7 / 7
第7話らーめん:異世界ラーメン屋の場合
しおりを挟むここは異世界。
魔王討伐の為に異世界に召喚されたラーメン屋は見事に魔王を倒し、そして勇者を辞めて今日もラーメン屋をしていた。
そう、コカトリスが出るというこの森の街道でも……
「うーん、流石にみそも醤油も無くなったかぁ。まあ魚醤はあるみたいだからこれを使うとするか? となれば海鮮風味を足した方が良いな」
「それで、今度はどんならーめんを作る気なのじゃ?」
「ん? さっきコカトリス捕まえただろ? 『始まりの街』で豊富な野菜も手に入ったし、ここは『濃厚白湯スープ』のラーメンを作ろうかと思ってな」
「濃厚白湯スープじゃと? よくわからんが旨そうな響きじゃ! ラーメン屋、はよう作ってくれ!!」
「慌てるなよ、これは強火でガンガン炊き出ししないとダメなんだ。しかも野菜もたっぷり入れて旨味を出してな。最低でも二晩は煮込みたい」
「なっ! 二晩もラーメンが食べられんのかぁ~? ラーメン屋ぁ~、何とかするのじゃぁ~」
「うわっ、抱き着くな! 分かった、分かった。そぼろ肉もあるしピリ辛の台湾風作ってやるからそれで我慢してろよ…… ん?」
「いたぁっ! ラーメン屋、やっと見つけたわよ!!」
「あれ? あんたは確かエルフの村にいた……」
「ティアーシアよ! やっと見つけた!! あなたのせいでこんな体になっちゃったのよ? 責任取って!!」
「はぁ?」
「あ、こんな所にいた! ちょっとあんた! いっつもいっつもすぐ何処かに行ってしまっていくら追っても捕まえられないじゃないの! 私、あの時の事が忘れられなくてずっとあなたを追っていたと言うのに!!」
「あれ? あんたは確かケルベロスの……」
「リシェルよ。あの時はその、ありがとう。でもあの後の事が忘れられなくて…… 私ずっとあなたを追ってたのよ!!」
「えぇ?」
「こんな所に居ましたか。よかった、とうとう見つけた。ケインたちを振り切って一人で来たかいがありました」
「ん? あんたは確か…… ああ、思い出した。機動要塞の時の!」
「良かった、あれだけ素晴らしい思いをさせてもらったのに忘れられていたら悲しいですからね。でも結局は私がダメでした。あなたの事を忘れることなどできない。ずっとあなたに会いたくて探していました」
「はいぃ?」
「おい、ラーメン屋。こ奴等はなんだ? 貴様わらわと言うモノがありながら一体どれだけ手広く手を出しているのじゃ?」
「いやいやいや、俺は何もしてないぞ? 大体にしてネヴァリヤだってこっちの魔導士のねーちゃんは知っているだろうに?」
「どうだかな…… 他の人間の顔なんぞ覚えておらんわ!」
「で、あなた……」
「ふう、やっぱり他にも……」
「私は気にしませんよ。ちゃんと私の分があれば」
「ちょっと待つのじゃ! ラーメン屋はわらわのじゃ! 他の女などに渡しはせんぞ!!」
「「「はぁ?」」」
「お、おい、ネヴァリヤ……」
「駄目ったら駄目なんじゃ! わらわはこ奴に胃袋を掴まれてもうラーメン屋無しでは済まない体になってしまったのじゃぁ!!」
「「「えっ!?」」」
「お、おいネヴァリヤ……」
「ま、まさかあなたこんな小さな子に手を出しているの!? エ、エルフとかではないわよね?? じゃあやっぱり見た目の年齢?」
「いくら冒険者だって節度ってのは必要だと思うんだけど? 確かにあんたは凄いけどこんな小さな子に手を出していたとは……」
「見た感じ初潮は来ているっぽい。子供は作れるからちゃんと責任取ってやって欲しい……」
「いやあの、何か勘違いしてないか??」
「とにかく、ラーメン屋よ、早くその『濃厚白湯らーめん』なるモノをわらわに食わせるのじゃぁ!」
「何それ!? 新たならーめん!?」
「まさか、あのらーめんを超えるらーめんなの!?」
「らーめんとは無限の可能性を秘めていたとは…… 味噌らーめん以外にも美味しいらーめんが存在していたとは……」
「だぁーっ! おぬしらは後回しじゃ!! ラーメン屋のらーめんはわらわの物なんじゃぁッ!!!!」
「え、えーとぉ…… まぁ、いいか。よっし、待っていろよ。今、旨いラーメン作ってやるからな!!」
―― 異世界ラーメン:おしまい ――
**************************************
あとがき:
ども、こんなお話をここまで読んで下さりありがとうございます。
最近事故って後遺症が出るか心配ですが、何とかぼちぼちと。
「異世界ラーメン」いかがだったでしょうか?
みさきSとラーメン食いながら適当に作ったプロット(メモ紙一枚分)でしたが楽しんでいただけたでしょうか?
もっといろいろなラーメン出したかったのですが、書き出すときりがないのでここらへんで。
異世界ラーメンはこれで終わりですが、きっとまたどこかの遺跡や迷宮、深い森の奥でおいしそうな匂いを漂わせて屋台店出している事でしょう。
あなたにもステキな一杯を。
それではまた。
さいとう みさき
10
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。
凛 伊緒
ファンタジー
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」
「それは良いですわね、勇者様!」
勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。
隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。
毎日の暴行。
さらに報酬は平等に分けるはずが、いつも私だけかなり少なくされている。
最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた。
今までの行いを、後悔させてあげる--
俺の伯爵家大掃除
satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。
弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると…
というお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる