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第三章:イザンカ王国
3-9:魔力炉始動
しおりを挟むイザーガ兄さんから話を聞いて、何故ミリアリア姉さんが五年もうちのブルーゲイルに来ていたのかが分かった。
「じゃぁ、オリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』を早急に直したかったのって……」
「最悪一騎討で勝敗を決める羽目になれば、オリジナルを出すしかありませんわ」
ミリアリア姉さんはそう言って魔力炉を見上げるのだった。
*
あの後、ミリアリア姉さんもイザーガ兄さんの所へ来て頷きあっていた。
話を聞いた私はてっきりすぐにでも魔力炉を稼働させるのかと思いきや、ミリアリア姉さんがいきなり抱き着いて来てニコニコ顔で言う。
「お父様がアルムとの婚姻を許可してくれましたわ! 流石に今のままのアルムと婚約するにはイザンカ王に話を通してからと言う事ですぐにはいきませんが、お父様が許可を下さればもう決まったも同然ですわ!」
「うん、これでアルムエイド君も私の義弟となる訳だね。うんうん、今後もよろしくねアルムエイド君!」
「はぁっ!? ミリアリア姉さんマジなのそれっ!!」
「何をいまさらですわ。アルムも協力するって約束したですわよ?」
「いやだって、ミリアリア姉さんはブルーゲイルに好きな人がいて、マルクス叔父さんからのお見合いの話を断る為に僕と偽装の仲の良さをアピールするんじゃ……」
私が抱き着かれながらそう言うと、ミリアリア姉さんは変な顔をしながら言う。
「ブルーゲイルに好きな人がいるのは当たり前ではありませんの? だって私が好きなのはアルムですもの。それにアピールは勿論、あわよくばお父様を説得して婚約までたどりつけられればと思っておりましたもの♡」
な、何それぇっ!?
「え、あ、じゃ、じゃぁ魔道技師のイケメンなエザリクさんは!?」
「エリザク? ああ、あのひ弱そうな技師ですの? まったく興味などありませんわ!」
「じゃぁガルナさんは!?」
「あんなおっさん趣味ではありませんわ! 私はアルムのような純真爛漫な男の子が好きなのですわ♡」
いやあんたもかーいぃっ!
お巡りさん、このおねーさんです!!
いやぁーっ!
異母姉弟の姉だけでなく、お付きの大人の女性のマリーだけでなく、いとこのお姉さんまで私を狙っているぅっ!!
「僕まだ十歳ですよ!?」
「大丈夫ですわ、記録では十二歳で子供を作った王族がいるとは知っていますもの♡」
いやそうじゃない―っ!!
駄目だこの王族。
みんな変態だぁーっ!!
「なぁ、アルム。そすると今後はお前の事『お義兄さん』とか呼ばなきゃいけないのか?」
「呼ばないでエイジ! 誰かミリアリア姉さんを止めてぇっ!!」
「大丈夫だよアルムエイド君。君はエシュリナーゼを娶っても同時にミリアリアを娶っても大丈夫だからね。イザンカ王家は一夫多妻制だから第三王子である君なら問題無いよ」
「イザーガ兄さん!! そうじゃないでしょうに!!」
「私としてはアルムエイド君が義弟になってくれれば気兼ねなしにいろいろ相談できていいことづくめだしね♪」
駄目だ。
イザーガ兄さんがアマディアス兄さんと同じ悪い笑顔になっている。
この二人、見た目はイケメンだけどたまに悪い笑顔をする。
やはりいとこ、似た者同士なのかぁ!?
「ま、アルムもあきらめるんだな。しっかし、カルミナさんがアマディアス兄ちゃんのお手付きにあっちゃったとはなぁ~」
「エイジぃ~」
私の情けない声がむなしくするのだった。
* * *
「それで、どうやって魔鉱石の精製をするつもり?」
話し戻って、先ほどの魔力炉の前で私はミリアリア姉さんに聞く。
するとミリアリア姉さんは私に向かって説明を始める。
「もともと魔鉱石は剣や盾、場合によっては防具に使われると魔力付与や魔力伝達に優れ優秀な武器となるモノですわ。今までは魔鉱石自体を加熱して槌で打って精製していましたわ。何度も過熱して、何度も槌で打ってを繰り返すと純度が上がった素材になり、そして剣や盾、防具のパーツに整形してきましたわ」
確かに、魔鉱石の使い方はそれが一般だった。
鉄鉱石と同じく、石炭などで加熱して打ちつける事により余分なものがはぎとられていき純度の高い魔鉱石の鉄が出来あがる。
それをまた成型するのが一般的だった。
もちろん我がイザンカ王国の「鋼鉄の鎧騎士」の主要部分も同じ製法だった。
「しかし、魔力伝達をするにあたりこの方法では均一化されていない魔鉱石は伝達率が不安定の為効率が落ちるのですわ。イータルモアがもたらせたオリジナルにも搭載されていると言われている連結型魔晶石核のパワーがちゃんと伝達されなければ駆動系の魔晶石が十分に働けませんわ」
そう言ってミリアリア姉さんは新型の魔力炉の見取り図を取り出す。
それは完全に溶鉱炉だった。
「今回新型の魔力炉は魔鉱石自体を完全に溶解させることが出来ますわ。確かにその分魔力消費が激しいですが、不純物も取り除け均一化した魔鉱鉄へと精製出来るのですわ!」
考え方が完全に前世の製鉄へとなっていた。
今までブルーゲイルの魔力炉は製鉄で無く単に加熱しか出来なかった。
要は魔鉱石の成型しか出来なかったのだ。
しかしレッドゲイルのこの魔力炉は完全に製鉄だった。
「早速始めますわよ、アルム!」
「はいはい、分かりました。で、何処に魔力を注ぎ込めばいいんだい?」
「こっちだよ、アルムエイド君」
鼻息荒いミリアリア姉さんに聞くといイザーガ兄さんが私を魔力炉の横側に案内してくれる。
そこには魔晶石がはめ込まれていて、どうやらここが魔力供給源になっているらしい。
「通常はここに魔力を注ぎ込むか魔晶石をはめたり取りかえたりをするんだ。ここに手をついて魔力を注入してくれればいいよ」
「分かりました。じゃあ早速!」
私はそう言いながら魔晶石に手をついて魔力を流し込み始める。
すると途端に魔力炉がうなりを上げる。
ごんごんごんごんごん!
ぶっヒューッ!!
「こ、これは!!」
魔力を流し始めてイザーガ兄さんは驚く。
そしてゲージを確認して声をあげた!
「既に九割にまで熱上昇をしているだと!? ここまでに熱量を上げるには魔晶石が何個もいると言うのにかっ!?」
「えーと、もっと魔力流した方がいいですか?」
「いやいやいや、これ以上魔力を一気に流されたら魔力炉がもたない。しかし凄いなアルムエイド君は。想像以上だよ」
イザーガ兄さんは見たことも無い笑顔でそう言う。
そしてミリアリア姉さんにすぐに指示をする。
「既に準備万端だ、魔鉱石をどんどん投入してくれ!」
「分かりましたわ!!」
ミリアリア姉さんはそう言って私たちが買い集めた魔鉱石をどんどんと魔力炉に入れさせるのだった。
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