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エピローグ
第二十二話:魔王様とその後
しおりを挟むとある村に異世界から転生してきた少年がいた。
彼はある日、がけから転落して頭を強く打ち意識を失う。
そして再び目覚めた時に前世を思い出す。
それも異世界での前世を。
この世界には創世の女神に対して、抗う魔族の王がいた。
しかしこの二つ争いは創世の女神の勝利に終わり、魔族の王の血筋を持つ者を中心に東西南北へとその力は分けられ、追いやられた。
世界は中央の創世の女神を祀る聖地を中心に人族が主体となる国家が成り立ち、そしてその周りを魔族たちが囲む形になっていた。
魔族は人族を食べる。
厳密には人族の魂の中にある魔力を吸い取る。
だから魔族は人の魂を食べなければ死んでしまう。
故に魔族の始祖王レナ・ドが破れてから一万年以上、魔族と人族は争っていた。
しかし、今その長きにわたる戦いに終止符が打たれようとしていた。
「聞いてないよ! なんでグランドクロスの魔王たちや勇者まで一緒に食事をするんだよ!!」
「そりゃぁ、うちの魔王様が偉大だからだよ」
「いやそれ絶対に違うって! ああ、もう、コースなんて準備できないからね!! と、たくさん豚の角煮作っておいてよかった」
ユーリィはそう言いながら粉末になっているからしにぬるま湯を入れて素早くかき混ぜる。
まるでパテか何かのようになったからしをお椀に入れて、それをひっくり返しておく。
「おい、ユーリィなんでお椀をひっくり返すんだ?」
「からしって、練ってからすぐにこうしてお椀とかに入れてひっくり返すと、そのからさ成分が飛ばずに済むんだよ」
そんな事を言いながら、仕上げ時に一緒に煮こんでおいたジャガイモとさやえんどうを入れながら豚の角煮もお皿に盛って行く。
「とりあえずこれ出しながら、どんどんつまみを作っていくから」
言いながら以前作った温野菜サラダやつまみのプレートを作って行く。
それを準備出来たらセバスジャンたちを呼んで魔王たちが待つテーブルに持って行く。
「はいはい、お待たせ。急だったからつまみ的なモノしか出せないよ?」
「かまわねぇぜ! ユーリィが作ったもんは何でもかんでもうまいからな!!」
一応は抗議の意を込めてそう言うも、魔王ザルバードには全く効かない。
分かってはいるが、ユーリィはため息を吐きながら出来た料理を出してゆく。
「おいユーリィ、肉はどうした?」
「はいはい、ありますよちゃんと。今回は豚の角煮ってのを作ったよ」
そう言いながらユーリィは魔王の前に豚の角煮を出す。
それはまだ湯気が立ち昇り、美味しそうな香りを漂わせる。
「ほう、肉の煮込み料理か?」
「うん、まあそうなんだけどお酒のつまみとしても合うかな? 切り分けて食べてみて」
魔王はユーリィにそう言われ、早速ナイフとフォークを使って豚の角煮を切り分ける。
そしてそれを口に運ぶと、目を見開き叫ぶ。
「うめぇっ! なんだこれ、肉が口の中で溶けるかのようじゃねーか!!」
それを聞いた他の魔王たちも早速豚の角煮に手を伸ばす。
そしてその美味さに感嘆の声を漏らす。
そんな様子を見ながら勇者ロラゼムは自分の前の豚の角煮を見る。
「魔族が人族の食事をするとはね。しかしこんな肉の煮込み料理見た事がない。これも異世界の料理なのかい?」
「まあ、そうなんだけどね。そうそう、結構と甘みがあるからそこの黄色いのを少しつけて食べても美味しいよ?」
魔王にお酒を注いだりしながら勇者ロラゼムに答えるユーリィ。
こうしてみると本当に異様な光景だった。
魔王ザルバードの元へ集まっているのは、グランドクロスの北の魔王エレグルス、南の魔王アファネス、西の魔王ロベルバード、そして勇者ロラゼムとその仲間たち。
向こうの席にはしっかりとシーラや四天王たちもいる。
長々と争っていた魔族と人族の勇者が同じテーブルで食事をしている。
それは本来有り得ない光景だった。
「どれどれ、あむっ! んむっぅ!?」
勇者ロラゼムは豚の角煮を切り分け、口に入れた途端驚きの表情をする。
「なんだいこれ!? 口の中に入れた瞬間に肉が溶けるかのようになるなんて! しかもこの甘しょっぱい味がとても合う。脂身もなんでこんなにプルプルで、しつこくないだなんて!?」
同じ人族でもこんな料理は食べた事がない。
一口、また二口とそれを口に運ぶ。
「そう言えばこの黄色いのもつけて食べて見ろと言ってたな」
ロラゼムはそう言いながら器の端につけられている、からしに豚の角煮をつけてから口に運ぶ。
ぱくっ!
つーんッ!!
「んっ! 辛い!? が、なんだこれは!! 鼻に抜けるような辛さが一瞬あるがそれがこの甘い肉にとても合う!?」
見れば他の者もロラゼムと同じようにそのからさに驚いているようだ。
シーラにおいてはあまりの辛さに涙目になっている。
「このからいやつもうめぇじゃねーか!」
「からしって言って、鼻に抜けるような辛さが豚の角煮には合うんだよね。つけ過ぎるとかなり鼻に辛さが突き抜けるから、ちょっとだけにした方がいいよ?」
ユーリィはシーラに葡萄ジュースを入れてやりながらそう説明をする。
涙目のシーラはユーリィを恨めしそうに見ながらその葡萄ジュースを受け取る。
「もっと早く言ってよ!」
「はははは、でも少量つけて食べると美味しいんだよ?」
文句を言うシーラだったが、葡萄ジュースを飲んで一息入れる。
そしてユーリィを上目遣いで見ながらぼそぼそ言う。
「相変わらず料理してるときは楽しそうだし、ユーリィのご飯はなぜかみんなを笑顔にする。ほんと、魔族まで笑顔にするだなんて……」
魔王の元で給仕するユーリィを見ながらシーラは言う。
「悔しいけど、お似合いよユーリィ。はぁ~、私完全に失恋しちゃった」
シーラのそんな気持ちを他所にここに居る皆は敵味方関係なくユーリィの食事を楽しむのだった。
―― 魔王様の小姓 ――
おしまい。
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