2 / 6
誕生
第2話 助からないはずの人形
しおりを挟む
2人はすぐに病院へ向かった。
白い壁に囲まれた診察室は、ひどく静かだった。
ベッドの上には、小さな人形が眠っている。
包帯に覆われたその体は、あまりにも痛々しかった。
両腕と両脚は砕け、胸には大きな亀裂が走っている。
そこから漏れる魂の光は、今にも消えそうなほど弱々しかった。
医師はカルテを閉じ、あっけらかんと言う。
「……無理だな。」
その言葉はあまりにも淡々としていて、残酷だった。
「そこを何とか頼む。」
男が低い声で言う。
女は隣で黙って立っていたが、その手はぎゅっと握られていた。
「あんたらとは長い付き合いだ。俺も何とかしてやりてぇが……」
医師はベッドの上の人形を見下ろす。
「こいつは損傷が激しい。両腕と両脚使いもんにならねぇ上に胸に亀裂がある。これじゃ魂は定着できねぇよ。」
そして、少しだけ眉をひそめた。
「正直、この状態で魂がまだ宿ってるのが不思議なくらいだ。」
診察室に沈黙が落ちた。
「義肢を取り付けることもできませんか?」
今まで黙っていた女が口を開く。
医師は小さく首を振った。
「俺も助けてやりてぇが、無理なんだ。こいつまだこの世界に来たばっかだろ?」
医師は椅子に背を預ける。
「今は魂が定着するまでの不安定な時期。その時期に義肢を取り付けても魂は宿れない。」
少し考えるように視線を落とし、続けた。
「元々魂が宿っていた義肢ならまだ可能性はあるが……」
だが、その言葉の後にすぐ首を振る。
「可哀想だがこいつはこのまま消えていくしかねぇよ。」
「そんな……」
2人は顔を見合わせる。
そして——
「じゃあ、俺の腕と足を」
「私の腕と足を」
医師は一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
「……は?」
そして次の瞬間、椅子から身を乗り出す。
「いやいや、あんたら何言ってんのか分かってんのか!?可能性があるってだけで、100%じゃねぇんだぞ。失敗したらあんたらの腕と足がなくなるだけだ。」
だが二人の表情は変わらなかった。
「生きる可能性があるなら構わない。」
男は静かに言った。
医師は目を見開いた。
「意味分かんねぇよ。元回収屋のあんたらならこんな奴ら何人も見てきただろ?何でこんなにこいつに――」
「この子が……"助けて"って言ったから」
「もう、見捨てたくないんだ。」
その言葉には、強い決意がこもっていた。
医師はしばらく何も言わなかった。
生きられるかどうか分からない人形だ。
もし魂が定着しなければ、二人の腕と足はただ失われるだけだ。
それでも、二人の目に迷いはなかった。
医師は深く息を吐いた。
「……医者として引き受けることはできない。」
だが、二人の目を見て、すぐに分かった。
この人達は、もう決めている。
「……はぁ。分かった。」
観念したように医師は言った。
「ただし成功する保証はない。それでもやるなら――」
医師は立ち上がる。
「俺が引き受ける。」
二人の目に自分の手足がなくなる恐怖など無かった。
「ありがとう。」
二人同時に出た言葉は、感謝だった。
白い壁に囲まれた診察室は、ひどく静かだった。
ベッドの上には、小さな人形が眠っている。
包帯に覆われたその体は、あまりにも痛々しかった。
両腕と両脚は砕け、胸には大きな亀裂が走っている。
そこから漏れる魂の光は、今にも消えそうなほど弱々しかった。
医師はカルテを閉じ、あっけらかんと言う。
「……無理だな。」
その言葉はあまりにも淡々としていて、残酷だった。
「そこを何とか頼む。」
男が低い声で言う。
女は隣で黙って立っていたが、その手はぎゅっと握られていた。
「あんたらとは長い付き合いだ。俺も何とかしてやりてぇが……」
医師はベッドの上の人形を見下ろす。
「こいつは損傷が激しい。両腕と両脚使いもんにならねぇ上に胸に亀裂がある。これじゃ魂は定着できねぇよ。」
そして、少しだけ眉をひそめた。
「正直、この状態で魂がまだ宿ってるのが不思議なくらいだ。」
診察室に沈黙が落ちた。
「義肢を取り付けることもできませんか?」
今まで黙っていた女が口を開く。
医師は小さく首を振った。
「俺も助けてやりてぇが、無理なんだ。こいつまだこの世界に来たばっかだろ?」
医師は椅子に背を預ける。
「今は魂が定着するまでの不安定な時期。その時期に義肢を取り付けても魂は宿れない。」
少し考えるように視線を落とし、続けた。
「元々魂が宿っていた義肢ならまだ可能性はあるが……」
だが、その言葉の後にすぐ首を振る。
「可哀想だがこいつはこのまま消えていくしかねぇよ。」
「そんな……」
2人は顔を見合わせる。
そして——
「じゃあ、俺の腕と足を」
「私の腕と足を」
医師は一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
「……は?」
そして次の瞬間、椅子から身を乗り出す。
「いやいや、あんたら何言ってんのか分かってんのか!?可能性があるってだけで、100%じゃねぇんだぞ。失敗したらあんたらの腕と足がなくなるだけだ。」
だが二人の表情は変わらなかった。
「生きる可能性があるなら構わない。」
男は静かに言った。
医師は目を見開いた。
「意味分かんねぇよ。元回収屋のあんたらならこんな奴ら何人も見てきただろ?何でこんなにこいつに――」
「この子が……"助けて"って言ったから」
「もう、見捨てたくないんだ。」
その言葉には、強い決意がこもっていた。
医師はしばらく何も言わなかった。
生きられるかどうか分からない人形だ。
もし魂が定着しなければ、二人の腕と足はただ失われるだけだ。
それでも、二人の目に迷いはなかった。
医師は深く息を吐いた。
「……医者として引き受けることはできない。」
だが、二人の目を見て、すぐに分かった。
この人達は、もう決めている。
「……はぁ。分かった。」
観念したように医師は言った。
「ただし成功する保証はない。それでもやるなら――」
医師は立ち上がる。
「俺が引き受ける。」
二人の目に自分の手足がなくなる恐怖など無かった。
「ありがとう。」
二人同時に出た言葉は、感謝だった。
10
あなたにおすすめの小説
転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜
まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、
専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活
現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。
しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。
彼は大陸一の富を誇る名門貴族――
ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。
カイルに与えられたのは
・世界一とも言える圧倒的な財力
・財力に比例して増大する規格外の魔力
そして何より彼を驚かせたのは――
彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。
献身的なエルフのメイド長リリア。
護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。
さらに個性豊かな巨乳メイドたち。
カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。
すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――
「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」
領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、
時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、
最強の御曹司カイルは
世界一幸せなハーレムを築いていく。
最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
最弱スライムに転生した俺、捕食スキルで無限進化していたら魔王軍すら支配してました
チー牛Y
ファンタジー
残業中に倒れた俺が次に目を覚ました時、なぜか異世界で最弱モンスターのスライムになっていた。
完全に詰んだ、戦う力もない。そう思っていた時、俺には一つだけ、とんでもないスキルがあった。
【捕食】
それは、倒した相手を取り込み、能力・スキル・力のすべてを奪うチート能力だった。
ゴブリンを食べれば腕力を獲得。
魔物を食べれば新スキルを習得。
レベルは爆速で上がり、進化は止まらない。
森の魔物を支配し、ダンジョンを制圧し、気づけば俺は魔物たちの王になっていた。
やがてその力は魔王軍すら飲み込み、世界の勢力図を塗り替えていく。
これは――
最弱スライムから始まる、無限進化の成り上がり無双譚。
古代文明の最強王、5000年後に転生すると魔法が弱体化しすぎていたのでもう一度最強になります。~底辺貴族からの成り上がり~
しNぱ
ファンタジー
5000年前、魔法文明マギア魔導王国を築き、
魔法体系そのものを創造した王アーケ・マギアス・マギアは、
さらなる魔法の発展を求め、自らの魂を未来へ送る転生魔法を発動した。成熟した古代魔法を超える研究が進んだ世界を見たいという純粋な探求心から、5000年後の世界へと意識を沈めた。
