った同じ作業の繰り返しは苦手のようでずっと同じことやっていると生前に聞いた頭に残るCMソングの「レナ〇ン娘」の歌が永遠と頭の中に再生される。
あれは危険なCMだ。
当時あたしは須藤正志と言う日本の商社マンだったけど、手違いで衣服の袋詰め作業を手伝わされた時は気が狂うのではないかと思った。
だって一人二万枚の衣服の袋詰めだよ!?
しかも翌日の朝までにしなきゃならないのだもの!!
あの時は最後の方でみんな壊れていてそんな中でも気を紛らわせるためにつけたラジオから「懐かしの頭から離れないCMソング特集」なんて番組やっているもんだからみんな変になっちゃって、その後こういう作業をしていると勝手に脳内再生されるという恐怖!!
特に中毒性が高かったのが「レナウ〇娘」だった。
「メガネド〇ック」や「この木ぃ何の木~」や「ヤ〇ダ電機」なんかもあったけどあたしはやはり「レ〇ウン娘」だった。
そんな事を考えながら錬成をしているとルブクさんがわめいている!?
「エルハイミさん、それはだめだ! そんな物作ってもしょうがねえだろうに!!」
はたと気付いてみるとティアナが一糸まとわぬ悩ましい恰好で横になっている像が出来上がっていた!?
小型投石機も最後の方は三脚部分が女性の下半身だったり、下着の模様が入った投石機だったりしていた。
「わわわわっ、ごめんなさいですわ! すぐに作り直しますですわ!!」
あたしは慌ててそれらを小型投石機に再錬成した。
「ふう、とりあえずこれで全部だな。ご苦労様エルハイミさんよ。あとはこっちで城壁に届けておくから休んできな」
ルブクさんにそう言われあたしはお礼を言ってから部屋に戻った。
* * * * *
「疲れましたわぁ~」
あたしはぽてっとベッドに倒れ込む。
外を見ると夕焼け色に空が変わっていた。
不思議とお腹はすいていない。
今は精神的にあのCMソングのおかげで参っている。
お風呂も入りたいけど面倒になってきたので【浄化魔法】できれいにしてから服を脱ぎそのまま布団に潜り込む。
そしてティアナの残り香を楽しみながら目を閉じた。
* * *
夢を見ていた。
それはとても怖い夢だった。
ティアナが暗い闇に飲み込まれる夢。
どんなに手を伸ばしても届かない、魔法を使ってもどんどん離れていく夢。
あたしは夢の中でもがき、叫び、そして泣いていた。
ティアナを失う恐怖があたしをむしばんでいく。
それは何物にも代えがたい恐怖。
自分が死ぬことよりずっとずっと怖い夢。
「ティアナぁぁぁっっっ!!!!」
あたしの叫びは届かず黒い闇に飲み込まれるティアナ!!
* * *
「はっ!?」
あたしは目覚めた。
全身に汗をかいている。
いまだにあれが現実だったのか夢だったのか分からないほど動揺している。
『大丈夫、エルハイミ? だいぶうなされていたようだけど??』
シコちゃんが声をかけてくれている。
「だ、大丈夫ですわ。怖い夢を見ただけですわ」
わざと怖い夢と声に出して自分自身にあれは夢だと言い聞かせる。
それでも震えは収まらなかった。
今までに感じた事がないほどの恐怖。
「ティアナ‥‥‥」
あたしは何となくティアナの名前を呼んでみる。
ガチャっ!
「エルハイミ、起きたの?」
丁度ティアナが部屋に入ってきた。
あたしは涙でぐちゃぐちゃのままティアナに抱き着いた!
