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第十三章

13-30連合軍再編成

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 13-30連合軍再編成


 「以上が我々が現在手に入れた情報となります」

 
 師匠が連合の緊急会談で今まで分かってきた事をまとめて話終わった。
 案の定ここに出席している大使たちは驚きに固まっていた。

 そして相次ぐ風のメッセンジャーの着信。


 「にわかに信じたくはありませんが学園長であるあなたの言葉を信じるしかありませんな‥‥‥」

 「しかし、伝説級の話が現代に蘇るやもしれないとは‥‥‥」

 「ジュメルとは『狂気の巨人』などを復活させどうするつもりなのでしょう?」


 口々に色々な事を言っている。

 
 「ジュメルの狙いはこの世界の破壊です」


 ティアナは騒がしくなり始めるこの会談で今まで黙っていたけどここにきてそうはっきりと言った。
 そして今までの説明から連合参加国の大使たちも言葉を飲み込む。


 「ティアナ将軍の言う通りだと思います。秘密結社ジュメル。その規模は一国をも凌駕するでしょう。そしてその資金源も人材も底が知れない。ジュリ教は戦うこと自体を否定はしてません。しかしそれはあくまで生き残る為のモノ。ジュメルはそのジュリ教の教えを歪曲解釈して滅びの道を先導する破滅願望集団なのでしょう。すべてを破壊し、作り直すなど『狂気の巨人』の前ではまかり通らない理想でしょう」

  
 師匠はそう言ってティアナの言葉をサポートする。


 「では一体我々はどうすればいいのだ?」
 
 「それほどの力を持つ秘密結社など聞いた事も無い」


 大使たちの言い分はごもっともだ。
 しかしそれについてもティアナは確固たる目的を持っていた。


 「ジュメルの野望を阻止するには『女神の杖』を我々がジュメルより先に集め、しかる場所で管理保管するべきでしょう。ジュメルの目的である『狂気の巨人』復活は『女神の杖』無くしては封印を解くことは出来ないのですから。そして我らの手にはエルハイミの働きにより既に四本もの『女神の杖」を手にしているのです」


 ティアナのその言葉にまたまた大使たちは言葉を飲む。
 そしてティアナはそんな彼らの顔を一巡して見てから話を続ける。


 「私ティアナは今後の連合軍の活動について提言したい事が有ります。それは『女神の杖』探索をする少数精鋭の部隊と有事の主力部隊の再編成を提案いたします」



 どよっ!


 ティアナの言葉に大使たちはどよめく。

 ティアナとしてはご先祖様の情報からあと四本の『女神の杖』が何処に有るかは知っている。
 特別な事が無い限りそれは未だそこに守られて保管されているはずだ。

 会談ではどこにあるかははっきりと言わなかったけど情報が有ると言う事だけは伝えてある。


 と、またまた風のメッセンジャーが次々と着信を示す。

 
 師匠はそれを開いて各国の意見を提示する。
 それはティアナの意見に賛同するモノばかりだった。


 「ティアナ将軍の事だ、またきっと素晴らしい働きをしてくれるでしょうな」

 「ジュメルは普通の軍隊では対処できない厄介な連中。ボヘーミャとガレントの協力で軍備の増強も飛躍的になっていますしな」

 「それにジュメルの目的である『女神の杖』をすでに四本も確保できているとはすばらしい。確か全部で十本、ジュメルの手には二本ほど渡っているらしいですが残り四本はまだ見つかっていないのですな?」

 大使たちもティアナの意見には賛同している様だし期待もしている様だ。

 「では、再編成の案はここに。そして『女神の杖』の探索には私自ら参加いたします。本体は引き続きガレントのガルザイル近郊に建設中の連合軍駐屯所にて再編と訓練を再開したいと思います」

 ティアナはあらかじめ用意しておいた再構成書と予定表を提示する。
 そして師匠が中心になってそれらの予算と各国の負担配分について話が始まった。

 多少はもめたものの最終的には以前に比べガレントでの駐屯地開設によりその負担はだいぶ抑えられていた。
 そして参加する国としても増援する軍隊の数も以前に比べ激減していた。


 「本陣の軍隊人数をここまで絞って本当に大丈夫なのでしょうか?」

 「またジュメルが襲撃してきた時にこの数では対処しきれないのでは?」


 勿論心配ではあるだろう。
 しかしジュメルの目的が今後むやみに街の襲撃になる可能性は低くなりつつある。
 むしろあたしのいる場所にちょっかい出して来るだろう。
 だから‥‥‥


 「今後のジュメルの標的は我が妻、エルハイミになるでしょう。エルハイミは今『女神の杖』四本を所有しています。そしてジュメルが今まで各国の遺跡や都市を襲撃していた理由は全てこの『女神の杖』を狙っての事。今後はその標的が我が妻エルハイミに集中するのは必須と思われます。ですので今後の『女神の杖』探索にはエルハイミも同行します」


 ティアナは本当はこのボヘーミャで秘密裏に研究を進めている「女神の杖」がいかにもあたしが所有してあたしの手元にあるかのような情報を流す。


 「『無慈悲の魔女』の手元にか‥‥‥」

 「ジュメルとは言えあの『雷龍の魔女』相手では一筋縄ではいかんだろう‥‥‥」

 「『育乳の魔女』と共に『赤い悪魔』とジュメルに恐れられているティアナ将軍が相手ではな‥‥‥」



 ちょっとマテ、何処の大使よ『育乳の魔女』って!?
 前二つはまだいいわよ?
 最後のは何っ!?


 「そして今エルハイミには太古の竜、黒龍が仕えています。彼女たちのその力は国連軍にも引けを取りません。現にエルハイミは私と互角にやり合う実力を既に持っています」

 大使たちがあたしについての変な噂で盛り上がっている所に今度は師匠があたしをそう評価してくれる。

 「更にエルハイミの働きで東方諸国、イザンカ、ジマ、そしてドドス、更には南方リザードマンたち、スィーフ、そして中立であったはずのユグリアも対ジュメルに関しては協力を申し出てきています」

 
 ざわっ!


 ここに居る大使たちはどよめく。
 そして風のメッセンジャーも遅れて着信がどんどん入って来る。

 「エルハイミ、ティアナ。あなたたちの今後の働きに期待します」

 そう師匠はあたしたちを見て言う。
 とたんに拍手の嵐が巻き起こる。


 「これはすごい。期待しますぞエルハイミ殿、ティアナ将軍」

 「うむ、これほどとは、今次の英雄と言っても差し支えない」

 「わかりました、我々もエルハイミ殿とティアナ将軍に協力できるよう働きかけましょう!」


 大使たちはそう言ってあたしたちに拍手を送ってくれる。

 
 ‥‥‥
 ‥‥‥‥‥‥
 
 おやぁ?
 なんか変に期待がかけられているのだけど?

 あたしは単にティアナのもとにいて邪魔なジュメルをとっとと片付(かたづ)けて静かに平和にティアナといちゃいちゃしたいんですけどぉ~?



  
 そんなあたしの思惑とは関係なく会談はどんどんと進んで行き色々が取り決まっていくのであった。
   
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