目覚めた先は、スケルド男爵家三男レイフとしての赤子の身体だった。産まれた瞬間から記憶を持つ彼は、質素な家と薄い魔力の流れを前に、未来の魔法研究が古代よりも大きく退化していることに気づく。最底辺と呼ばれる家に生まれながらも、家族は温かく、彼の異常な魔力量を希望として受け入れた。
幼少期から魔力操作を自然に行い、三歳で石を浮かせ、五歳で光魔法を自在に扱うなど、古代王としての力を隠しながら成長する。外では古代魔法を使わず、転生者であることを悟られないよう慎重に振る舞いながら、未来の魔法体系を観察し続けた。
十歳になると身体強化などの古代魔法を最低限だけ使い、父との剣術訓練でも圧倒的な動きを見せるが、本来の力は隠したまま過ごす。そして十六歳、高等魔導学園に入学したレイフは、初日の実技試験で無詠唱魔法や術式無効化を用いて試験官を圧倒し、最底辺男爵家ながらA級判定を受ける。
その姿を見たストラング公爵家の令嬢エリナは、彼に強い興味を抱く。5000年後の世界は古代より魔法が退化していたが、だからこそ発展の余地がある。レイフは古代王としての知識をもとに、もう一度魔法の未来を切り開くことを決意する。
主人公に殺されるゲームの中ボスに転生した僕は主人公とは関わらず、自身の闇落ちフラグは叩き折って平穏に勝ち組貴族ライフを満喫したいと思います
リヒト
ファンタジー
不幸な事故の結果、死んでしまった少年、秋谷和人が転生したのは闇落ちし、ゲームの中ボスとして主人公の前に立ちふさがる貴族の子であるアレス・フォーエンス!?
「いや、本来あるべき未来のために死ぬとかごめんだから」
ゲームの中ボスであり、最終的には主人公によって殺されてしまうキャラに生まれ変わった彼であるが、ゲームのストーリーにおける闇落ちの運命を受け入れず、たとえ本来あるべき未来を捻じ曲げてても自身の未来を変えることを決意する。
何の対策もしなければ闇落ちし、主人公に殺されるという未来が待ち受けているようなキャラではあるが、それさえなければ生まれながらの勝ち組たる権力者にして金持ちたる貴族の子である。
生まれながらにして自分の人生が苦労なく楽しく暮らせることが確定している転生先である。なんとしてでも自身の闇落ちをフラグを折るしかないだろう。
果たしてアレスは自身の闇落ちフラグを折り、自身の未来を変えることが出来るのか!?
「欲張らず、謙虚に……だが、平穏で楽しい最高の暮らしを!」
そして、アレスは自身の望む平穏ライフを手にすることが出来るのか!?
自身の未来を変えようと奮起する少年の異世界転生譚が今始まる!
「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」
まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。
目が覚めたら、婚約破棄されていた。
理由は「地味で面白みがない」から。
泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。
最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。
でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。
厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。
そして就任スピーチで宣言した。
「500人全員の名前を、覚えます」
冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。
悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。
元婚約者は——後悔し始めていた。
婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。
なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。
スーパーのビニール袋で竜を保護した
チー牛Y
ファンタジー
竜は、災害指定生物。
見つけ次第、討伐――のはずだった。
だが俺の前に現れたのは、
震える子竜と、役立たず扱いされたスキル――
「スーパーのビニール袋」。
剣でも炎でもない。
シャカシャカ鳴る、ただの袋。
なのにその袋は、なぜか竜を落ち着かせる。
討伐か、保護か。
世界の常識と、ひとりの男の常識が衝突する。
これは――
ビニール袋から始まる、異世界保護ファンタジー。
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる