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第一章:転生
1-35:アビスの実力
しおりを挟む「さて、あまり目立たない様にするとなると、どうしましょうか?」
アビスはそんな事を言いながら広間へと足を進める。
対する「鋼鉄の鎧騎士」は流石に選手交代。
二体目が出てきて、一体目はなんか動きがおかしくなりながら引っ込んで行った。
あれ、マリーのせいで壊れたんじゃないだろうか?
「アマディアス様、あの者は?」
「アルム専属の者だ」
「しかし見る所、普通の執事のようですが?」
「安心するがいい、多分この中でも一番強い存在だ。下手をすると『鋼鉄の鎧騎士』数体でかかっても倒せないかもしれない程にな……」
アンマンさんはアマディアス兄さんからそう聞いて思わずアビスを見る。
アビスは武装どころか鎧すらつけていない。
魔法使いが持つ杖も無い事から一体どう言う戦いをするか皆目見当がつかない。
そんなアビスがこの中で一番強いとか言われれば誰だって思わず首をかしげるだろう。
「よろしいのですな?」
「かまわぬ」
一応確認をするアンマンさん。
そりゃぁ、普通に考えたら「鋼鉄の鎧騎士」相手に丸腰で戦うなんて正気の沙汰ではない。
でも先ほどのカルミナさんに続きマリーのそれを見れば考えも変わって来るだろう。
カルミナさんは戦術の勝利だろう。
しかしマリーは以前対戦したと言う時より確実に強くなっていると思われる。
いくら魔力を操作させて爆発的な、超人的な力が出せるとは言え、あれは破格すぎる。
宮廷魔術師のドボルゲルクさんが見たらまた落ち込んじゃいそうだ。
それ程マリーのあの技は魔道以上の力を発揮していると思われた。
「そ、それでは最後の模擬戦を行う、両者準備は良いか? では始めっ!!」
アンマンさんは頬に汗を一筋流しながら開始の合図をする。
途端に「鋼鉄の鎧騎士」が動き出し、アビスに木刀を降るい落とす。
が、地面が盛り上がってバリゲードを生成する。
「無詠唱の使い手かっ!?」
アンマンさんはそれを見て驚く。
まぁ、呪文らしきことは一切唱えて無くていきなり目の前に防壁が現れればみんなそう思うだろう。
アビスは次に片手をあげて指をパチンと鳴らす。
すると途端に「鋼鉄の鎧騎士」の周りに黒い稲妻が現れ、バチバチと音を鳴らしてその体を焼き尽くす。
と、思われたがその雷は次の瞬間かき消され、なに事も無かったかのように「鋼鉄の鎧騎士」は立っていた。
「ほう、対魔処置ですか? これはなかなかに強力ですね。先ほどのマリーさんやカルミナさんの物理攻撃に対しても装甲に防壁機構が備わっていたようですし、これはなかなか」
アビスは嬉しそうにそう言って両の手を上げる。
すると左右に真っ黒な亜空間が開いてそこからレッサーデーモンたちが現れる!?
「なっ!? 一度にあれほどの悪魔召喚ですと!?」
「ふむ、これは意外だな」
レッサーデーモンたちは身の丈二から三メートルくらいあって、それが「鋼鉄の鎧騎士」に一度に十数体まとわりつく。
流石にこれには「鋼鉄の鎧騎士」も数で負けてしまい、数体を木刀で切り裂いて消すも、まるでラグビーのスクラムを組んだように体にまとわりつかれ動きを止める。
完全に動きを止めたのを見てアビスはくるりとこちらに向き聞いてくる。
「さて、これで私の勝ちでよろしいでしょうか?」
「しょ、勝者アビス!!」
アルマンさんのその掛け声で、「鋼鉄の鎧騎士」にまとわりついてたレッサーデーモンたちはアビスが再び指を鳴らすと霧のように霧散して消えた。
あまりにあっけない勝利であった。
確かにアビス自身はほとんど動いていない。
アビス自身としては目立ってはいない。
だが……
「目立つなって言ってるでしょうにぃっ!!」
「しかし我が主よ、私めは目立っておりませんぞ?」
そうだけどそうじゃなぁ―ぃいいいぃぃっ!!
思い切り叫びそうになるのを我慢してアビスコこちらに引っ張って来てこそこそと言う。
「アマディアス様、完敗でした。悔しくはありますが、これほどまでの者たちがイザンカにいたことは喜ばしい事です」
「いや、この者たちは特別だ。そなたらの働きには感謝している」
「もったいないお言葉です……」
そう言ってアンマンさんはアマディアス兄さんに一礼してからくるりと向こうを向いて大声でいう。
「てぇめぇらぁっ! 次は絶対に負けない様に徹底的に鍛えるぞ!! 覚悟しやがれ!!」
おおぉぅっ!!!!
