魔王様の小姓

さいとう みさき

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第三章:魔王様の敵

第十二話:魔王様と南の魔王様

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「ふん、相変わらず貧相な城だなぁ」


 そう言って魔王の前に現れたのは小柄な少年と言ってもいい魔族。
 赤を基調とした南国風の服装に褐色肌、短く切った猫っ毛の茶色い髪の毛にクリッとした瞳。
 成人男性になる前の、中性的なその顔はニヤニヤしていた。 


「来たか、アファネス」

「ああ、来てやったさ、他でもないザルバードのお誘いだからね。この七十年で少しはこの城もよくなったかと思ったけど、全く変わってないよね?」

 何が楽しいのか、ずっとニヤニヤしている。

 
「それで、カイトから話があるからって聞いたけど、僕ら魔王を集めるなんて一体何なんだよ?」

「ああ、それなら全員集まってから話すぜ。それまでもう少し待ってろよ」

 魔王がそう言うとアファネスと呼ばれた少年の魔族はすっと無表情になりつまらなさそうに言う。


「なんだよ、せっかく来てやったのにもったいぶるね? 知っているだろう、勇者が現れたんだよ?」


 アファネスがそう言うと魔王から一気に怒りのオーラが立ち昇る。

「それは聞いた。だからこそお前には詳しく話を聞きたいと思っているんだ!」

「はっ! だったらもう少し僕に対して態度を改めるんだな! いい加減僕のモノに成れよザルバード!」

 アファネスはそう言って魔力を一気に膨れあげる。
 それは魔王の怒りのオーラにも決して負けない程の威圧感を放っている。
 魔王の後ろにいたユーリィは、その威圧感に押しつぶされて息が出来なくなりそうな程だった。


「誰がお前のモノになるだと? ふざけるな、俺様は誰のモンでもねーぜ!!」


 そう言って魔王は立ち上がり、今度は魔力を放出する。
 それはユーリィが今まで一度も見た事がないほどの威圧感。
 しかし、ユーリィに対しては全く影響がない。
 ちらっと隣のカイトを見ると、目を輝かせ頬を紅色に染めて魔王を見ている。

 どうやらユーリィたちに影響が無いようにしてくれているようだ。


「ははははっ! 流石ザルバード! 凄い魔力だよね!? だからこそ僕は君が欲しい、確実に勇者を殺す為にもね!!」

「ふんっ、今回の話が終わったら詳しく聞かせてもらうぜ。これは俺たちグランドクロスと創世の女神の使いである勇者との因縁でもあるからな!」

 そう言って双方の魔王はどちらと無く、その膨大に放出していた魔力を止める。
 しばしにらみ合っていたが、ふとアファネスがニヤニヤ顔に戻り言う。


「まあいいさ、みんなが集まってからだね? それまで僕はこのちんけな城でまたされることになるのだろうけど、ここって何か美味しい物はあるのかな?」

「それならお前たちが集まって宴を準備している。ぜってぇおめーらが驚くモノ出してやるから楽しみにしてろ」

「ふふふふふ、そうさせてもらうよ。僕の部屋は?」

「セバスジャン!」

 魔王はセバスジャンを呼びつけ、アファネスを部屋に案内するように指示する。
 アファネスは大人しくセバスジャンについて行き、この魔王の間を去る。


「勇者って、もうかれこれ百何十年も現れてないって聞いたけど」

「……そうだな。前の勇者はすでに死んでるが、新たな勇者が現れるとなればただじゃおかねーぜ! 親父の仇だ!!」

 魔王はそう言ってドカッと王座に腰を下ろす。
 そんな魔王を見てユーリィは思わずつぶやく。


「親の仇?」


 魔族は人や動物のようにつがいによって生まれ出ない。
 歪んだ魔素が溜まり、そして発生する。
 
 だが魔王は違う。
 
 気に入った魔族同士がお互いの魔素を分け与え新たな魔王を生み出す。
 故に魔王は常に強大な魔力を持ち、そしてその力を誇示する。

 南の魔王アファネスが何故ザルバードを欲するのか?       
 その理由が自分の領地に更なる強い魔王を誕生させたいからだ。
 
 だが、それはザルバードにとって自身の力を分け与える事になる。
 そうなると当然東の魔王としてのザルバードの力は弱くなる。
 
 魔王とはそう言うモノだった。


「俺のオヤジ、東の魔王は当時の勇者に討たれた。俺はその頃生まれ出たばかりで、まだまだ勇者にかなう程の魔力を持っていなかった。だから勇者に見つかる事無く生き延びられた。そして力をつけた頃には勇者は寿命で死んじまった。まったく、仇を取ろうとした矢先だってぇのによ」

「じゃ、じゃあ、今の勇者は関係ないじゃないの?」

「それは違う。創世の女神の力を宿した勇者はいずれ俺たち魔王の前に立ちはだかる。だから勇者はぜてぇに許さねぇ。見つけだしたら必ず俺様が殺してくれるわ!!」

 そう言う魔王はユーリィが見た事が無いほど憎しみに顔をゆがませていた。
 奔放な性格の魔王だが、こう言った一面を見るのは初めてだった。

 それ程魔王の勇者に対する憎しみは深い。


 ユーリィはそんな魔王に少し怯えを感じるのだった。

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