アルム~アラ40女子がいきなり異世界の第三王子に転生して無意識に無双してプチハーレム状態なんだけど、私はBL要素が見たいの!!~

さいとう みさき

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第二章:ジマの国

2-19:地竜の話

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 地竜は正気を取り戻し、今までのいきさつを話し始めた。


『あれは我がまだ若く、モテ期じゃった頃じゃ』

 地竜はそう言って遠い目でいろいろと語り始めた。
 いや、そう言うのじゃなくて!!

 突っ込みを入れたかったのだけど、何故かみんな地竜の話を真剣に聞いている。
 地竜の話はどうでもいいような話ばかりだったのに、何故かイータルモアはじめマリーまでも真剣にその話を聞いている。


「あの、アマディアス兄さん……」

「すまんアルム、ちょっと待ってくれ、今いい所なんだ」


 アマディアス兄さん、あなたもですか!?

 何故地竜の取るに足りない恋物語から、その昔「鋼鉄の鎧騎士」と戦った武勇伝、更には千四百年前の異界の悪魔の神と先代の天秤の女神アガシタ様の壮絶な戦いの話まで、まるで吟遊詩人かと言うような語り草で次々と物語を進めて行く。

 それにつられて、エイジも、護衛の皆さんも果ては馬車の馬までも地竜の物語を聞いている。


 正直、私にとってはどうでもいいような話なのに、なぜにみんなそこまで聞き入る?



「あーっ! その話聞いた事あるですぅ!! ユエバの町の鐘突き堂にお母様が自我失って町を全破壊して、怒ったお婆様がお母様を貼り付けられた話知っているですぅ!」

『なんと! では黒龍様の愛娘であるタルメシアナ様をおぬしは知っておるのか?』

「はい、タルメシアナは私のお母様ですぅ!」

『なにっ!? それは本当であるか!?』

「はいですぅ!」


 話し盛り上がってるなぁ、おい。  


 そりゃぁ、同じ竜族の話だから盛り上がるかもしれないけど、今重要なのはそこじゃない。
 私はため息を吐きながら地竜に言う。


「悪いんだけど、こっちの質問にも答えてよ」

『ぬっ? おお、すまんな。ついつい話に花が咲いてしまったわ』


 年取ると竜族も話長くなるのかな?
 私はアマディアス兄さんを見てから地竜に聞く。



「誰があなたの正気を失わせたの?」



 私のその問いにこの場が一瞬で静まり返る。
 多少の談話は良いけど、一番知りたいこの問題に果たして地竜は何と答えるか?


『我の正気をか…… まぁ、今から考えればそうであったのだろうな』

 地竜はそう言って私に頭を向けて話始める。


『あれは我がまだ若くモテ期が……』

「だぁっ! そうじゃないでしょうにぃっ!!」

 
 どッごーんっ!!


 思わず【火球】ファイアーボールをぶちかましてしまった。
 地竜は思い切りそれを喰らいのけぞる。


『何をする、痛いではないか?』

「まじめにやってっ! 昔話はもういいからっ!!」

『ふむ、せっかちなやつじゃのぉ』


 はぁはぁ、この地竜ボケが始まってるんじゃないでしょうね?
 しかし地竜は今度こそ話を始めた。


『我はここよりもっと南に巣を持つ者だ。確かドドスとか言う人の国の領域に接していたはずじゃがな。いつも通りドワーフの連中のいる岩山で縄張りをめぐっておった時じゃ。聞き慣れぬ笛の音が聞こえて来てな、その音を聞いているうちにだんだん意識がモウロウとしてきてな、気が付いたのは先ほどじゃ』


「笛の音?」

 私がそう言うとイータルモアとマリーが反応した。


「それって、竜笛ですぅ!」

「竜の骨から作られると言う、竜使いの使う笛ですね」

 マリーは私に向かってそう言う。
 そして私は前に読んだ魔導書を思い出していた。

 確か、数少ないドラゴンライダーが竜を使役するのに使う笛で、死んだ竜の骨から作られた笛だったはず。

 魔導書には人の意志を竜に伝える道具だと書いてあったが、それは主に竜の亜種族であるワイバーンを使役する時に使うと書かれていた。
 実際にドラゴンライダーとはいっても、本物のドラゴンではなく竜族で言う下級の亜種、ワイバーンがそれとされる。


「その笛の音って、あなたのような地竜にも効くの?」

『さあぁな、我は気付けばここにおった。故にその間の事はよく覚えておらんのだ』

 地竜はそう言ってぼふんと煙を吐く。
 あれって竜のため息なのだろうか?


「しかしそうすると、何者に貴殿は操られていたと言う事か?」

『ふむ、悔しいがそうなるかのぉ。千五百年を生きるこの我が誰かに操られるとはな、ややも腹立たしいわ』

 アマディアス兄さんの質問に、そう言って地竜は今度は鼻からチロチロと炎が漏れ出している。
 苛立ているのだろう。
 理解は出来る。


「しかし、そうなると地竜を操るその者はドドス共和国よりここまで誘導してきたと言う事か?」

「となると、やはりグリフォン含む魔物たちはドドス共和国から差し向けられたって事ですか、アマディアス兄さん?」

「なんだよそれ! テイマーか何かがうちの国にちょっかい出しているってのかよ??」

 
 予想が無かったわけではにけど、やはりこれはドドス共和国の仕業と言う可能性が高くなってきた。
 アマディアス兄さんもそれは考えていただろう。
 エイジの言う通り、テイマーだとすると、地竜をも操れるほどの実力の持ち主だ。


『さて、人間よ我は自分の巣に帰るとする。まかり間違って黒龍様の領地に入ろうものなら一瞬で消し炭にされてしまうからな。礼を言おう、人間よ、お前の名は何と言う?』

「僕ですか? 僕はアルムエイドと言います」

『アルムエイドか、覚えた。何か有れば我が力になろう。我が名は地竜のゴメズ。岩山の付近を縄張りとする地竜よ』


 地竜はそう言って踵を返して東へと向かって歩き出した。


「おじちゃん、そっちお婆様の縄張りの方ですぅ。今お婆様いませんが、お母様がいるので見つかったら速攻でミンチですぅ!」


 
 ビクッ!


 イータルモアのその声に地竜はびくつき、額に汗をびっちりかきながら振り返る。


『み、南はどっちじゃ? 我のいた岩山はどっちじゃ?』


 そうとうビビっていたのだろう、あの巨体がガタガタ震えていた。
 イータルモアは南を指さし言う。


「あっちですぅ。あ、でもむやみに人の村や町を壊すとお婆様の教育的指導もあるですぅ。気を付けるですぅ!」

『う、ウム。忠告有難く受けよう。イータルモア殿、黒龍様やタルメシアナ様によろしくお伝えくだされ』




 そう言って今度こそ地竜のゴメズは南に向かって歩き出すのだった。

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