9 / 22
第二章:変わりゆく世界
その八:船
しおりを挟むサージム大陸の南東にある港町のツエマ。
私たちが住むこの世界には大きく分けて四つの大陸がある。
エルフの村がある南方のサージム大陸。
その北西側にはウェージム大陸があり、更に北に行くとノージム大陸がある。
そしてここ港町のツエマから私の目的地がある東のイージム大陸へと渡航できる。
「ここがツエマの港町かぁ、水上都市スィーフよりは小さいんだな?」
「それでも東の大陸との交易の窓口よ。イージム大陸に行くには、南回りのここか北回りの二つのルートしか無いからね」
私がそう言うと、イオタは首をかしげる。
「なんでウェージム大陸から直接イージム大陸に行けないんだ?」
「普通の舟では海獣たちにやられてしまうからよ。ガレント王国や貿易都市サフェリナの保有する『鋼鉄の舟』でもないとウェージム大陸とイージム大陸の間の大海は渡ることは難しいでしょうね」
「鋼鉄の舟」とはウェージム大陸にある世界最大の国家、ガレント王国とサージム大陸の北方、ウェージム大陸に近い貿易都市サフェリナの大商会が保有する船の事だ。
帆船と違って、帆が無く機械と魔法仕掛けで動くかなり貴重な舟らしい。
なんでも、その昔大魔導士が開発したもので鉄を水に浮かせる技術があるとか。
鉄なんて重い物が水に浮くなんて驚きだけど、軍事的、重要な物資の運搬時にだけ使われると言う代物らしい。
「だからこの一番安全な南ルートで島々を渡るように航海するの。島々の周りは大型の海獣の縄張りじゃないからね」
「なるほど、それで普通はここから船で渡るんだ」
冒険者ギルドに先ずは着いて、オオトカゲを下取りしてもらう。
買値の七割くらいで引き取ってくれるので助かる。
普通中古品は半額位からの交渉なんだけどね。
「ここまでありがとうね。ちゅっ♡」
最後にオオトカゲにお別れとお礼の意を込めてキスしてやると、尻尾を振って喜んでいるようだ。
そう言えば、このオオトカゲってオスだかメスだか分からないままだった。
私がキスして喜ぶのなら、オスかな?
そんな事を考えながら代金を受け取り、早速町に出る。
「ふーん、見覚えのある所が多いわね?」
「ここはそんない変わっていないって事か?」
「みたいね、宿屋もお店も倉庫も見覚えのある所が多いわ」
二百年間ほとんど変わらない人の街って言うのも凄いと思う。
とは言え、この町は交易の窓口。
船着き場の港と、その荷物を保管する倉庫。
そしてそれを各方面に運ぶための商隊が忙しそうにひしめいている。
「そう言えば、イージム大陸の南方にはドワーフの国があって魔鉱石って言う特別な鉱石が取れるんだっけ……」
「魔鉱石?」
「うん、魔力付与とかが容易に出来る鉱石で、あの『鋼鉄の鎧騎士』なんかでも使われているって聞くわ」
この世界の特徴として、各国が「鋼鉄の鎧騎士」と言うゴーレムのような体長大体六メートル前後の巨人を保有している。
特別な騎士たちはその「鋼鉄の鎧騎士」に乗り込んで戦場を駆ける。
場合によっては「鋼鉄の鎧騎士」どうしが国の威厳をかけて一騎討をしてその勝敗を決める場合もある。
まさしくこの世界の最高戦力の一つだ。
「『鋼鉄の鎧騎士』かぁ。俺も昔ガレント王国で見たよ。量産型って言ってたけど、あれ一つで国家予算の四分の一って言ってたから、凄いよなぁ」
「それだけ魔道と資源を投入したって事でしょう。さてと、船荷商会に行ってイージム大陸行きの船があるかどうか聞いてみないとね」
私はそう言って記憶の中にある船荷商会を目指す。
変わってなければこの通りを行って、倉庫区の近くのはずなんだけど……
「あったっ! うわぁ~二百年前と同じだわ」
それはまるで当時のままの様子でそこにたたずんでいた。
そして見覚えのある扉と看板。
まったく変わっていない様だった。
「へぇ~、ずいぶんと古めかしい所なんだね?」
「でも助かるわよ、昔と変わってないようなのでね」
言いながら商会に入る。
中は活気があって、取引用の個別テーブルは商人たちでいっぱいだった。
私はそれを横目にカウンターに行く。
「イージム大陸に行きたいのだけど、船は出ている?」
「おや、エルフのお客とは珍しい。定期便は一週間後に出発だよ。客室は……まだまだ空いているね」
カウンターのおじさんに聞いてみると、台帳をぺらぺらとめくってそう答えてくれる。
私はすぐに代金を聞いて、客室も取る。
「イージム大陸までお二人ね。部屋は一つっと。これが証書だ。一週間後の朝一にここへ来てくれ」
船の予約は簡単に出来た。
そうすると一週間ほどここでゆっくりできそうだ。
「イオタ、船の予約は出来たわ。早速町に行ってみましょう!」
「はいはい、それじゃぁこのツエマの街を案内してもらおうかな?」
「昔どおりならね。とりあえず食事行きましょ!」
私たちはそう言ってツエマの町に出るのだった。
1
あなたにおすすめの小説
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様を書いたストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる