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第十章

10-18悪魔の刃

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 10-18悪魔の刃


 あたしたちは悪魔のゲームに勝ち次なる詰め所へと向かっていた。

 
 「主様、クロとクロエの再生が終わりました。二人の融合を解除します。しばし時間をください」

 移動中の階段でコクはそう言ってあたしたちを引き留める。
 あたしたちはその言葉に従いその場で止まった。


 コクは両手を掲げて唸る。
 すると両掌が輝きその光はだんだんと大きくなっていく。
 最後にはクロさん、クロエさんくらいの大きさになってその中にだんだんと二人の姿が現れ始める。
 そして完全に姿を現すころにはその光は収まった。


 あたしたちはクロさんとクロエさんを見る。


 二人は瞼を閉じたまま静かに立っている。

 「クロ、クロエ目覚めなさい」

 コクがそう言うと二人はパチッと目を開いた。

 「こ、ここはでいやがります?」
 
 「ぬお? 黒龍様、これは?」

 意識を取り戻した二人はすぐにコクを見つける。
 コクは二人に説明を始めた。

 「二人ともあのサソリの悪魔にやられて生命活動を止める所でした。私が急遽二人を一時融合してその体を修復しました。どうです? 今は何ともないでしょう?」

 にっこりとほほ笑むコクにクロさんは静かにうなずきクロエさんはコクの手を取る。

 「ああ、黒龍様! ありがとうございます。不肖このクロエ、黒龍様に今後もこの身を捧げお使い致します!!」

 それを聞いたコクはにっこりと笑ってクロエさんの頭をなでる。
 かなりうれしかったのかクロエさん、ドラゴンの尻尾生やして振っている。
 なんか犬みたい‥‥‥


 「ところで主様、今ここはどの辺ですかな?」

 「そうですわね、今は九つの詰め所を過ぎましたわ。残り三つですわね」

 クロさんお質問にあたしは応えるとクロさんは唸った。

 「そうですか、不覚にも黒龍様に助けられ更に詰め所も数個進んでおられましたか。申し訳ございません。今後は気を引き締め悪魔どもを殲滅してご覧にいれます」

 そう言ってクロさんはあたしとコクに頭を下げる。

 「クロ、クロエ、二人の働きに期待します。主様、お待たせしました。先を急ぎましょう」

 そう言ってコクもあたしに頭を下げる。
 しかしここで頼もしい二人が復活した。
 あたしも魔力は完全回復していないしこの先の事を考えるとこの二人は正直とても頼もしい。

 あたしたちは次の詰め所に向かうのだった。

 
 * * * * *

 
 「着いたな、主よ、開けるぞ」

 そう言ってショーゴさんは扉を開けた。
 あたしたちが詰め所の中に入ると中央にやはりたたずむ影一つ。

 『よくぞここまでたどり着けたものだ。正直驚いている。たとえ力が戻っていない黒龍やドラゴンニュートがいてもよくぞここまでたどり着いたものだ』

 あたしは驚いた。
 一番最初にいたヤギ頭の悪魔がまたここに居る!?

 「そんな馬鹿なですわ!? あなたは一番最初に倒したはずですわ!!」
 
 そう、あの強力な睡眠で危うくあたしたち全員が眠りに落ちそうになったあのヤギ頭の悪魔だ。
 しかしヤギ頭の悪魔は怪訝そうな物言いであたしのその言葉を否定する。

 『俺はお前らに初めて会うが、もしやあの羊の奴と間違えているのか?』

 羊って‥‥‥
 あたしはそう言われもう一度このヤギ頭をよくよく見ると顎に髭が生えている‥‥‥

 「ええとっ、あなたはヤギ? 最初にいたのは羊ですの??」


 『まさか貴様、羊とヤギの区別がつかんとでも言うのかっ!?』


 このヤギ頭の悪魔はどうもその事がだいぶ気に障った様だ。
 先ほどの物言いもどこへやらだいぶ動揺している。

 『この俺があの羊野郎と一緒にされた‥‥‥ く、屈辱だ! これ以上ないほどの屈辱だ!!』

 そう言ってものすごい勢いで魔力を膨張させる。
 こいつ、かなりの魔力量だ!!

 『ゆ、許せん! 俺はあの羊野郎と一緒にされるのが大っ嫌いなんだ!! ふざけるな、俺の方がずっとイケメンであんなウェーブのかかったくっせ毛なんかと全然違うだろうに!』

 そう言って手刀を掲げこちらに向かって振ってくる。
 するとその衝撃波が床を切り裂き、空間までも切り裂く勢いで迫りくる!?


 「黒龍様、主様! ドラゴンクロ―っ!!」


 そう言ってクロさんが前に出てその衝撃波を迎え撃つ。



 がっきぃぃいいぃぃぃんっ!!



 甲高い音がして衝撃波とクロさんのドラゴンクロ―がぶつかり合い消滅する。
 
 『ぬっ? 俺の手刀を打ち消したか!? おのれ!』

 「手加減はせん! 喰らえドラゴンクローっ! ひょぉぉぉぉぉおおおおぉっしょぉうっっ!!」

 クロさんは飛び上がり空中で宙返りしながらドラゴンクロ―の技を繰り出す。
 その爪が光る線を描きヤギ頭の悪魔へと肉薄する!

