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第十六章
16-27全てをかけて
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「狂気の巨人」につかまった初号機は上半身を何とか手の中から出していたが下半身は握りつぶされかけている。
『くぅっ! このぉっ!!』
『ティアナ、やばいよっ!』
剣を手に刺すも効いていない。
そして握られる手にはさらに力が入る。
ざくっ!
ざくっ!!
めきめきめきっ!
「駄目ですわ! いくらエルリウムγの骨格でも、オリハルコンやミスリルを使った外装でもあれだけの差があっては!!」
「ティアナ様逃げてぇっ!」
「ティアナ様あぁっ!!」
もし骨格や外装が持ったとしても間接は完全にやられる。
セレやミアムが泣き叫んでもどうしようもない。
「アイミ! ティアナを助けてですわ!!」
あたしはアイミに命令する。
ぴこっ!!
すぐにアイミは緑の光を放ちながら上空に飛び上がり捕まえられている初号機に向かう。
しかし「狂気の巨人」は残った手でアイミを蠅を追い払うかの如く追い払う。
「くっ! あれではアイミが近づけませんわ!! こうなったら!! 【爆裂核魔法】! 【流星召喚】! 【竜切断破】!!」
あたしは強力な魔法を連続して「狂気の巨人」の腹部を狙って連発する。
核に匹敵する爆風が、異空間から召喚された隕石が、そしてドラゴンをも一刀両断する光の刃が「狂気の巨人」を襲う!
「うぉっ! これだけの大魔法を連発か! どうだ!?」
横で見ていたご先祖様も唸るその連続攻撃は果たして一定の効果もあげられなかったようだ。
それでも流石にアイミを払うその腕の動きは一刻だが止められた。
「アイミ! 今ですわ!!」
ぴこっ!
動きの止まったほんのわずかな瞬間にアイミは握られた初号機にまでたどり着けた!
「ティアナ! 初号機を捨ててでも逃げてくださいですわっ!! アイミ、ティアナを!!」
初号機はかろうじて胸のハッチが開け中からティアナとマリアが這い出してきた。
そこへアイミが駆けつけティアナを助けようとした時だった!
『ぶろろろろろぉぉおおおおおおぉぉぉっ!』
またまた「狂気の巨人」は吠え初号機からアイミやティアナを捕まえようと両の手を動かす。
その瞬間あたしは叫んでいた!
「ティアナぁっ! 同調フルバースト!!」
あたしはなりふり構わず魂の奥底にあるあの方のつながりを呼び込む。
それはほんのわずかな髪の毛の太さにも及ばないモノだけどあのお方の力の本筋。
あたしの魂の奥底に眠り繋がっている力。
キンっ!
何かの枷が外れるような音が魂の中でする。
あたしは碧眼の色を金色に変え天高く飛び上がっていた。
‥‥‥ふん、面白い物がこの世界にはいるのだな。
あたしはそう感じていた。
しかしもう一人のあたしが騒がしい。
よくよく見れば巨人の手の中にあたしが愛して止まない玩具が掴まえられている。
もう一人のあたしは何が何でもあれを助けろとうるさい。
しかしこいつはどうだ!!
この世界の女神の匂いがするが面白過ぎる!
多分女神たちでさえそう易々と滅ぼす事が出来ないだろう。
このあたしでさえ今のこの娘の魂とのつながりでは足らない。
あたしはあたしに問う。
もう一人のあたしの魂の枷を外せと。
しかしもう一人のあたしは自分では枷が外せないと言う。
ふう、あたしのくせに面倒だな。
しかし今のあたしが枷を外すのはもう一人のあたしが自分を保てなくなるかもしれない。
それでも良いのか?
‥‥‥あの女を助ける為なら構わないか。
ふん、まあいいだろう、あたしの望みだ。
仕方ない助けてやるか。
ティアナ、もう一人のあたしに感謝するんだな。
あたしにはお前は愛しい玩具だがもう一人のあたしには自分の命より大切なものらしい。
ならば、魂の枷を外そう!
そして我が力をこの世界にもっと引き寄せよう!!
きんっ!
ききんっ!
きんっ!
枷がどんどん外れていく。
おおっ!
この魂があたしの力を呼び込んでどんどん膨れる!
好いぞぉ、これであたしはこの世界でもっと自由に遊べる!!
『ぶぅろぉおおおおおおおおおぉぉぉぉぉおおおおおおおおぉぉぉぉっ!』
ちっ、なんだもう待てないのか?
良いだろう、遊んでやる。
とその前に約束だからな!
