つぎはぎ人形の僕は、魔法学校で夢を叶えます

まいるん

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誕生

第3話 木の腕と陶器の身体

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 俺が目を覚ました時、最初に見えたのは泣いている2人の顔だった。

 視界がぼやけている。

 頭が重い。
 身体の感覚もどこか変だった。

「……よかった……」

 聞いたことのある柔らかい声だった。

 2人は泣きながら笑っていた。

 俺はゆっくりと手を動かす。
 自分の思った通りに動かせなかった。

 だが、ちゃんとある。

 腕も脚も。

「あれ……」

 俺の視線は、自分の腕に落ちた。
 そこには、木で出来た腕があった。
 俺の身体は陶器のはずなのに。

 何だ、これ。


 そこには、木の質感が見える。

「……うまく動かない?」

 声のする方へ顔を上げると、女の人が心配そうにこちらを覗き込んでいる。

 その身体は、木で出来ていた。

 温かみのある木肌に、丁寧に彫られた指先。

 隣に立つ男の人も同じだった。

 俺はゆっくりと指を動かそうとする。
 だが、思ったより遅れて動く。

 まるで自分の身体じゃないみたいだ。

「大丈夫よ。じきに慣れるわ。」

 そう言って、俺の手をそっと握る。

 手を握られた感覚もあまり分からない。
 それなのに、不思議と温かった。

「ゆっくり慣れていけばいい。」

 無愛想な男の人が静かに言う。
 女の人も小さく頷く。

 俺はもう一度、自分の腕を見た。
 陶器の身体に、木の腕。
 不思議な組み合わせだった。

「……どうして」

 小さく呟く。
 俺は本当なら、もう消えていたはずだ。

 女の人は少しだけ困ったように笑った。

「それはね――」

 だがその言葉を、男の人がそっと遮る。
「今は考えなくていい。」

 そして俺の頭を優しく撫でた。

「生きてる。それだけで十分だ。ノエル」

 その言葉は、不思議と胸に残った。

「ノ、エル……?」


「あなたの名前よ。目が覚めて本当によかった、ノエル。」

 ノエル。

 その名前を、俺は心の中で繰り返した。
 胸の奥がざわついてこそばゆかった。

 その日から俺は、心優しい二人の家族に加わった。




 それから、少しずつ歩く練習をした。

 最初は何度も転んだ。
 腕も脚も思った通りに動かない。

 陶器の身体と、木の手足。
 まるで別の人形の身体を借りているみたいだった。

 それでも二人は、何度でも手を貸してくれた。

「ゆっくりでいい。」

「少し休憩しましょうか。」

 何度も、何度も。
 焦らず俺ができるようになるまで献身的に支えてくれた。

 そして気づけば、普通に歩けるようになっていた。





 外に出るようになると、みんな俺をじろりと見た。

 ひそひそとした声が聞こえてきた。
 わざと聞こえるように言ってるのかもしれない。

「……あれが」

「聞いたことある」

「腕と脚、あの二人のだろ」

「奪ったんじゃないかって」

「怖いよな」

 あぁ、やっぱり。

 俺の両親は何も教えてくれなかった。
 優しいから。

 だけど、薄々気づいていた。

 母の左腕と右脚。
 父の右腕と左脚。

 それらが、元の身体とは少し違うことに。


 俺は聞こえないふりをした。
 本当のことは、まだ知らない。
 それでも、胸の奥が少し痛かった。


「ノエル、そろそろ学校へ行ってみないか。」

 俺は驚いて顔を上げた。

「学校?」

「学校に行くと魔法が学べるのよ。」

 母はそう言って、キッチンの方へ向かった。
 小さな鍋にミルクを注ぎ、コンロに置く。

「ほら、こんな風に」

 母が指を指した瞬間、火がつき、こぽこぽとミルクが温まっていく。

「はい、どうぞ。」

 そう言ってあっという間に母は俺に温まったミルクを持ってきてくれた。

 二人が魔法を使っている所は何度も見ているし、俺も使いたいと言ったことも何度もある。

 学校に行かないと魔法は与えられないということは、その時に聞いた。

 俺も学校へ行ってみたいと思ったことはある。

 でも

 その度に、あの噂が頭の中に広がる。

「お友達だってできるわよ?」

「無理だよ。俺……無愛想だし。」

 噂のことが喉まで出かかったけど、伏せた。

 何となくこの2人に言いたくなかった。
 心配かけたくなかった。

「大丈夫よ。ほら見て。お父さんだって無愛想だけど、ちゃんと友達できたし……」

 母さんが頬を赤らめて続ける。

「それに、私たちは学校で知り合ったのよ。ね?」

「や、止めろ。子供の前でそんな話……」

 そう言う父さんも照れくさそうに頬を赤らめている。

 やめてくれ。俺もう12歳だぞ。
 それで、じゃあ俺も……ってなるほど素直な子供じゃない。



 だけど
 魔法、学校、友達……

 頭の中で反芻する度にそれらの言葉がどんどん大きく占めてくる。

「俺、行ってみたい。」

 2人は嬉しそうに顔を見合わせた。

「まぁまぁっ!ノエルにも絶対素敵な出会いがあるわよっ!」

 そうよね、ノエルも恋愛したい年頃よねとうんうんうなずいている。

 いや待て。明らかに勘違いしてる。



 言い直そうかと思ったが、嬉しそうな2人の顔を見てると、それでもいいかと思えてくる。

「あ、ちなみに、入学試験はあるけれど、ノエルなら大丈夫よ!」



 え、……は。



 初耳だが!?
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