私はお兄ちゃんをそんな子に育てた覚えはないよ!?

さいとう みさき

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第六章お兄ちゃんは妹がもらったラブレターを気にしなきゃいけないよ?

6-6泉かなめは‥‥‥

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 「私はもともと病弱だった‥‥‥ だから誰も友達がいなかった‥‥‥」


 泉かなめはそう言って小さい声ながらもはっきりと淡々と話し始めた。


 ―― 泉かなめの告白 ――

 泉かなめは小さな頃から体が弱く小学生の時にはほとんど学校を休んでいたらしい。
 そのせいで彼女には友達がおらず一人寂しく過ごす日々が続いた。
 しかし小学生の高学年になる頃には体もだいぶ成長して身長もぐっと伸びた。

 今までの遅れを取り戻すかの如く体が成長した泉かなめだったが心がそれに伴わなかった。


 そして中学に上がる頃には家に引きこもりがちになり更に人々との接触を嫌うようになった。


 心配する親。
 そんな自分に嫌気がさす自分。

 このままではいけないと勉強だけは自己学習で進めてきたおかげで何とか桜川東高校には合格できた。


 そして気分一新、新しい生活を始めたのだが‥‥‥


 半年経っても友人が誰も出来ずかろうじて我慢して登校を続ける毎日。
 誰から話しかけられることなくひそひそと何か言われる毎日。
 
 女性の同級生は勿論男性の同級生は更に遠巻きに彼女を奇異の目で見るのだった。


 何故私が?

 どうして?

 もう嫌だ、こんな生活!


 そんな思いで爆発する寸前だった。


 「なあ、泉さん今度の課題グループ作るんだけどさ、良かったら一緒にやらないか?」


 すべてに嫌気がさし今すぐにも爆発しそうだった彼女にお兄ちゃんが声をかけた。

 「‥‥‥え?」

 「嫌だったかな? なんかさ、みんな泉さんと話してみたいんだってよ?」

 見れば男子を中心にこちらを見ているクラスメート。

 「‥‥‥い、いいの?」

 「ああ、勿論! な、こっち来ないか?」


 その時泉かなめにはそれが救いのように感じられた。
 そして今この時を逃がせば自分は一生変る事が出来ない!


 そう思った彼女はお兄ちゃんの差し出す手を取った。

 それは今まで自分が閉じ込められていた暗い洞窟からの救いの手に様に思えた。

 そして今までちゃんと見た事の無かったお兄ちゃんの顔を見る。

 その時泉かなめの心に今まで感じた事の無かった風が吹いた。


 屈託のない笑顔。
 本当に何気ない。


 親や医者、そして学校の先生たちが作る嘘の笑顔じゃない。

 泉かなめは思わず涙した。


 「うわわわわっ、なに? そんなに嫌だったか? 俺そんなに嫌われてんの?」

 慌てるお兄ちゃんの様子がおかしく笑った事のない自分でさえ思わず笑ってしまった。


 「‥‥‥ありがとう」


 泉かなめがその時言えた最大の感謝だった。

 そして彼女はクラスメートの輪に入っていけたのだった。

 
 * * *


 「‥‥‥お兄ちゃん、ここでもやらかしていたのね」

 「くっ、長澤君ってそう言う所天然でドキッとさせられるのよ。一年の時は別のクラスだったけどまさかそんな事があったなんて‥‥‥」

 「先輩、誰にでも優しいから‥‥‥」

 私たちは思わずつぶやいてしまった。


 「友ちゃん優しいからねぇ~。だから好きなんだけどね~」


 「「「紫乃 (ちゃん)っ!?」」」

 思わず紫乃を見る私たち。

 「なんか自分のお兄ちゃんみたいでさ~。あ、でも彼氏とは違うかなぁ~?」

 紫乃、もしかして自覚していないだけなんじゃ‥‥‥


 
 「だから、長澤君は私の希望‥‥‥ 長澤君になら全てをあげれる‥‥‥」


 「いや、要らないから、お兄ちゃんには不要だから!!」


 またこいつは公衆の面前でとんでもない事言う気なの!?
 私はハラハラしながら泉かなめを見る。

 しかし泉かなめは‥‥‥

 嬉しそうにまた両手を胸の前に持ってきて言う。


 「あの時長澤君に差し出された手は温かった‥‥‥」


 うわっ!
 何その恋する乙女は!?
 誰だお前っ!?

 
 完璧美人にここまで言わせるお兄ちゃんって一体!?


 「はぁ、こりゃぁ泉さんも引かないわね?」

 「先輩らしいって言えばそうですけど‥‥‥」

 思わず顔を見合わせる私たち。



 「おお~! 凄い味噌味だ!! ねぇねぇ、由紀恵ちゃん、トマトケチャップに粉チーズとお醤油少し垂らしてほんのちょっとタバスコ入れると味噌の味になるよ!!」

 「紫乃、為べ物で遊ばない‥‥‥ って、なにこれ本当に味噌味!?」

 「え? どれどれ‥‥‥ 嘘、味噌だわ!」

 「え? 本当ですか!? ‥‥‥うわっ、本当だ! フライドポテトに合わない!!」

 「‥‥‥これはこれで有り」

 紫乃開発の味噌味トマトケチャップに驚かされる私たち。



 そして当初の目的を完全に忘れて恋バナに盛り上がっていたのだった。




 
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