「うわっとっ! どうしたのエルハイミ!? どこか痛いの??」
「うわぁーんんっ! ティアナぁッ!!」
なぜかほっとするのと愛おしさが同時にこみあげてくる。
あたしはしばし訳の分からないままティアナに泣きついていた。
そして夢の話をした。
「なに? 怖い夢見たですって?? もう、エルハイミったらまだまだ子供なんだから。あら? これってもしかして汗? こんなに汗までかいて。仕方ない、一緒にお風呂入りましょ?」
ティアナはそう言ってあたしをお風呂に連れていく。
あたしを脱がして自分も服を脱ぎ、お湯であたしの体を流してくれる。
そして二人で湯船に入り抱き合う。
「どう? 少しは落ち着いた?」
「はい、ごめんなさいですわ。ティアナに心配をかけて‥‥‥」
ティアナはそっとあたしの額にキスをして優しく髪の毛をなでてくれる。
「いろいろあったから疲れているのよ。今日はお風呂出たらもう寝ましょ。大丈夫、エルハイミが落ち着くまでずっと抱きしめてあげるから」
「はい。ありがとうですわ、ティアナ」
そしてお風呂から上がりベットのシーツを取り換えてティアナと二人で布団に入る。
ティアナは約束通りあたしを抱きしめながら眠りにつく。
『どうやら落ち着いたみたいね。しかしエルハイミが寝ている時に予知夢のような魔法が発動していたような‥‥‥ あら? 二人とももう寝ちゃったみたいね?? それじゃあおやすみなさい、今度はいい夢が見れるといいわね』
遠くでシコちゃんが何か言っていたようだけどあたしはティアナの香りに安心しながらまた眠りについたのだった。
* * * * *
翌日元気を取り戻したあたしはみんなを呼んで兵器増強計画を話す。
「アンナさんが開発中の剣を参考にもっと安価で量産に向いた剣を作ろうと思いますの!」
「でもエルハイミ、流石にここの兵全員分を作るのは大変よ? それに魔晶石核だって足らないわよ?」
ティアナのその言葉にあたしは待ってましたと図面を開く。
「そうなのですわ、ここの兵全員に魔装具を渡すのは困難ですわ。第一にそこまでの魔晶石核はありませんわ! そこで魔晶石に魔法を閉じ込めたものを剣に装着して必要な時に一回限りの短時間魔法発動が出来る代物を作ろうと思いますの! これならコストもかからず開発時間も短縮でき生産も容易にできますわ!!」
そう言って図面を指さす。
丁度剣のつばの所に魔晶石がはめ込まれるようなデザインの図面をみんなに見せる。
短時間切れ味を増幅し、場合によっては魔法の矢なども切り落とせる程度の魔力付加を魔晶石に閉じ込め力ある言葉を言うだけで魔法が発動する魔装具の廉価版。
今回あの猿のキメラが城壁の上まで登ってきたのを考えると鍵爪のロープに鉄線が練り込まれていたのを切るには魔力で切れ味を強化した剣が必要だった。
それに登り切った猿は体のあちこちにプロテクターのように固い装甲板をつけていたから普通の剣では切れなかった。
しかしたとえ一回きりでも魔力を帯びた剣があれば対処できる。
兵全体の戦力を底上げできるのだ。
「なるほど、多用は出来ないがいざと言う時の切り札か? 兵士たちにもそれがあればさらにいろいろできそうだな?」
ゾナーが唸る。
「それだけではありませんわ! シェルの弓と同様にこの魔晶石は使い終わったら交換ができますわ! 幸いコルニャからは格安で魔晶石原石が手に入りますわ。そうすれば予備まで持つと最大二回は使えるのですわ!」
ショーゴさんの魔装具交換やシェルの弓の属性交換を考えると一般の兵士の剣だってできるだろう。
アンナさんは魔晶石核の交換で属性変換を考えていたけどこちらは使える切り札の回数を増やすための交換を考える。
それだけでもさらに大幅に戦力が上がる。
「よし、それではさっそくその剣と魔晶石の制作にとりかかりましょ! マシンドールのマスターたちには一人二個以上のノルマで『魔力付加』の魔法を魔晶石に封じてもらうわよ! いいですよね兄さま、まさかまたエルハイミ一人にやらせるつもりじゃないでしょうね??」
「なっ!? そんな事はさせん! 小型投石機と違い魔晶石の魔力付与ならマシンドールマスターでも出来る。エルハイミ殿、その役目私めにお任せあれ!!」
そう言ってあたしの手を取って口づけをする。
まあ、ここの兵の数分魔晶石に魔力込めるのは流石に一人じゃきついからお願いしよう。
「そうするとあとは剣だが、工房の連中に最優先で作らせるか? ルブクたちを呼べ!」
ゾナーはそう言って兵士にルブクさんを呼びに行かせる。
* * * *
「お呼びですか、ゾナーの旦那?」
「ルブク、すまんが急ぎ作ってもらいたいものがある。当面は城壁待機の人数分だがエルハイミ殿が提唱する簡易魔装具の剣を作ってもらいたい。新造が間に合わなければ現状の剣の改修でも構わん。とにかく急いでくれ!」
ルブクさんたちは大きなため息をついてあたしを見る。
「またエルハイミさんですか? まあ、ゾナーの旦那の頼みだ、勿論やるけど次から次へとエルハイミさんの発明は底なしかよ??」
「ごめんなさいですわ、ルブクさん。でもホリゾンの聖騎士団にキメラ部隊、ジュメルのマシンドールまで出てきたのですわ、こちらも戦力の増強をしなければですわ!」
ルブクさんはやれやれと言いながらあたしから図面を受け取る。
そしてゾナーから最低限の必要数を聞かされ嫌な顔をする。
「仕方ねえ、みんなで頑張るか! エルハイミさんの口ずさんでいた歌でも歌いながらな!」
「へっ? う、歌ですの??」
「ああ、あの何とか娘がたんたかたんたん~って歌だ。やけに耳に残っていてな、今じゃ工房の連中も仕事しているとなんとなく歌っちまうんだ。同じことするときにはありゃぁいいんだがな」
そう言って大笑いする。
あたしは想像する。
工房で男たちがあの歌を口ずさみながら作業をする様を‥‥‥
あたしは当分工房には行くまいとか頑なに思うのであった。
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