テグ戦記

さいとう みさき

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第十章

第52話第十章10-3復讐

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10-3復讐

 イザンカ王国の軍隊は取り戻したユエバの街を経由して南方のドドス共和国へと向かっていた。


 「どうなんだアイン? お前の『鋼鉄の鎧騎士』は動けるようになったのか?」

 馬車でこの大きな「鋼鉄の鎧騎士」を運びながら自分の「鋼鉄の鎧騎士」の様子を見ている。
 「同調」と言うものはこういう時便利で心臓部となる連結型魔晶石核の状況も見て取れる。
 俺の魔力を受けオバーロードをしていたこの連結型魔晶石核は今は通常通りに戻っていて搭乗してみれば今まで通りに動かすことが出来た。


 「ああ、イグニバル大丈夫だ。ランディン隊長にも問題無いと伝えてくれ」

 俺は同調をやめ元の瞳に戻りイグニバルに答える。
 「鋼鉄の鎧騎士」から出てきてその全貌を眺めてからもう一度イグニバルに目を向ける。


 「全くうらやましいもんだぜ。お前の『鋼鉄の鎧騎士』は壊れる事も無く修理も調整も必要ないのだからな」

 「その代わり持っていかれる魔力は半端ないぞ?」

 「よく言う、英雄たるお前さんの魔力量は普通の奴の数倍だって話じゃないか? 俺たちでさえそんなに長々となんて『鋼鉄の鎧騎士』に乗っていられないというのに」


 「鋼鉄の鎧騎士」はそれに搭乗する人物の魔力量によって稼働時間が制限される。
 魔力量の多いものであれば長々と使えるがそうでないものは短時間で動けなくなってしまう。

 それにただ魔力量が多ければ良いと言うものでもない。

 完全に「鋼鉄の鎧騎士」と同調をする事は難しいが指先一つ、外装一つ感じられるくらいにならなければいけない。
 更にそれを扱って戦闘までしなければならないから実際に戦いに出れる人間も限られてしまう。


 俺の様なのはイレギュラーなのだろう。


 事実オクツマートたちには動かす事さえ出来ない。


 「そう言えばロマネスクの機体まで持って来ているが使えるのか?」

 「国が一体でも多く『鋼鉄の鎧騎士』を準備したがっているお陰で専属技師がついてくれることになった。まあ規格が違うからどこまで直るか分からんがな」

 そう言って馬車の上にもかかわらずロマネスクの『鋼鉄の鎧騎士』は修理を受けているのを見る。
 俺にはわからないが素体からの修理の為上半身は鎧を脱がされややも情けない姿で修理を受けている。

 専属技師と言っても魔法使いが錬成魔法を駆使して素材をつなぎ合わせたり魔力回路を準備したりと大忙しの様子だ。


 「しかし俺たち傭兵部隊の機体にまでイザンカの素材を使ってくれるとはな。おかげで反応が少し早くなったし見えなかった左目も直してもらえた。流石イザンカにはマジックアイテムも素材も豊富だな」

 イグニバルはそう言って笑う。

 「鋼鉄の鎧騎士」は特殊な素材で構成されている。
 一部には魔獣や幻獣の素材まで使われていると聞くから驚きだ。

 よく思うのがあんな生体部品使ってよくも腐らないもんだと。

 そんな事を思いながら俺はイグニバルと共にロマネスクの機体の様子を見に行くのだった。


 * * * * *


 「燃える砂だと?」

 「ああ、ドドスの方に行けばもっとあるんだがこの砂は火を近づけると燃えあがるんだ」


 野営の時に一緒に進軍している傭兵部隊のテントに行き飯を食っているとオクツマートがそんな話をしてきてその砂を見せてくれる。


 「これは‥‥‥」

 それは火薬の素になるモノだった。
 これに硫黄成分を加えて調合をすれば爆発的に燃え上がり火薬となる。


 「オクツマート、この砂ってのはもっとあるのか?」

 「ああ、ドドスに近づけば近づくほど容易に手に入るはずだが?」

 オクツマートの話ではこの辺では湿った薪などを燃やすのによく冒険者たちが使っているらしい。
 オクツマートはその辺の地面をきょろきょろと見て盛り上がった丘のような所へ行く。
 そして地面がむき出しになっていてごつごつと石のある場所を少し掘ってみる。
 

 「あった」


 そう言って小さな黒い石を引っ張り出す。

 「こんな感じで結構そこら中に在るはずだ。こいつを袋か何かに入れて石か何かで叩いて細かく砕けばああいった砂のようになるわけだ」

 実際に目の前でそれを見せてもらって出来上がった砂を焚火の中に放り込む。


 ぼわっ!


 一瞬にして火力が上がり薪を更に燃え上がらせる。


 「冒険者時代は結構使ったんだぜ」

 まるで悪戯でも成功した子供の様にオクツマートは自慢げに話す。
 だがこれは知っている俺からすればとんでもない事だ。


 「オクツマート、この砂もっと作れるか?」

 「ん? ああ、こんなのいくらでも出来るぞ?」

 それを聞いて俺はすぐにビブラーズ傭兵隊長に話に行くのだった。


 * * * * *


 「これがその爆弾とか言う物か?」

 「ああ、そうだ。これを大量に作れば魔法攻撃とは違い『鋼鉄の鎧騎士』にダメージを与えられるはずだ」

 俺はさっそくオクツマートに作ってもらったその砂と可能な限り手に入れられる素材を混ぜ合わせ筒に詰めて導火線を付けたものをビブラーズ隊長に見せる。


 「こんなもので『鋼鉄の鎧騎士』をどうにか出来るとは思えんがな‥‥‥」

 「まあ見ていてくれ」

 俺はそう言いながら少し離れた所にある大きな岩の隙間にそれを差し込み点火の魔法で導火線に火をつける。
 そして急ぎ戻って来て岩陰にビブラーズ隊長と共に隠れる。


 「こんな事をしてもな‥‥‥」

 そうビブラーズ隊長が言った時だった


 どがぁぁあああぁぁぁんっ!!


 まるで【火球】魔法が集中でもしたかのような大爆発が起こり大岩を木っ端みじんに砕き飛散させる。


 「なっ!? 何が起こった!!」


 驚くビブラーズ隊長に俺は先ほどの大岩が有った場所を指さす。
 そこには粉々になって飛び散ってしまった大岩だった残骸が少し残っているだけだった。

 「これが有れば矢の先につけて飛ばす事も導火線を長くして投げて牽制するも自由自在だ。魔法と違い対魔処理されている『鋼鉄の鎧騎士』にも通用する。打撃も並みのモノを十分に超えるだろう」

 驚き目を見開くビブラーズ隊長だったが何かを感じ取ったのだろう。
 すぐに俺にその作り方を聞き何個か作っておいたその爆弾を引っ提げて慌ててジバル将軍のもとへ走って行った。


 これならば万が一ドドスの「鋼鉄の鎧騎士」が出て来ても対処できる。


 「アルファード、待っていろよ貴様だけは必ず俺が倒す!」




 俺はドドスの方角を見ながらそうつぶやくのだった。 
   
 
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