アンマンさんのその掛け声に一同腕を上げて呼応する。
そして早速広場でうさぎ跳びや「鋼鉄の鎧騎士」に丸太を縛り付け引っ張らせる特訓を始めている。
あー。
なんかごめん。
私は心底申し訳ない気持ちでいっぱいになるのだった。
* * * * *
「しっかしカルミナさんもそうだけど、マリーやあのアビスってのも凄いな!」
湯船につかりながらエイジは今日の事を言っている。
意外な話、この砦にもお風呂があった。
しかも湯船がある大きいやつ。
私とエイジは二人してそのお湯に浸かっていた。
ぐふふふふふ、今は悪ガキだけど、エイジも後五年もすれば私のストライクゾーンに入るわね。
エイジも結構美少年の部類に入るし、将来が楽しみだわ。
私はパシャっとお湯で顔を洗いながら言う。
「まぁ、マリーはもともとすごいらしいけど、アビスは特別だよ」
「あいつもお前と同じに無詠唱の使い手だもんな! くっそぅ、どうやったら無詠唱できるか俺にも教えてくれ!!」
エイジはそんな事を言っているけど、無詠唱魔法はきっとコツさえつかめれば誰でもできるんじゃないだろうか?
神話の時代、私たち人族は「始祖の巨人」が倒れた大地の土から生み出されたと言われている。
だから元の素材が神々と同じという説もある。
故に魔法に対応でき、女神様の秘密の御業を呪文と言う媒介を経て使う事が出来る。
多分、本当はそのプロセスをちゃんと理解して、魔力を込めると同じ事が出来るんだと思う。
でもそれは私たち人族が女神様たちに近づくことを意味するのだけど……
「うーん、じゃぁさ、水生成魔法を呪文を唱えないで頭の中で唱えながらやってみてよ」
「はぁ? 女神様の教えの聖なる言葉を唱えずにか? それじゃぁ魔法が発動しないんじゃないか?」
「いいから、いいから。あくまでも呪文を唱えるのを心の中でだけ唱えてね」
そうエイジに言ってやらせると、エイジはいぶかしげに私を見てから目をつぶって から手を差し出す。
そしてうんうん唸りながら目を開く。
「ダメだよ、頭ん中で唱えようとしても上手く出来ないよ」
「じゃあさ、口の中でこもるようにやってみてよ、なるべく声を出さないよにして」
私はもう一度エイジにそう言ってやらせる。
エイジは今度は目を閉じずにもごもごと口の中で呪文を唱えるようにやると……
ぷく~
「あっ! 出来た!!」
ばしゃん!
一瞬手の平の前に水の玉が出来たけど、凄く小さい。
それはエイジが集中を解くとすぐに湯船に落ちてしまった。
「ね、出来るでしょ?」
「あ、ああ、ああっ!」
エイジはなんか嬉しそうにもう一度それを試してみる。
すると今度はちゃんと水生成魔法が出来て、コップ一杯分くらいの水の玉になる。
「アルム! 出来たぞ!!」
「うんうん、それの練習を何度もやって行けば簡単なやつは無詠唱が出来るはずだよ。慣れてきたらだんだん呪文の長いのも試してみるといいよ」
「やったぁ! よっし、今日から特訓開始だ!」
「なんの特訓をするんだ?」
喜ぶエイジを見ていたら、ふいにアマディアス兄さんの声がする。
ちょっと驚きそちらに振り返ると真っ裸なアマディアス兄さんがいたぁっ!?
「お前たちが風呂に入っていると聞いてな、たまには男だけで風呂に入るのもいいだろうと、マリーを止めて来たのだが。何をしていたんだ?」
「ああ、アマディアス兄ちゃん! 見てくれ、俺も無詠唱魔法が出来たんだぜ!!」
「なに? エイジそれは本当か??」
「ああ、見ていてくれよ!」
そう言ってエイジはアマディアス兄さんに水生成魔法を見せているけど、私はアマディアス兄さんのある一点から目が離せない。
エイジなんかと違ってポークビッツじゃなく、ジャーマンソーセージ!!
しかもしっかりと大人でゾウさんの鼻と違ってあれがこんにちは~しているぅ///////!!!!
うわぁ~、アマディアス兄さんてこんなに凄いんだ!
うわぁ~
わうぁ~
「ん? アルムどうしたんだ真っ赤な顔して。もしかしてのぼせたか?」
「ひゃ、ひゃいっ///////!?」
アマディアス兄さんは私に気付き、こちらへ来る。
長い青い髪の毛をかき分けて私の顔へ近づいて来る。
あわ、あわあわあわっ!
ふわっとアマディアス兄さんの香りが漂ってくる!?
私はアマディアス兄さんの下と顔を交互に見比べ更に緊張で頭が混乱してくる。
「どうしたんだアルム?」
「おい、アルム??」
「は、はうぅうううううううぅぅぅっ///////!!」
ぶっしゅぅーっ!
私は思わず盛大に鼻血を出して意識を失うのだった。
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