134 / 150
第四章:転移先で
4-30:姉貴分
しおりを挟む「スイフト、来たわよ!」
エルさんはそう言って無作法に扉を開けて中に入ってゆく。
いや、仮にも一国の王に対していいのかこれぇ!?
ものすごく心配になるけど、衛兵は逆に笑いをこらえている。
いったい……
「エル姉! いくらなんでもいきなり入ってくるんじゃねーよ! 衛兵、お前らも少しはエル姉に注意しろ!!」
中を見ると大きな机に座った白髭白髪の人がいた。
見た感じは威厳のある雰囲気だが、エルさんに対してはかなり砕けた感じだった。
「まったく、年ばっか取って変わらないんだから~。昔はエル姉、エル姉ってくっついてきてかわいかったのにぃ~」
「何十年前の話だ! それより今の状況少しは分かったのか?」
ニコニコしながらからかうエルさんにその老人は面白くもなさそうに腕組みをして椅子に座りなおす。
「ぜ~んぜん。だからボヘーミャに向かうわ。うちの仕入れた情報じゃ裏で何かが動いていそうよ。こういう時はママからも聞いたけど学園都市ボヘーミャの学園長を頼る方が良いらしいからね」
「……シェル様はどうした? それにあのお方は??」
「二人とも変な宗教にはまって家を出たわ。そっちも問題だけど、私の正義の味方の血が騒ぐのよ! この件はきっと大きな裏があるわ!!」
ふんすと鼻息荒くそう言い張るエルさんに呆れた顔のガレント王と思しきその老人は私たちに気が付く。
「時に、こいつらは誰だ?」
「ああ、イザンカ王国の第三王子、アルムエイド君よ♪」
エルさんがそう言った瞬間その老人は椅子を立ち上がる。
「第三王子だと!? 行方不明で大騒ぎになっている、イザンカの第三王子か!?」
「そうよ♪」
それを聞いた老人は一変厳格な表情になって私に向き直る。
「貴殿がイザンカ王国第三王子、アルムエイド=エルグ・ミオ・ド・イザンカで間違いないか?」
「あ、えっとそうらしいんですが……すみません記憶をなくしているので多分そうです」
私が素直にそう言うと、その老人は思わずエルさんを見る。
するとエルさんはいたずらが成功したかのように笑っている。
「驚いたでしょ? アルム君には危ないところを助けてもらったのよ」
「エル姉、何があった?」
「その辺も含めていろいろ話がしたいのよ。だからアルム君にもついてきてもらったの」
エルさんはそう言うとぱちんと片目をウィンクするのだった。
* * *
「非公式ですまないが、改めてガレント王スイフト=ルド・シーナ・ガレントだ。エル姉がいるとどうも調子が狂うが、非公式の場だ。堅苦しいのは無しで行こう」
スイフト王はそう言うと執務室のソファーにドカリと座る。
そして給仕にお茶を出させ手から下がらせる。
「えっと、改めましてアルムエイドです……」
私も一応双あいさつすると、スイフト王は頷いてから話し始める。
「貴殿がイザンカからいなくなった話は各国に伝わっている。ドドスとの戦争で異界の悪魔の王と共に化け物に飲み込まれ消えたともっぱらの噂だ。それがなぜこんなところに?」
「あ~、えっと、その、たぶん(駄)女神様の仕業かと……」
言われても私だってその辺の記憶があいまいだ。
でもあの駄女神になんかされたのは確実だろう。
自分の事やイザンカ王国にいた時の記憶がすっぽりと抜けている。
ただ、大宮珠寿だったこととそのあとにこちらに転生するときにあの駄女神に出会ったのは覚えている。
ちょっと不明瞭なところもあるけど、少なくとも男性同士のイケナイ恋愛が間近で見られると言う特典付きだったはず。
「そうか……あのお方がな。しかしならば何故シェル様は一緒じゃないんだ?」
「さぁね、それがどの女神様かが問題な感じよ。何せこの世界には現役の女神様が少なくとも四人はいるわ。冥界の女神、天秤の女神、破壊と創造の女神、そして赤き炎の女神がね」
エルさんはそう言うとため息を吐く。
それを聞いたスイフト王も椅子に座りなおし大きくため息を吐く。
「女神様のお考えは我ら凡人では理解できないからな。しかしエル姉もその内情を知らないというわけではないのだろう?」
「残念がら今回は全く分からないわ。ママもお母さんもいなくなってしまったからね。うちでもいろいろ調べていたけど、もしかしたらあのジュメルが暗躍しているかもしれないわ」
「ジュメルだと!? それは本当かエル姉!?」
スイフト王はエルさんからジュメルと言う言葉を聞いて思わず腰を浮かす。
それほどまでにその秘密結社ジュメルは影響があるのだろうか?
「確定ではないわ。だから余計にボヘーミャに行って学園長に助言をもらおうと思っているの。それで、スイフトに一つお願いがあるんだけど」
「なんだエル姉?」
「隣国と提携を組んで戦争を起こさせないようにしてほしいの。イザンカやドドスの事だってもしかしたら裏でジュメルが動いていた可能性があるわ。だって異界の悪魔の王なんて代物が出てくるのは百年前の魔王復活以来の事よ?」
エルさんがそう言うとスイフト王はうなりながら首を縦に振る。
「わかった、シーナ商会とも密に対応をしていこう。確かに今は情報封鎖と重要人物の往来ができない。これは今までのバランスが崩れる要因だ。ガレントも総力を挙げて協力しよう」
「うん、ありがとうスイフト。ガレント王国が旗振りをしてくれれば隣国は協力してくれるでしょう。あとは他の大陸だけど……」
エルさんはそう言って窓の外を見る。
「いち早くボヘーミャへ行って英雄ユカ・コバヤシに相談してみるわ」
どうやらその英雄ユカ・コバヤシと言う人が要になりそうだったのだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる