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第四章:転移先で
4-4:ハーフエルフの少女
しおりを挟む「このエル様に喧嘩売ったことを後悔させてやるわよ!!」
宿屋の扉から飛び出してきた金髪ロングで青と緑色が混ざったかのような瞳の美少女はそう叫んだ。
彼女の耳はややとがっていた。
勝気な表情から相当に腕に自信があるのだろう。
宿屋の扉に立っている傭兵だか冒険者だかの大男に指さして啖呵を切っていた。
「ハーフエルフごときが!! 痛い目を見ねぇと分からねぇようだな、いいだろう相手になってやる!!」
そう言ってその大男はゆらりと外まで出てくる。
どうやら結構酔いが回っているようだ。
うーん、これってさ、かかわらない方がいいよね?
大体こういう場合、かかわるとなんかイベントとか面倒事が向こうからやってくるパターンだもんね。
そっと見ないで通り過ぎるのがいいだろう。
そう思ってそそくさと端っこによって宿屋の扉をくぐろうとしたら、中からまだ数人の男の人が出てきた。
「邪魔だガキ! どきやがれ!!」
「兄貴、生意気なハーフエルフにしつけなら俺らも加勢しますぜ、そのあとはベッドの上でみっちりと礼儀ってのを教えてやりましょうぜ、げへへへへへへ」
「おら、見せもんじゃねぇ!」
どんっ!
「うわっ!」
「アルム様っ!!」
「我が主よ!!」
中から追加で出てきたごろつきの皆さん。
それに押されて私は転んでしまった。
すぐにマリーやアビスがやってきて私を引き起こしてくれる。
「そこの無礼者、ちょっと待ちなさい!」
「くーっくっくっくっくっ、我が主に対してなんと不敬な。万死に値します!」
すでにマリーやアビスが怒髪天に達しているぅっ!!
ちょっと待って、厄介ごとに首突っ込まないようにしてるのに、何こっちから首突っ込むようなことを!!
「ああぁん? なんだずいぶんと別嬪さんのメイドじゃねぇか? なんだ、俺と遊びてぇかぁ?」
「げへへへへっ、いい体してんなぁ~」
このごろつきたちも結構酔っぱらっているみたい。
私は顔に手を当てて「あっちゃぁ~」してる。
「ちょっとそこの連中! この喧嘩は私が買ったの、手出し無用よ!!」
「できればそうしたいんだけど……」
向こうでハーフエルフの少女が叫んでいる。
私はボソッと本音を言う。
そして、何となく一人冷静そうなカルミナさんの後ろにそっと行く。
こんな脳筋連中に囲まれていたら私のようなひ弱な少年はひとたまりもない。
「なんニャ? 喧嘩ニャ?? ならあたしも混ぜるニャ!!」
あ、だめだこりゃ。
冷静かと思ったカルミナさんもうきうきと腕まくりして喧嘩に混ざろうとしている。
「へっ、いい女ぞろいじゃねぇか? こりゃぁベッドの上でも楽しめそうだな?」
「ふん! 誰があんたみたいなきったないの相手にする! いいからかかって来なさいよ!!」
「このアマがっ!!」
それでもハーフエルフの少女は相手を挑発してそちらに注意を引き付けようとする。
「どこへ行くつもりですか? あなたの相手はこの私ですよ?」
「くーっくっくっくっ! 我が主への暴言、後悔させてあげましょう」
「ん~じゃぁあたしの相手はこいつにゃ!!」
そう言って最初の傭兵みたいなのはハーフエルフの少女へ、私をつき飛ばしたり暴言はいた連中にはマリーやアビス、そしてカルミナさんが相手を始めた。
「おらぁっ!」
「ふん、遅い!!」
見ればあちらで傭兵みたいのとハーフエルフが喧嘩を始めているが、酔っぱらいのこぶしなど紙一重でかわしているハーフエルフの少女。
あの体さばき、なかなかのものだ。
当たりそうなこぶしを本当に最小限の動きで避けている。
そしてバランスが崩れた足元に自分の足を引っかけて相手を転ばす。
ひょい
がっ!
どったぁ~ん!!
「くそっ! このアマぁ!!」
そう言ってその傭兵は起き上がりざまに腰から剣を抜いた。
いや、さすがに喧嘩にそれはまずいでしょ!
私はマリーやアビス、カルミナさんに言って加勢させようとしたが、すでにほかのごろつきが後悔してもしき切れないような状況になっていた。
がんがんがん!
「さぁ、言ってみなさい。謝罪はどうやるのです?」
「ひぃいいいいぃ、勘弁してくれぇ、もうしませんごめんなさい、許してぇ!」
「違うでしょ! アルム様に対する謝罪です!!」
ボロボロになったごろつきは頭の毛をつかまれてマリーに地面に何度も頭を叩きつけられている。
「ひぃいいいいぃぃっ! や、やめてよしてやめてぇッ!!」
「まだまだです。あなたには我が主の偉大さとその素晴らしさを説くと教えてあげないとですからね。生まれてきたことを後悔するくらいになってもらわないと」
そう言ってボロボロになったごろつきの頭を両の手で押さえ手を輝かせて何かしているアビス。
ごろつきは恐怖に涙や鼻水、失禁までしている。
「どうですか? 魔界の者たちの洗礼は? あなたにはフルコースでそれを体験させてあげましょう。なに、死にはしない。あなたの脳裏に魔界の拷問の数々を送り込み疑似体験させてあげているだけですから」
などと言ってアビスはどうやら脳裏にすごいこと送り込んでいるみたい。
なんかえげつないな……
「なんニャ? もう終わりかニャ?? ほら、逃げないとのど元かっ切るニャ!!」
「ひぃいいぃぃ! 悪かった、勘弁してくれ、もうしねえから!!」
あっちはあっちでやはりすでにボロボロになったごろつきをいたぶるようにカルミナさんが伸ばした爪で少しづつ傷つけている。
まるで猫がネズミをいたぶるかのように。
だめだこいつら。
ごろつきの拷問に徹している。
しかし私じゃあんな剣を振り回す傭兵みたいなの相手にできない!!
「腕の一本くらい覚悟しやがれやぁ!!」
「ちっ! このバカが! 風の聖霊よ!!」
しかし振り上げた剣を持った傭兵の周りにいきなりつむじ風が現れ、そしてその体に切り傷をつけていく!?
「がっ! これは精霊魔法!? くそ、てぇめぇ精霊使いか!! くそ、魔法とは卑怯な!!」
「何言ってるのよ! こんなか弱い美少女に剣抜く方がどうかしてるわよ!」
まぁ、言ってることは合っているけど、なんか魔法を使ってる時点で勝敗は決まったようなものだった。
体中切り傷で血だらけになった傭兵は、魔法が解除されてその場に膝をつていた。
剣を手放し、傷口に手を当て出血を押さえている。
「ふん、これに懲りて余計なことしてくるんじゃないわよ」
「くそ、このアマぁ……」
ハーフエルフの少女は終わったと言わんばかりに長い金髪をふさぁッと手で書き上げる。
透明に近い綺麗な金髪がキラキラしてきれいだ。
が、その油断が傭兵にチャンスを与えた。
「くそがぁッ!」
傭兵は隠し持っていた投げナイフを鎧の下から出してハーフエルフの少女に投げつける。
それは真っ直ぐに彼女の顔に向かっていく。
それに一瞬気づくのが遅れたハーフエルフの少女は間に合わないと悟って青ざめる。
「だめだぁ!」
なぜかそう思った瞬間、私は手を伸ばしていた。
そして体の奥底から感じる何かによってそのナイフは彼女に当たる寸前に見えない壁に阻まれて甲高い音を立てて地面に転がった。
カーンっ!
かちゃん!!
「え? 今のは……」
一瞬目を閉じたハーフエルフの少女は、それに気づいてこちらを見てからすかさず大地に手をついて叫ぶ。
「土の精霊よ、あいつをぶんなぐって!!」
彼女がそう言ったとたん、傭兵の足元がせりあがって土塊のこぶしの形になってクリーンヒットのアッパーパンチが決まる。
どバキッ!
「あうちっ!!」
傭兵はそれに見事にぶん殴られ、宙高く舞ってから地面に落ちる。
ぶぎゅる!
そして白目になって完全に気を失った。
まぁ、油断しなければハーフエルフの少女の圧勝だっただろう。
しかし、油断したせいでちょっと危なかった。
私がそう思っていると、彼女はすたすたと私の方へやってくる。
そして青と緑の混ざった瞳をじっと私に向けてくる。
が、彼女の瞳の色がうっすらと輝く金色になった!?
「さっきはありがとう。でも君…… なんでお母さんみたいな魂の色してるの? 君、何者??」
「え、えええぇとぉ……」
この時点で私は悟った。
すでに面倒事にずっぽりと巻き込まれていることを……
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