異世界ラーメン

さいとう みさき

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第7話らーめん:異世界ラーメン屋の場合

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ここは異世界。
魔王討伐の為に異世界に召喚されたラーメン屋は見事に魔王を倒し、そして勇者を辞めて今日もラーメン屋をしていた。

 そう、コカトリスが出るというこの森の街道でも……



「うーん、流石にみそも醤油も無くなったかぁ。まあ魚醤はあるみたいだからこれを使うとするか? となれば海鮮風味を足した方が良いな」


「それで、今度はどんならーめんを作る気なのじゃ?」

「ん? さっきコカトリス捕まえただろ? 『始まりの街』で豊富な野菜も手に入ったし、ここは『濃厚白湯スープ』のラーメンを作ろうかと思ってな」

「濃厚白湯スープじゃと? よくわからんが旨そうな響きじゃ! ラーメン屋、はよう作ってくれ!!」

「慌てるなよ、これは強火でガンガン炊き出ししないとダメなんだ。しかも野菜もたっぷり入れて旨味を出してな。最低でも二晩は煮込みたい」

「なっ! 二晩もラーメンが食べられんのかぁ~? ラーメン屋ぁ~、何とかするのじゃぁ~」

「うわっ、抱き着くな! 分かった、分かった。そぼろ肉もあるしピリ辛の台湾風作ってやるからそれで我慢してろよ…… ん?」





「いたぁっ! ラーメン屋、やっと見つけたわよ!!」


「あれ? あんたは確かエルフの村にいた……」

「ティアーシアよ! やっと見つけた!! あなたのせいでこんな体になっちゃったのよ? 責任取って!!」

「はぁ?」





「あ、こんな所にいた! ちょっとあんた! いっつもいっつもすぐ何処かに行ってしまっていくら追っても捕まえられないじゃないの! 私、あの時の事が忘れられなくてずっとあなたを追っていたと言うのに!!」


「あれ? あんたは確かケルベロスの……」

「リシェルよ。あの時はその、ありがとう。でもあの後の事が忘れられなくて…… 私ずっとあなたを追ってたのよ!!」

「えぇ?」





「こんな所に居ましたか。よかった、とうとう見つけた。ケインたちを振り切って一人で来たかいがありました」


「ん? あんたは確か…… ああ、思い出した。機動要塞の時の!」

「良かった、あれだけ素晴らしい思いをさせてもらったのに忘れられていたら悲しいですからね。でも結局は私がダメでした。あなたの事を忘れることなどできない。ずっとあなたに会いたくて探していました」

「はいぃ?」



「おい、ラーメン屋。こ奴等はなんだ? 貴様わらわと言うモノがありながら一体どれだけ手広く手を出しているのじゃ?」

「いやいやいや、俺は何もしてないぞ? 大体にしてネヴァリヤだってこっちの魔導士のねーちゃんは知っているだろうに?」

「どうだかな…… 他の人間の顔なんぞ覚えておらんわ!」



「で、あなた……」

「ふう、やっぱり他にも……」

「私は気にしませんよ。ちゃんと私の分があれば」



「ちょっと待つのじゃ! ラーメン屋はわらわのじゃ! 他の女などに渡しはせんぞ!!」


「「「はぁ?」」」


「お、おい、ネヴァリヤ……」

「駄目ったら駄目なんじゃ! わらわはこ奴に胃袋を掴まれてもうラーメン屋無しでは済まない体になってしまったのじゃぁ!!」


「「「えっ!?」」」


「お、おいネヴァリヤ……」


「ま、まさかあなたこんな小さな子に手を出しているの!? エ、エルフとかではないわよね?? じゃあやっぱり見た目の年齢?」

「いくら冒険者だって節度ってのは必要だと思うんだけど? 確かにあんたは凄いけどこんな小さな子に手を出していたとは……」

「見た感じ初潮は来ているっぽい。子供は作れるからちゃんと責任取ってやって欲しい……」


「いやあの、何か勘違いしてないか??」

 
「とにかく、ラーメン屋よ、早くその『濃厚白湯らーめん』なるモノをわらわに食わせるのじゃぁ!」



「何それ!? 新たならーめん!?」
 
「まさか、あのらーめんを超えるらーめんなの!?」

「らーめんとは無限の可能性を秘めていたとは…… 味噌らーめん以外にも美味しいらーめんが存在していたとは……」


「だぁーっ! おぬしらは後回しじゃ!! ラーメン屋のらーめんはわらわの物なんじゃぁッ!!!!」





「え、えーとぉ…… まぁ、いいか。よっし、待っていろよ。今、旨いラーメン作ってやるからな!!」





 ―― 異世界ラーメン:おしまい ――




**************************************
あとがき:

ども、こんなお話をここまで読んで下さりありがとうございます。
最近事故って後遺症が出るか心配ですが、何とかぼちぼちと。

「異世界ラーメン」いかがだったでしょうか?

みさきSとラーメン食いながら適当に作ったプロット(メモ紙一枚分)でしたが楽しんでいただけたでしょうか?
もっといろいろなラーメン出したかったのですが、書き出すときりがないのでここらへんで。

異世界ラーメンはこれで終わりですが、きっとまたどこかの遺跡や迷宮、深い森の奥でおいしそうな匂いを漂わせて屋台店出している事でしょう。


あなたにもステキな一杯を。


それではまた。



さいとう みさき


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