 『くっ! 双剣乱舞っ!!』

 ヤギ頭もそう叫んで両の手を手刀に変え空中のクロさんへと手刀の衝撃波をいくつも繰り出す。
 しかしクロさんはその衝撃波をまるで舞い踊るかの如く身をひねりかわす!


 ざんっ!


 「ドラゴン十字星!」

 そう叫びながらヤギ頭を飛び越え床に着地したクロさん。
 それを振り返り追撃しようとしたヤギ頭の悪魔の背中が十字に裂けて鮮血を吹き出す!!


 『ぐはっ! い、いつの間に!?』

 「貴様はその十字架を背負ったっま朽ち果てるのだ。 覚悟するがいい!」

 しかしヤギ頭は体に力を入れその傷を筋肉の盛り上がりで押さえて止血する。
 そして笑い声をあげる。

 『ふっ、ふはははははははぁっ! 見事! しかしこの程度では俺を倒すことは出来ん! 引かぬ、媚びぬ、省みぬ!! 我が剣に敗走は無いのだ!』

 そう言ってヤギ頭は再び両の手で衝撃波を生み出す。
 しかしクロさんは動かずその衝撃波を受け止める!?
 そう、避ければその後ろにいたあたしたちに被害が及ぶからだ!

 「ぐはっ! この、羊の皮をかぶった悪魔め!!」

 『くくっ、仲間をかばったか!? 俺は貴様の血で化粧がしたいぞ! さあ、どこまで耐えられる!!!?』

 そう言って更に衝撃波を撃ってくる!
 クロさんはあたしたちの為にその衝撃波を受け止め続ける。

 「ク、クロっ!」

 たまらずコクが叫ぶ。
 あたしも思わずクロさんに回復魔法をかける。
 かろうじてそれはクロさんの傷を直し体勢を保つも再び受ける攻撃でまたまた傷つく。

 しかしこれは‥‥‥

 あたしは絶対防壁の魔法を展開してクロさんに叫ぶ!

 「クロさん、私たちはもう大丈夫ですわ! 私たちを起こしてくださいですわ!!」

 「承知!」

 クロさんはそう言ってあたしたちに向き直り両手をパーンっと打ち鳴らした!



 はっ!?


 あたしは目覚めた。
 どうやら他のみんなも同じようだ。

 そう、今まで見ていたのは夢だったのだ。
 あたしたちはこの詰め所に入ると同時にすでに敵の術中に落ちていたのだ!


 「マ~ヤぁ~あえ? 何だっけ??」

 「お、お姉さまぁ~もっとぉ~ って、あれ?」

 「主様~だ~いすき~ぃ ‥‥‥あれれっ?」
 
 「げへへへぇ~黒龍様ぁ~  んっ?でいやがります??」

 「ミグロぉぉぉっ!! ‥‥‥はっ!?」

 どうやらみんなも気が付いたようだ。
 シェルは頭を振り、イオマも周りをきょろきょろしている。
 隣にいたコクはあたしを見てきょとんとしているしクロエさんはよだれを拭きながら軽く咳払いしている。
 むやみやたらとなぎなたブレードを振っていたショーゴさんもふと気づいたようで周りをきょろきょろ見ている。

 そしてクロさんは何かを捕まえたようだ。


 『ち、畜生っ! なんで気付いたんだよ!? あのまま夢の中で始末してやろうと思ったのにぃっ!!』


 見ればクロさんの手に握られているのはヤギ頭の悪魔で手のひらサイズにキセルを握ってじたばたしていた。
 
 「その煙が原因か? しかしこうなっては終わりだな」

 『うわっ、やめっ、やめろぉぉおおおぉぉっ!!』

 
 プチっ!


 ヤギ頭の悪魔はあっけなくクロさんの手のひらでつぶされてしまった。


 「どうなっていたのよ、エルハイミ?」

 「ここに入ると同時にあの小さな悪魔の術中にはまっていたのですわ。どうやら見させられていた夢はみんな違うようでしたがあのまま夢を見させられて殺られるところでしたわ」

 あたしは頭を軽く振りシェルを見る。
 シェルは瞼をぱちくりしているが自分の頬をつねってその痛みに涙目になる。

 「主様、しかしよくお気づきになられた」

 「はい、悪魔の傷が回復魔法だけであんなに簡単に治るはずありませんわ。それに羊とヤギ、羊に間違えられるのをあそこまで嫌うとはスケープゴートになるのを嫌がっていたのですわね」

 まるで埃でも払うようにクロさんはヤギ頭の悪魔をつぶして手をはたく。
 すべての能力を夢見に変えてあたしたちを始末しようとしたあの悪魔。

 結果気付かれた時にはその防御力皆無であたしたちに倒されてしまったのだった。

 
 悪魔がこういった攻撃をしてくるのは先のケンタウロスの悪魔でも経験があったはずだが、こういった絡めてでも来るのが悪魔だ。



 あたしたちは更に気を引き締め次の詰め所へと向かうのだった。 
    
 
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