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第三章:イザンカ王国
3-27:戦況
しおりを挟む「そうか始まったか」
アマディアス兄さんは作戦会議室でそう言って地図の上の駒を動かした。
今回は父王も参加した状態で、会議室は緊張に飲まれていた。
「想定通りですな。国境の砦にはすでに中距離支援型と長距離支援型、それと傭兵部隊の『鋼鉄の鎧騎士』五体が到着済み。あとは新型が一体ですか……総勢十一体と支援が二体、持ちますかな?」
「そのためにレッドゲイルも増援を出しているのではないか。もうじきレッドゲイルの増援も着く」
戦況はどうやら国境の砦で開戦し始めたようだけど、たぶんドドスは一般兵に大きな被害が出ているだろう。
何せタンクタイプとキャノンタイプによる長、中距離攻撃がなされるわけだから。
魔法以外でそんな飛び道具と言ったら弓矢がメインだけど、こちらは放つのは城壁破壊兵器並みの威力になる魔光弾。
ファイアーボールが降り注ぐような状況下じゃまともに砦にもたどり着けないだろう。
「それで、状況はどうなのだ?」
「はっ、こちらに先ほど第一報が届きました!」
父王のその質問に風のメッセンジャーが用いられ、目の前に置かれる。
それを父王は広げて水晶に手をかざし起動させる。
『報告します! ドドス軍【鋼鉄の鎧騎士】視認二十七体、正規軍およそ一万二千!! 開戦直後に相手側に新型兵器による魔光弾攻撃を行いドドス軍の進軍がいったん停滞しています!!』
おおおおぉぉぉ!
メッセンジャーの報告に感嘆の声が上がる。
まぁ、一般兵相手には脅威だろうね。
問題は「鋼鉄の鎧騎士」が出てきてからだ。
「予想通りうまくいきましたわね」
「うん、まさか遠方から連続で魔光弾が飛んでくるとはだれも思わないだろうからね。油断して近づけばファイアーボールの雨に出くわすわけだもんね」
ミリアリア姉さんはぐっとこぶしを握って喜んでいる。
まぁ、使い道がなくなりそうな旧型の再利用がうまくいっているのだから当然か。
「しかしそうなると次は『鋼鉄の鎧騎士』が出てくることとなるな」
父王はそう言ってアマディアス兄さんを見る。
するとアマディアス兄さんは私とミリアリア姉さんを見て言う。
「こちらもただ迎え撃つわけではございません。ミリアリア、説明を」
「はい。それでは説明させていただきますわ。今回開発した新型の『鋼鉄の鎧騎士』はすでに皆さんもご覧になられた通りのものですわ。しかしやはり多勢に無勢、数的にはドドスが上回っていますわ。なので戦略的に超強力な魔光弾を放てる武器を四号機と五号機に装備し、うち一体を国境の砦に向かわせましたわ」
ミリアリア姉さんの説明に会議に参加した人たちはざわめく。
「よろしいかなミリアリア嬢、いくら強力な魔光弾でも対魔処理されている『鋼鉄の鎧騎士』には効果がないのではないかな?」
「確かに普通の魔術は通用しませんわ。しかし【絶対防壁】もその許容量を超える攻撃に対しては防御しきれないという記録もありますわ。つまり、相手の防御力を超える威力があればたとえ対魔処理された『鋼鉄の鎧騎士』でも対応できるという事ですわ。対魔処理に近い性質を持っている古竜ですら伝説の超上級魔術【竜切断破】が通用する様にですわ!」
ミリアリア姉さんの説明にここいるみんながどよめく。
確かに【竜切断破】の魔術は伝説級ではあるものの、実在する魔術。
竜ですら一撃で切断するといわれるその威力は確かに対魔性に強い竜族にも通用する。
「四号機は魔光弾ランチャーという武器を装備していますわ。連発は確かにできませんが、魔晶石を一度に数十個使用してその威力を増したものを発射できますわ。遠距離からたとえ致命傷にならなくともその威力による被害は甚大なものになるはずですわ」
最後にミリアリア姉さんがそう言うと個々の雰囲気は期待のそれに変わってゆく。
「ではその吉報を待とうとするか。アマディアス、レッドゲイルの増援はどうなっている?」
「はっ、すでにレッドゲイルにも新型と中距離防衛のためのキャノンタイプが配備されています。今回相手の出方が想定通りでしたので、防衛線である国境の砦に予定通り増援を向かわせております。もうじき到着かと」
アマディアス兄さんのそれを聞いて父王はいったん目をつぶり大きく息を吐く。
「ドドスの本命が来るぞ! 皆の者このブルーゲイルも戦の準備を怠るでないぞ!! 全軍の指揮はアマディアスに。情報は遂次儂の所へ持ってくるように!!」
父王のそれを聞いてこの場に知る将兵たちも一斉に立ち上がり、右手のこぶしを左胸の前に持ってくる。
「イザンカのために心臓をささげよ!」
『はっ!!』
こうしてブルーゲイルも戦闘態勢へと入るのだった。
* * * * *
「アルム、正直魔光弾ランチャーの威力は未知数ですわ。ブルーゲイルでもドドスの潜伏部隊が攻めてきたら長距離支援型のタンクと同時に試したいですわ」
南方の城壁に目立たないようにタンクタイプとキャノンタイプ、そして新型の五号機を配置している。
ミリアリア姉さんはその様子を見ながら少し心配そうにしていた。
「何弱気になってるのよ? あなたが設計してが私が魔晶石に魔術付加をしているのよ? 魔光弾ランチャーはきっとうまくいくわよ?」
そんなミリアリア姉さんに珍しくエシュリナーゼ姉さんはそう言って励ます。
それを聞いたミリアリア姉さんは苦笑して言う。
「そうですわね。この戦い、何が何でも勝ち残りそしてアルムの妻として更なる『鋼鉄の鎧騎士』の開発を進めたいですわね」
「しれっとなに言ってんのよ! アルムは私が先に結婚するの!」
そう言い合うもそのあとにいつもの喧嘩はせず二人とも手を差し出し握手をする。
「私はアルムと新型の『鋼鉄の鎧騎士』をですわ」
「私も防壁魔法の展開に協力してくるわ」
お互いにそう言って笑って私を見る。
「アルム、必ず勝つわよ!」
「そうですわ、アルム、勝ちますわよ!!」
二人はそう言いながら私の両のほほにキスをして自分の持ち場へと行くのだった。
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