あたしは手のひらをティアナに向ける。
そして光る球体に包み込み初号機やアイミと一緒に巨人の手からそれをもぎ取る。
『ぐぅろぉおおおおおおおおぉぉぉぉっ!!』
巨人の手があたしを殴りつけてくる。
ちっ、少しは落ち着け。
仕方なくあたしはそれを片手で防ぐ。
『ふん、こんなものか?』
まあ少しは手応えがあるか。
あたしは受け止めたその拳を弾き返す。
そしてあたしの周りに飛んでいる黒いのと赤いのに話す。
『おいそこの連中、受け取れ』
「お母さん!」
「お、お母様!?」
「あ、主様でいやがりますよね!?」
「クロエ、とにかくティアナ殿たちを!」
まあドラゴンとか言う爬虫類ならこの愛しい玩具を地上にまで運べるだろう。
光る球体のティアナたちを受け取ったこいつらは慌てて地上へと降りて行く。
『さて、待たせたな。今日のあたしは少々羽目を外すぞ?』
あたしはそう言って目の前の巨人を蹴飛ばす。
それは大きく飛んでいき向こうにある街の様なものをを押しつぶす。
ふん、この程度の蹴りで倒れるか?
しかし巨人は立ち上がる。
『くふっふっふっふっふっ! 好いぞぉこれなら少しは楽しめる! さあ来い! 遊んでやる!!』
起き上がり雄たけびを上げながら腕を振るってくるこいつの攻撃をあたしは片手で受け止め弾きそして押し退ける。
どうも体の大きさが違い過ぎるので攻撃されるのも単調だな。
そろそろつまらなくなってきた。
さて。
あたしはこの巨人を蹴り上げる。
するとこの巨人は宙に飛び上がり手足をバタバタと動かす。
『滑稽な姿だ! 好いぞぉ、もっとあたしを楽しませろっ!!』
落ちてくる巨人をてまりのようにあたしはまた蹴り上げ何度も空の上で踊らせる。
何度も何度も。
ふん、こいつもこんなものか?
と、あたしが思っていたその瞬間、こいつはあたしに噛みついて来た?
いや、あたしを喰らおうとしたのか。
『残念だがあたしはお前如きに喰われてやるつもりはないぞ?』
完全に口の中に入れられたあたしはその場でこいつの口の中をぶっ叩く。
するとこいつはたまらず口を開きあたしを吐き出す。
『ちっ、汚れてしまった。ふん、生臭いわ。 そうだ、確かもう一人のあたしは‥‥‥ 【浄化魔法】! おお、これで奇麗になったぞ! ほう、魔法とか言うものか、これも面白い!!』
地面に転がり落ちている巨人は立ち上がりあたしを見る。
そしていきなり振り返り逃げよう落とする。
なんだ、もう終わりか?
つまらん。
しかしこのあたしにここまでの事をしたのだ。
汚らしい唾液でこの体をぬるぬるのぐっちょんぐっちょんにした代償は払ってもらわなければな?
『つぶれろ!』
あたしはそう言うと巨人はその場で倒れつぶれた。
しかし完全には押しつぶされないようだな?
『ふん、この程度では死なんか? ではどこまで耐えられるか試そう!』
あたしは更に重さをかける。
すると巨人はめきめきと音を立て地面にめり込んで行く。
『はははははっ! せんべいのように薄くしてやろうか!?』
と、あたしが楽しく遊んでいるとこの娘の体と魂の限界が来たようだ。
枷が外れあたしの力が長くいたせいかだいぶ弱ってしまったな?
『仕方ない、この娘がいなくなってしまってはまた遊びに来れなくなる。終わりだ、なかなか楽しかったぞ? さあ消えて無くなれ!』
あたしは押しつぶされている巨人に向かって右手を差し出す。
そして手の平を握りつぶすかのような動きをすると巨人もめきめきと音を立てだんだんと丸く小さくなっていく。
『これで終わりだ』
ぐっ!
あたしが完全に手の平を握りつぶすと小さく丸まっていった巨人も最後には消えてなくなった。
あたしはゆっくりと地面に降り立つ。
すると周りから一斉にこの世界の住人たが歓喜の声をあげながら近づいてくる。
ふむ、どうやらこの娘の知り合いたちか?
「エルハイミ!」
声のする方を見ると愛しい玩具がいた。
もう一人のあたしが今にも抱き着きたがっている。
まあいいか、今日はなかなか楽しめた。
そろそろこの体とも離れないと本当に崩壊が始まってしまう。
あたしは気分よくこの娘の魂から離れ元の場所へ帰って行くのだった。
「エルハイミ?」
「‥‥‥ううぅ、ティ、ティアナ??」
「エルハイミ!!」
なんだっけ?
あたしはものすごく疲れていた。
意識はもうろうとして記憶が混乱している。
ティアナはそんなあたしに駆け寄って来てくれている。
ああ、そうか、あのあたしが「狂気の巨人」を倒してくれたんだ。
よかった、ティアナが無事で。
ああ、でもやばい、意識が‥‥‥
「この時を待っていましたよ、エルハイミさん!」
あれ?
この声は??
薄れゆく意識の中、目の前にあと一歩でティアナに触れられるはずだったあたしはその体を地面に倒すことなく空中に引き上げられたのだった。
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